左官 左官の概要

左官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/21 02:58 UTC 版)

中国北京の左官職人

概説

イギリスの左官職人

石灰自然繊維などを組み合わせた自然素材からなる塗り壁(または吹き付け壁)を左官壁という[3]。左官壁に使う素材を左官材料という。

左官壁の代表例に漆喰壁がある。また、漆喰壁のように仕上げることができるよう鉱物質の粉末と水を練り合わせたプラスターや、生石灰と水を練り合わせた生石灰クリームなどもある[3]。このほか樹脂リシン壁や聚楽壁(じゅらくへき)のように吹き付けを用いながら塗り壁のような風合いに仕上げるものもある[3]

左官工事には(こて)を使うが、西洋では主に四角形で大型なのに対し、日本では主に剣先タイプのものが使用される[3]

左官壁の利点としては、多様な仕上げができること(光沢のある磨き仕上げやこて跡を残したラフな仕上げ等)、室内の調湿効果や脱臭効果が期待できることが挙げられる[3]。また、左官材料を塗り重ねることにより断熱効果や保温効果も期待できる[3]

左官壁の欠点は、施工及びその後の乾燥に手間と時間がかかることや、職人の技術の差が仕上がりに大きく影響することなどがある[3]。気候や建物壁面の下地の状態によっては左官壁に向かない場合もある[3]

日本建築における左官

日本は雨の多い気候であることから、特に日本建築では湿気の調節のために土壁漆喰の組み合わせが畳とともに重要な役割を果たしている[3]

日本家屋の壁は、などを格子状に編んだ小舞下地(こまいしたじ)の両面に、(わら)を混ぜたを塗り重ねる土壁、消石灰等の繊維でつくった漆喰が用いられるが、それらの仕上げに欠かせない職種であり、また、かつては土蔵の外壁やこて絵など、技術を芸術的領域にまで昇華させる入江長八などの職人も現れた。

明治以降に洋風建築が登場すると、ラス煉瓦そしてコンクリートモルタルを塗って仕上げるようになり、日本建築以外にも活躍の場が広がる。

昭和30年代 - 40年代の高度経済成長期には、鉄筋コンクリート構造(RC構造)の建物が大量に造られ、多くの左官職人が必要とされた。戸建住宅においても、当時の内壁は綿壁や繊維壁の塗り壁仕上げが多かった。またこの頃から浴室タイル貼りなども行うようになったほか、基礎工事、コンクリートブロック積み、コンクリート打設(打込み)時の均しなど仕事内容も多様化していった。

しかし、その後、住宅様式の変化や建設工期の短縮化(左官が使う材料である土・漆喰・モルタルは、一般的に乾燥・硬化に時間が掛かる)の流れから、壁の仕上げには塗装クロス等が増え、サイディングパネルや石膏ボードなど、建材の乾式化が進んだ。また、ビルマンション工事では、コンクリートにモルタルを厚く塗らない工法に変わったことや、プレキャストコンクリート工法(工場であらかじめコンクリート製品を製作した後、現場へ運搬し設置する工法)の増加 等の要因により、塗り壁や左官工事が急速に減少、職人数も減り続けていた。

最近になり、漆喰珪藻土等の天然素材を使用した壁が見直されると共に、手仕事による仕上げの多様性や味わいを持つ、左官仕上げの良さが再認識されてきている。特に「和モダン」と呼ばれる、日本らしさと欧米のモダンスタイルを併せ持つ建築には、多彩な左官仕上げが使われることが多い。

左官を大別すると、戸建住宅や寺社工事を専門とするものと、ビルやマンション工事を得意とするものに分けられる。後者の中からは近年、床仕上げ専門職(床下地のモルタル仕上げや床コンクリート直仕上げ等を行う)も現れている。

仕上げ方法

掻落し(かきおとし)

左官工事の仕上げ方法のひとつ。英語:scratching[4]。モルタル仕上げなどの表面がほぼ硬くなったところを、こて、金串、ブラシなどで表面をむらなく掻き落とし、粗面に仕上げるもの[4]掻落し粗面仕上げともいう[4]


  1. ^ 語源由来辞典
  2. ^ 「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」のユネスコ無形文化遺産登録(代表一覧表記載)について”. 文化庁 (2020年12月17日). 2021年6月5日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 間宮良行『家を建てる前に読む住まいの仕組み事典』西東社、2013年、149頁
  4. ^ a b c 渡辺優『図解インテリア・ワードブック』建築資料研究社、1996。 
  5. ^ 現代建築職人事典編集委員会「左官」『現代建築職人事典』工業調査会,p131


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