シクレソニド
シクレソニド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/03 21:44 UTC 版)
シクレソニド(英: Ciclesonide)は、喘息(ぜんそく)やアレルギー性鼻炎の治療に使用される糖質コルチコイドである。糖質コルチコイドは副腎皮質ホルモンのひとつで、副腎皮質ホルモンはステロイドホルモンに属している。
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- 1 シクレソニドとは
- 2 シクレソニドの概要
- 3 オルベスコ(商品)
- 4 副作用
シクレソニド (吸入ステロイド;喘息治療薬)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 21:16 UTC 版)
「COVID-19に対する薬剤転用研究」の記事における「シクレソニド (吸入ステロイド;喘息治療薬)」の解説
商品、開発、権利情報については「シクレソニド」を参照 シクレソニド(商品名 オルベスコ(帝人ファーマ)、Covis PharmaのAlvesco)は気管支喘息を適応症として承認済の吸入ステロイド薬である。 時系列 2020年2月19日、国立感染症研究所村山庁舎コロナウイルス研究室は基礎実験でシクレソニド(オルベスコ)が強い抗ウイルス活性を有すると報告した。他の吸入ステロイドには同様の抗ウイルス効果が見られず、シクレソニド特有の作用と考えられた。本知見をもとに神奈川県立足柄上病院のチームはCOVID-19患者3名への投与治療をすぐに行った。その結果、3例とも2日ほどで状態が好転、という著しい効果があったとする症例報告を3月2日、日本感染症学会のサイトで以下内容で発表した。 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に乗り合わせたCOVID-19陽性者で、肺炎が増悪中の患者3名にシクレソニドを投与したところ、良好な結果が得られた。うち2例は咽頭ぬぐいPCR検査でまだ陽性のため、吸入量を増量して継続中。 COVID-19は(多くの報告のとおり)初期が軽症でも発症後7-10日で急速に悪化する印象。シクレソニドの投与時期は、重症化する前の、感染早期から中期あるいは肺炎初期が望ましい。 ウイルスの早期陰性化や重症肺炎への進展防止効果が期待される。 本ウイルスが肺胞上皮細胞で増殖し、肺障害を引き起こしながら、同時に肺胞マクロファージ等に感染し局所の炎症を起こすと推定され、それに対しシクレソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が、重症化しつつある肺傷害の治療に有効であることが期待されている。 COVID-19に対し広く投与されているロピナビル/リトナビル(カレトラ錠)(略号 LPV/r)対シクレソニドの比較 in vitro(試験管レベルでの研究)でウイルス増殖防止効果は同等以上、 肺胞到達時の組織濃度は数十倍、 副作用は前者が「下痢、吐き気、嘔吐、腹痛等」で高齢者における薬物動態については十分な検討がなされていない。後者は添付文書に副作用の記載はあるが、未熟児・新生児から高齢者まで広く用いられる安全な薬剤で、報告時点までで同院で有害事象はなかった。 価格は前者が 1,289.6円/日、後者は1キット2,169円(同院の1,200 μg/日 処方で)と安価。 この3例のみの症例数で効果を論じることはできないので、今後症例の蓄積と検討が望まれる。 — 日本感染症学会、COVID-19肺炎初期〜中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例 3月6日、国立感染症研究所は、上記3症例について「シクレソニドが、ウイルスの遺伝情報を担うリボ核酸 (RNA) の複製を阻害した」との見方を示した。また、MERSで抗ウイルス作用を示したとのデータがあったと述べた。 3月9日に厚生労働省健康局結核感染症課より要請を受け、帝人ファーマと親会社の帝人は翌10日、オルベスコの供給体制を(本剤使用中の気管支喘息患者への安定供給を確保した上で)2万本分確保すると発表した。オルベスコは海外のメーカーから導入していて帝人の一存では増産できないが、メーカーと協議しながら確保していく。 3月10日、日本環境感染学会は「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1)」を公開し、治療に関する説明の中に、3月2日の前版にはなかった本剤に関する記載を追加した(下線部)。 治療・予防(ワクチン)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、現在、有効性が証明された治療法はありません。ただし、抗HIV薬のロピナビル/リトナビル、抗インフルエンザ薬のアビガン、エボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビル、および吸入ステロイドの喘息治療薬であるシクレソニドなどが治療薬の候補として挙がっており、今後の検証によって効果が証明されれば治療薬として用いられる可能性があると思われます。 — 日本環境感染学会、 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第2版改訂版 ver.2.1) 3月12日に掲載された国立感染症研究所松山州徳らの審査前論文によれば、シクレソニドはコロナウイルスのもつ非構造タンパク質であるNSP15に作用してウイルスのRNA複製を抑制する。したがって、シクレソニドはコロナウイルスであるMERSまたはCOVID-19の患者の治療の候補薬となる。 3月16日の時点で、オルベスコで治療を受けているCOVID-19の患者は、10人程度であった。 3月20日、韓国のパスツール研究所のSangeun JeonらのチームはbioRxivサイト(未査読論文掲載サイト)に、「直訳:FDA承認済み医薬品からのSARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬候補の特定)」と題する論文を掲載した。同研究所は既にMERS株でのスクリーニング結果を発表していた(→ #主な候補の薬剤)。発表によれば、同研究所は「COVID-19の治療にアルベスコ(シクロソニド)が有効である」と判断した。同研究所では本ウイルスSARS-CoV-2を入手してスクリーニングで24種の薬剤を抽出した。これらは、レムデシビル、カレトラおよびクロロキンと同等かそれ以上の抗ウイルス活性を細胞実験で確認した。特に、シクレソニドの安全性、薬効、関連する海外の症例、および韓国国内での同剤の販売状況をレビューした結果、シクレソニドを「最も実現可能な医薬品(most feasible medication)」に選んだ。また、シクレソニドと並んでサナダムシ駆虫薬ニクロサミド(富士フイルム和光純薬、関東化学などが販売)(別名 ニクロシド)にも注目した。 3月22日、国立感染症研究所の松山州徳室長は次のことを明らかにした。 同研究所では2年前から、MERSに効く薬を1,200種の薬剤ライブラリからスクリーニング研究を実施し、シクレソニドが有効である可能性を見つけていた。 今回新型コロナウイルスに感染させた細胞にシクレソニドを作用させる実験を行ったところ、ウイルス量は100分の1程度にまで減った。 シクレソニドはウイルスの増殖を抑えると同時に、炎症を抑える効果もあると思われる。 3月23日、国立国際医療研究センターは、肺炎症状のないCOVID-19患者を対象として、シクレソニドの臨床試験(特定臨床研究)を早期に始める予定でプロトコール検討中であることを明らかにした(なお、同時期に、肺炎があり参加条件を満たす患者はレムデシビルの国際共同臨床試験に参加させる。一方、肺炎があるが当該条件を満たさない患者には、ファビピラビル(富士フイルム富山化学のアビガン)、ナファモスタットメシル酸塩(日医工のフサン)での臨床試験を検討中、と述べた)。 3月30日(日本時間)、UNESCOが開催した世界127カ国の閣僚級やWHOの専門家等が出席したテレビ会議で、韓国科学技術情報通信部は、シクレソニドおよびニクロサミドがCOVID-19に効果があったという事実を共有した。 3月31日の日本集中治療医学会の報告によれば、体外式膜型人工肺 (ECMO) によるCOVID-19治療対象患者(の一部)である21例のうち43%の9例の治療でシクレソニド(オルベスコ)投与。ちなみに、同じ統計で、ファビピラビル(アビガン)は38%の8例、リン酸クロロキンは5%の1例、カレトラは95%の21例(※ 母集団は厳密に同一ではない模様)。 4月14日に、インドのガウタムブッダ大学のチームが、未査読論文サイトに発表したところによれば、彼らはSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ (Mpro) を標的に、FDAの承認市販薬化合物からヒトの抗ウイルスおよび抗菌特性を備えたものを文献調査で12種選び、それらをコンピュータシミュレーションで仮想スクリーニングにかけて候補を探した。その結果最強のリファンピシン(抗生物質)の次に有望な薬剤として出てきたのは、シクレソニドであった。リファンピシンとシクレソニドは、参照用化合物として使用した、COVID-19治療によく使われてきたカレトラの成分2剤(ロピナビルとリトナビル)よりも、Mproとの結合親和性に優れていた。 4月14日、帝人ファーマは、COVID-19への取り組みの一環で、本剤の「追加的な供給の実現に向けた協議を輸入先とおこなって」いることを公表した。 4月18日の日本感染症学会の学術講演会「COVID-19 シンポジウム ―私たちの経験と英知を結集して―」で、シクレソニドの観察研究の4月8日時点中間報告が紹介された。それによれば、国内24施設から85症例が登録された。そのうち死亡は2例、また、投与後に気管挿管が必要になった悪化例は3例にとどまった。座長の土井洋平教授(藤田医科大学)は「シクレソニドは抗炎症効果と抗ウイルス作用をあわせもつ。幅広い年齢層に使われてきたので、安全に使えることが大きい」と期待感を示した。 国立国際医療研究センターでも、肺炎のない比較的軽症のCOVID-19患者をシクレソニド7日間吸入群と非吸入群にランダムに割り付け8日目の肺炎発症割合を検討する、という形の特定臨床試験が行われている。 同年12月23日、国立国際医療研究センターは、有効性を検証する臨床試験を行った結果、有効性が示されなかったと発表し、COVID-19に対する投与が推奨できないとしている。
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