フェンシング【fencing】
フェンシング
歴史と沿革
フェンシングは中世の騎士道華やかなりし頃、「身を守る」「名誉を守る」ことを目的として磨かれ、発達してきた剣術です。その後、火器類の発達により、戦(いくさ)の場での実用性は急速に衰退していきましたが、その繊細かつ奥深いテクニックに魅せられる人が多く、軍人や貴族の基礎的な教養として、競技化への道を歩むこととなりました。
1750年に金網のマスクが開発され、危険性が大幅に緩和されたことが引き金となり、この頃からヨーロッパ各地で競技会が盛んに開催されるようになりました。オリンピックでは、1896年の第1回近代オリンピック(アテネ)で正式種目に採用されて以来、欠かすことなく現在に至っています。しかし、当時は国によって競技規則に違いがあり、問題が数多く発生しました。
1914年6月にパリで開催された国際オリンピック委員会(IOC)の国際会議で統一的な「競技規則」が制定され、これにより競技の公正さが保たれ、判定を巡る争いが無くなりました。この規則はフェンシングの国際性を確立する上で大きく貢献し、同時に現在の国際フェンシング連盟(FIE)の試合規則の原案ともなっています。
競技方法
フェンシングにはフルーレ、エペ、サーブルの3種目があります。使用する用具や有効面(得点となるターゲット)が違うなど、各種目で競技規則が異なります。
男女とも共通のルールでそれぞれ個人戦、団体戦があります。世界選手権などでは、上記3種目それぞれで、男女別、個人戦、団体戦の12種目が行われます。
個人戦の場合、プール戦(6~7名ずつの総当たり戦)は3分間で5本先取した方が勝利、トーナメント戦は3分間3セットで15本先取した方が勝利となります。時間内で終わらなかった場合は得点の多い方が勝ちとなります。時間が終了して同点の場合は、1分間1本勝負の延長戦を行います。1分経過しても同点の場合に備えて延長戦の前に抽選で一方の選手に優先権を持たせておき、延長戦終了時にも同点の場合は優先権のある選手の勝ちとします。
団体戦の場合、1チームの3名が相手チームの3名と合計9試合を戦い、3分間で5本単位の勝負を重ねて45本先取または、9番目の試合までの合計でリードしたチームの勝ちとなります。9番目が終了して同点の場合は、個人戦同様の1分間1本勝負の延長戦で決着をつけます。
「突き」の判定は電気審判器で行います。電気審判器と選手の持つ剣はボディコードと、審判器コードまたは無線により接続されています。
審判(通常1名)は試合の進行を指揮し、ランプの点灯した「突き」についての有効性を判定します。ランプの点灯のほか、ルールに則した攻撃か、選手以外の物を突いて審判器が反応していないか、ピスト(試合用コート)の範囲内で行われた攻撃か、などの条件を加味し有効な得点となるかどうかを決定します。
●フェンシングの有効面
有効面は種目ごとに範囲が異なります。各図の白地部分が有効面です。
○フルーレ (2009年1月以降有効)
○エペ
○サーブル
道具、コートなどの説明
○マスク: 絶縁マスク(フルーレ・エペ用)と伝導マスク(サーブル用)がある。フルーレ、サーブルでは透明バイザーマスクも使われる。メッシュ(金網)は一定条件の下、12kgの圧力に耐える必要がある。マスクの前垂れの素材は1600ニュートンの圧力に対する抵抗力がある。
※「ニュートン(N)」とは力の単位で、質量100gの物体にかかる重力の大きさは約1Nである。
○手袋: パッドが入っていて、手首から腕の半分までを覆う必要がある。
○試合用衣服(ジャケット・ズボン): 十分に丈夫な素材で作られており、800ニュートンの圧力に耐える布地である。胸部の特定の部分を覆うプラストロン(プロテクター)をジャケットの下に着用する。プラストロンも800ニュートンの圧力に耐える素材であることが必要。ジャケットの裾は、「構え」の姿勢をとった時に10cmまでズボンに重なる必要がある。ズボンはひざ下までを覆う形で、ひざ下は隙間なくストッキングを着用する。
○ボディワイヤー: 剣の鍔の内側のソケットにプラグで接続されるボディワイヤーは、剣を持つジャケットの袖を通り背中に出て、リールまたは無線機のプラグに接続される。フルーレ・サーブルの場合はボディワイヤーからメタルジャケットに接続される。
○シューズ: 軽快に動ければシューズに特別の制約はないが、前後に俊敏に動くためとその独特のフォームから、踵が低く底面が平板で滑りにくい形状のものが多く使用されている。
●ピスト (試合用コート)
床面(下図で囲まれたピストの全部)は、アルミニウムなどの通電性のある金属で構成されています。電気審判器に接続されていて、床面に接触した剣の突きや斬りでは信号を出さないようになっています。
フェンシング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 07:23 UTC 版)
フェンシング(英: fencing)は、フランスで発祥した剣を用いるスポーツ競技である。
注釈
出典
- ^ 仏: Fédération Internationale d'Escrime
- ^ “JOC - 競技紹介:フェンシング”. JOC - 競技紹介:フェンシング. 2023年3月4日閲覧。
- ^ Transparent visor mask FIE緊急通達 2009年11月5日
- ^ ロシア語ラテン文字翻字:Vladimir Viktorovich Smirnov
- ^ “In France, the Force is strong with lightsaber dueling”. AP NEWS (2019年2月18日). 2021年3月24日閲覧。
- ^ 陸軍省大日記 明治17年「大日記鎮台 11月木 陸軍省総務局」
陸軍省 明治17年11月
「第七六八号 教導団 東京鎮台 今方戸山学校仏国剣術伝習ニ付員外助教トシテ下士若干名同校泊中付右ニ就シテハ其台府下屯在歩兵隊ノ内ヨリ軍曹伍長ノ内五名左ノ項目ニ達該致候ハ至急取調人名可申出此旨相達候事 十七年十一月十四日 西郷陸軍卿 一、二十五歳以下ノ軍曹伍長ノ内服役年限多キモノニシテ停年未満ノ者 一体格強壮行方正勤務勉励ノ者 一剣術志願ノ者 教導団ヘ本文別ニ近衛局ニ移牒モ本文朱書該所ノ通リ 但年齢ハ本文ノ如ク限ルト雖モ実際ノ都合ニ依リ多少之ヲ超過スルモ妨ケナシ」
陸軍省大日記 陸軍省日誌・送達・受領日誌 明治17年 文書受領日記
戸山学校 取調委員今村少佐
明治17年1月3日 - 明治17年12月29日
「十一月二十九日 通報 庁名 戸山学校 西洋剣術用欽剣御渡相成度義ニ付伺 領収」 - ^ 陸軍省大日記 明治20年「貳大日記 7月」
陸軍大臣伯爵 大山巖 明治20年7月18日
陸軍省 総務局 仏蘭西共和国陸軍
「弐第二〇五九号 総務局 教師キエル氏帰国ニ付仏国陸軍大臣ヘ謝状之件 明治二十年七月十八日 戸山学校雇教師仏国剣術下副官キエル氏今般解雇帰国ニ付テハ該国陸軍大臣ヘ別封謝状送付相成度ト存候〜」 - ^ a b 小林倫幸「戦前における本間喜一先生によるフェンシング部創設」第22号、愛知大学東亜同文書院大学記念センター、2014年3月、ISSN 2188-7950。
- ^ フェンシングの歴史公益社団法人 日本フェンシング協会 公式サイト
- ^ 部史 慶應フェンシング・日本フェンシングの歴史KEIO FENCING TEAM official HP
- ^ “https://twitter.com/miyake_fencing/status/1242421622385987586”. Twitter. 2020年11月25日閲覧。[出典無効]
フェンシング
出典:『Wiktionary』 (2021/06/12 13:05 UTC 版)
名詞
フェンシング
- 中世後期のヨーロッパで発生・発展した、刺突用片手剣による、護身と決闘のための西洋剣術(wp)。中世ヨーロッパの騎士が編み出した刺突用片手剣の技芸が、訓練や模擬試合に導入される形で、15世紀頃に発生したもの。西洋剣術の代表的な一つ。
- 近代スポーツ競技としてのフェンシング。スポーツフェンシング、フェンシング競技ともいう。金網のマスクと白いユニフォーム(wp)を装着し、刃が無い細身の片手剣を持った2人の選手(剣士(wp))が、直線的な一定区域内で相対して、突き技と斬り技で勝敗を争う形式の、フェンシング競技。剣の形状や有効面(得点対象となる身体部位)の違いなどによって、フルーレ(wp)、エペ(wp)、サーブル(wp)の3種に分けられる。
語源
翻訳
- アイルランド語: pionsóireacht (w:ga)
- アフリカーンス語: skermsport, skermkuns. (w:af)
- アラビア語: مبارزة سيف الشيش (ar)
- イタリア語: scherma (it) 女性
- インドネシア語: anggar (id)
- ウェールズ語: cleddyfa (w:cy)
- 英語: (フェンシング) fencing, (競技フェンシング) competitive fencing, (オリンピックフェンシング) Olympic (en) fencing.
- エスペラント: skermo (eo)
- オランダ語: schermen (nl)
- カタルーニャ語: esgrima 女性
- 現代ギリシア語: ξιφασκία (el)(xifaskía) 女性
- スウェーデン語: fäktning (sv)
- スペイン語: esgrima 女性
- セルビア語: мачевање (w:sr)
- チェコ語: šerm (w:cs) 男性
- 中国語: (繁): 擊劍/ (簡): 击剑 (jījiàn)
- 朝鮮語: 펜싱 (pensing)
- デンマーク語: fægtning (da) 中性
- ドイツ語: Fechten 中性
- トルコ語: eskrim (tr)
- ノルウェー語(ノルウェー語(ブークモール)): fekting (w:nb)
- ハンガリー語: vívás (hu)
- ヒンディー語: तलवारबाजी (hi)
- フィンランド語: miekkailu (en) (w:fi)
- フランス語: escrime 女性
- ブルガリア語: фехтовка (w:bg) (fehtóvka) 女性
- ベトナム語: đấu kiếm (vi) (w:vi)
- ヘブライ語: סייף (he)
- ペルシア語: شمشیربازی (fa)
- ポーランド語: szermierka (pl)
- ポルトガル語: esgrima 女性
- ラテン語: (フェンシング) ars gladii, ars gladiatoria, gladiatura rudiaria. (オリンピックフェンシング) ars gladii in Olympiis.
- ルーマニア語: scrimă (ro)
- ロシア語: фехтование (ru) (fextovánije) 中性
関連語
「フェンシング」の例文・使い方・用例・文例
- エペはフェンシングで使われる武器の1つである。
- 私はフェンシングをすることが好きです。
- フェンシングとボクシング以外にはほとんどスポーツをしなかった.
- フェンシングのけいこをする.
- フェンシングの剣で戦う
- アーチェリ、フェンシング、および他のスポーツに使用される手首や腕のための保護カバー
- フォイルと同様であるが重い刃を持つフェンシング用の剣
- フェンシング選手の顔を覆う細かいメッシュのフェイスマスク
- フェンシングのスポーツで使用される剣
- フェンシング一続きの間の平坦な長方形エリア
- V字形の刃と微かに曲がった柄のフェンシングの剣
- フェンシングで剣の代わりに使われる棒
- ボクシングやフェンシングでの防衛の姿勢
- フェンシングの技術
- フェンシングの達人
- 突然に前進する人(フェンシングなどで)
- エペという,フェンシングの競技
- フェンシングというスポーツ
- オンガードという,フェンシングでの構え方
- (フェンシングで)試合の前後に審判と相手に礼をすること
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