プリンスの組織
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プリンス (Prince) 負の魔力を統べる闇の支配者。アンシーリーコート(悪しき妖精)の主人として無条件に支配する唯一の力をもち、プリンスが存在するだけで世界中のアンシーリーコートや闇組織が活性化するほど、負の部分において絶対的な影響力を持つ。 最初のプリンス“災いの王子”は、スチュアート王家の御落胤である双子の赤子の兄だった。スチュアート家の王座奪還を企てる反逆者達によって、アンシーリーコートから抽出した養分を飲まされ、作り出された。この赤子は、魔術を直接施された影響で、成人するまで生きられないと言われており、スペアとして心を破壊された弟の体が用意された。これ以降、プリンスは体を換えて存在し続けたが、移植されるのは早世した“災いの王子”の記憶であるため、エドガーの精神内部に現れる際は少年の姿をしている。このプリンスは、後に戦いの女神バウの力を借りて英国襲撃を実行したが、時の青騎士伯爵であるグラディスによって女神を封じられ、英国を追放された。 新しい体は、スチュアート家の血を継ぐ若い人間の中から選ばれ、その者にプリンスとなるべき洗脳教育を施すとともに、あらゆる精神攻撃で元の自我を破壊し、最後に核となる“災いの王子”の記憶を移すことで完了する。記憶と融合した体は、それに付随する魔力を得て最初の“災いの王子”に限りなく近いプリンスとして出来上がるが、それでも全く同じ性格にはならない。早世した“災いの王子”の精神は成長途中であったため、融合した体が歳を重ねるごとに、元々の体の持ち主の自我や資質が影響される。ともあれ、体を換えても移植する魔力や記憶は同じ人物のものであるため、世襲で起こるような能力の差に伴う混乱もなく、闇の世界でのプリンス組織の影響は増すばかりであった。しかし、体を換える度に血が薄まっていく影響で、魔力や記憶を直接引き継ぐ力は失われ、四人目からは「フレイア」という蛍石が使われたために、エドガーに横取りされる形になった。結果的に五代目のプリンスを継承する形になったエドガーは、先代までに徐々に薄まってしまったスチュアート家と英国王家、双方の血を受け継ぐ由緒正しき貴族であり、プリンスとしては理想的な体であったが、自我が破壊される前に逃げ出したため、プリンスとしては不完全であった。しかし同時に、エドガーが完全なプリンスとして覚醒した時は、元々彼の持つ資質により、今までにない強大な支配力を持つプリンスになると危惧されている。 ユリシス・バーロウ (Ulysses Barlow) 声: - / 宮野真守 プリンス組織の幹部の少年。リディアと同じように妖精に接する能力を持つが、能力的にはリディアをはるかに上回る。 最初のユリシスは三百年前の史実上最後の青騎士伯爵であるジュリアス・アシェンバートの庶子の子孫だった。伯爵家では庶子の子孫に限り魔力が封印されており、通常は成長するとその魔力も失われるが、一方で伯爵家の正統な後継者が絶えた場合は、庶子の子孫から選ばれた者が伯爵位を継承する決まりがあった。しかし、正統な血筋は百年前のグラディスで絶え、妖精国へ行くための条件となるアクアマリンを持って生まれたにも関わらず、伯爵家からの迎えが来ることはなかった。二十歳の時に病気に罹り、病を押して辿り着いたリオネスで、妖精国への道しるべを得るためには宝剣も必要であることを知る。宝剣を探すだけの体力も時間もなく、絶望的な状況に置かれたユリシスを救ったのは、プリンスだった。庶子の子孫であったがために封印されていた彼が本来持つ魔力を、プリンスが解放したことにより、甥の体を新たな体として得ることができた。プリンスの狙いは、新しい体に換えるための「フレイア」(蛍石)を得るため、伯爵家の能力を持つ者を仲間に引き入れると同時に、ユリシスを除く庶子の子孫を全て抹殺し、伯爵家の後継者を断つことが目的であったが、プリンスに命を救われたユリシスは、これ以降、本来敵であるはずのプリンスに忠誠を誓い、側近として組織に身を置いていた。 エドガーがプリンスの元にいた頃の二人目のユリシスは、宝剣を受け取りに行った際にメロウとの対面は果たしたものの、謎を解く詩の最後の意味を理解できずに、メロウによって海に引きずりこまれ殺された。 現在の少年の姿をしたユリシスも、プリンスと同様に元々の自我を攻撃されているが、それでも少年の自我は残っており、少年が可愛がっていた牧羊犬を、後に黒妖犬のジミーとして甦らせて側に置いていた。最初のユリシスの影響で妖精国には並々ならぬ執着を見せており、かつての自分を伯爵として迎えなかった妖精国の崩壊を望んでいると語っていた。しかし、危機に瀕した妖精国を救うため、伯爵家の血を引くユリシスにしか扱えない弓矢をエドガーに託された時、ユリシスは戸惑いながらもそれを引き受けた。矢の魔力に抗ったドラゴンの最後の抵抗で炎の玉が降り注ぎ、もはや魂だけになったジミーがユリシスの前に立ち塞がったが、かつて牧羊犬だったジミーを守れなかった後悔から、逆にユリシスがジミーを庇い、命を落とした。 その後、妖精国の墓地に遺体が安置されたが、国内を歩き回っているところをメロウ達に目撃される。これは、両親を守り、マッキール氏族の予言を果たすべく、リディアが身ごもっている胎児の魂が一時的に遺体に宿ったため。最後は悪しき妖精の魔力から胎児が解放されたためただの遺体に戻り、エドガーの決定でアシェンバート家の者として埋葬されることになった。 テラン プリンス組織の幹部で、ユリシスと対立している妖術師。ひょろりと背は高く、目深にかぶった帽子の下の額には目立つ傷がある。妙に大きな目鼻が中世の図像で見る悪魔を連想させる容貌。姿形は人間と変わらないが、妖精の中でも最も恐ろしいと言われるナックラヴィーと人間の間に生まれた半妖精であり、本性は非常に残忍で冷酷である。双子の弟がいるが、弟は兄とは正反対で、ナックラヴィーの姿で生まれ、知能も低い。人間の姿に変身しても一つ目という異形な姿だが、人の心を持っている。 最初のプリンスである“災いの王子”を生み出した人物が、プリンスの手足として働く者が必要と考え、ナックラヴィーに人間の女を襲わせ、テランたち半妖精の兄弟を生み出した。しかし、増長させると危険と判断されていたのか、その後のプリンスからは退けられていた。精神状態が不安定だった弟が、人の心を忘れて完全なナックラヴィーになるまで、テランは弟を隔離していたが、その存在を危険視したユリシスによって、弟を隠されていた。弟を見つけ出したテランは、兄ではなく主人としてナックラヴィーを使役し、再び組織の重鎮に返り咲いた。 エドガーの人格を消し去り、プリンスを完全に覚醒させるために、リディアを残忍な形で殺害することを目論んでいたが、失敗に終わる。現在は“災いの王子”やテラン自身を作り出した邪悪な魂と手を組み、リディアが体内に持つブラッドストーンを狙っている。最後は不死の体を欲した悪しき妖精のフェアリードクターに乗っ取られてしまう。 バークストン侯爵 プリンスの部下。エドガーの母ジーンメアリーの許婚。 スチュアート家の血を引いていることから、次代のプリンスにふさわしい器を生み出す為ジーンメアリーの許婚とされた人物。親に決められた結婚ではあったが、初めて許婚と会った時から恋焦がれており、結婚する日を心待ちにしていた。しかしシルヴァンフォード公爵に許婚を奪われ、プリンスが、彼とジーンメアリーとの間に生まれるはずだった息子よりもシルヴァンフォード公爵との間に生まれた息子のほうが次代の器となるにふさわしいと気付いたため、許婚を取り戻す事は出来なくなり、憎しみのあまりシルヴァンフォード公爵がローマから持ち帰るはずだった“デイドリーム”(後述)を盗み出した。 デイドリームが盗み出された後、ジーンメアリーに慰めの手紙を送り続けるが、このことが夫と不仲になる一因になってしまったことから彼女からは激しく憎まれていたのだが、本人はシルヴァンフォード公爵さえいなくなれば自分の下に許婚が戻ってくると思い込んでおり、この事を知っていたエドガーは復讐に利用した。 エドガーの策略に嵌められ、結果的にプリンスを裏切ってしまい、エドガーの実父の名誉を回復させた後に死ぬように脅迫され、デイドリームをバッキンガム宮殿に届けた後、猟銃を手入れする事故によって死亡したと公表された。 ウルヤ 褐色の肌に黒い瞳、長い黒髪をもつ中性的な人物。性別は女性だが、家を継ぐ男子が生まれなかったため、長女である彼女は結婚するまで男性として育てられた。 レイヴンらと同郷であるハディーヤの出身で、彼らの王の子孫にあたる血筋。故郷の土地を取り戻すというプリンスに唆され、カールトン教授の教え子という立場からリディアに近づく。 ブラックダイヤ“ナイトメア”(後述)の粉砕で解き放たれた夢魔を飼いならすため、魔力に耐性のあるウルヤは夢魔の器としてプリンスに利用される。ハディーヤ王家に忠誠を誓う精霊を宿したレイヴンを、透輝石を利用して意のままに操るが、エドガーが本当の主であることを思い出したレイヴンの手によって、最期を迎える。 チェンバレン主教 (Chamberlain) 鷲鼻が特徴的な初老の男性。国教会の主教という高位聖職者でありながら、悪魔崇拝サタニズムの教団の主催者でもある。 「朱い月」のメンバーだった画家が、チェンバレンの主催する教団の黒ミサを覗き見て絵に描いていたため、画家を殺害し、罪をスレイドと「朱い月」に被せて証拠隠滅を図ろうとした。しかし、悪魔を従えるために行った召喚の儀式をエドガーとリディアに阻止され、悪魔召喚は失敗に終わる。チェンバレンは正体を隠して逃亡を図るも、絵に描かれた主教が左利きであったことからエドガーに正体を見破られ、見逃すかわりに今後一切、「朱い月」に干渉しないというエドガーの交換条件を了承した。 プリンスの組織と繋がりがあり、悪魔召喚の失敗後に接触してきたユリシスから、エドガーこそが新しいプリンスであると知らされる。同時に、国教会を廃し、悪魔信仰の教会を樹立するという望みを叶えたければ、組織の意向に従うよう釘を刺される。しかし、終盤になって攻めに転じたエドガーが上述の絵のスケッチを基にした贋作を利用した策を使ったため破滅させられかかり、結界の要であるロンドン塔で騒動を起こすが結局はエドガーとリディアによって収められてしまった。 キャスリーン (Kathleen) 18歳。ハニーブロンドで抜けるように白い肌、不自然なまでに紅い唇、おとなしく儚げな微笑など、上流階級の娘としての理想を兼ね備えた容貌の持ち主。 エドガーの生家シルヴァンフォード公爵家の親戚にあたるコリングウッド伯爵家の令嬢。彼女の両親は、プリンス組織の陰謀による公爵家屋敷の大火災に巻き込まれ、エドガーの両親ら一族と共に死亡したが、彼女自身は風邪をこじらせて屋敷へは来ていなかったため、災難を免れた。エドガーはその火災で死亡として扱われているため、公爵家の血縁者の中では、最も当時の公爵に近い存在とされている。女性であり、直系でもないキャスリーンに公爵位を継ぐ資格はないが、他に後継者がいない以上、彼女が男子を産めば、シルヴァンフォード公爵家の跡取りとなる可能性がある。そのため、彼女が名門出身のグランディ卿と婚約したことで、シルヴァンフォード公爵家再興を狙ったものではないかと、世間では注目された。 シルヴァンフォードの相続権にかかわるキャスリーンに以前から目をつけていたプリンス組織は、両親を失い、親戚の家で肩身の狭い思いをしていた彼女に接触する。その際キャスリーンは、幼い頃に一度だけ会った初恋の人、公爵家の若君エドガーが実は生きていることを知らされ、彼が再び英国に戻った時の花嫁となるべく、プリンス組織からの教育を受け入れる。彼女はその組織が一族を殺害したことを承知で、エドガーのために一流のレディになろうと努力してきた。 しかし、「運命の人」と信じていたエドガーは、再会する前にすでに結婚していたため、その憎悪は彼の妻リディアに向けられた。リディア排除を目論む派閥と結託し、リディアを陥れ、最終的には殺害まで企てるも、エドガーに阻止される。再びプリンス組織のもとへ戻されたキャスリーンは、「未来の王妃」として再教育される事となる。組織の実態をなにも知らないキャスリーンはテランにプリンスとして組織に君臨したエドガーの婚約者と決められたのを、「殿下」がリディアに飽きて自分の方が結婚相手としてふさわしいと気がついてくれたと思い込んでいた。 クローク 元少佐で、軍では諜報機関に属しながらプリンスの組織にも属する二重スパイ。プリンスの指示で公爵家にエドガーの家庭教師「ゴールディン」として潜入、女王の命令で公爵家を調査中だったレイチェルの調査妨害と同時にエドガーを手に入れる為に、屋敷に火を放ち公爵家一族を壊滅させた実行犯だった。 エドガーに顔を知られている為、万が一逃亡したときに備え、名乗り出た場合はエドガーを闇に葬るように政府機関に指示を出していた。 シルヴァンフォードの息子の意識をもったままのプリンスでは都合の悪いクロークは、最初のプリンスに目覚めて欲しいテランにそそのかされキャスリーンを使ってリディアを罠にはめようとするが失敗し、組織を抜けるきっかけとなる混乱をおこすためにエドガーに利用された結果、見せしめとしてテランに殺されることとなった。
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