治療対象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 08:58 UTC 版)
「超選択的気管支動脈塞栓術」の記事における「治療対象」の解説
気管支拡張症・非結核性抗酸菌症・特発性喀血症・肺アスペルギルス症・肺結核後遺症など、ほとんどの疾患の喀血治療に有効である。489例の喀血患者を対象としたBAEの長期治療成績を報告した岸和田リハビリテーション病院 喀血・肺循環センターの Ryugeらによるとそれぞれの比率は、34.0%、23.5%、18.4%、13.3%、6.8%である。BAEが有効なその他の疾患としては、肺膿瘍や肺放線菌症などの報告もある。 肺癌については、気管支動脈-肺動脈シャント機序による喀血ではなく、腫瘍自体からのoozing的な(滲むような)出血であることがほとんどであり、栄養血管の塞栓により腫瘍の梗塞壊死が生じて逆に大喀血をきたすリスクがあり、また完全に栄養血管を閉塞させるとその後の化学療法や血管内治療ができない(抗がん剤が到達するルートがなくなる)などの問題もあり、通常のBAEとは違う戦略が必要となる。元 岸和田リハビリテーション病院 喀血・肺循環センターの国定が肺癌の血管内治療について、また元 岸和田リハビリテーション病院 がんのカテーテル治療センター(現 吹田徳洲会病院 腫瘍内科)のSekiらが、肺癌の喀血に対する血管内治療の有用性を報告している。2019年には韓国のKichang Hらが、84例の肺癌の喀血患者に対するBAEのretrtospectiveな解析を報告しており、大喀血例と有空洞例が生命予後不良因子で有ること、追跡期間中の再喀血率は23.8%であることを示した。 現在は喀血治療のゴールドスタンダードとされる治療法にもかかわらず、Ishikawaらによると我が国において2010年から2018年に喀血で入院した患者約10万人のうち、9065名(8.4%)しかBAEが実施されていない。Ishikawaらによれば入院するほどの喀血患者は基本的に全てBAEの適応であり、にもかかわらずBAEがこれほど一部の患者にしか実施されていないのは、未だ実施できる施設が少ないことが原因であるが、さらにBAEを実施した660施設においても, このうち半数の334施設においては年間1例未満の経験数に過ぎず、石川らが2014年から提唱しているように喀血治療施設のセンター化が、標準治療であるBAEの喀血患者への実施率を高めるためにも、各施設の BAEの質を高めるためにも必要であろう。
※この「治療対象」の解説は、「超選択的気管支動脈塞栓術」の解説の一部です。
「治療対象」を含む「超選択的気管支動脈塞栓術」の記事については、「超選択的気管支動脈塞栓術」の概要を参照ください。
- 治療対象のページへのリンク