クラスター爆弾 不発弾問題

クラスター爆弾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 21:52 UTC 版)

不発弾問題

戦車用の成形炸薬弾型など、爆発指向性があるものは、弾頭部が下を向くようパラシュートリボンなどで落下姿勢を調整するが、これが対地落下速度を弱め、落下場所によっては信管に十分な衝撃が加わらなかったり、リボンやパラシュートがや建物に引っ掛かって不発となる場合がある。

種類や小弾の性質・運用状況にもよるが、過去の運用実績上の不発率は約5-40%とされている。通常爆弾と同程度まで不発率を下げても、大量の小弾を散布するクラスター爆弾の性質上、爆弾の総数が多いことで不発弾となる数が増える。

戦闘後の被害

国際連合レバノン南部地雷活動調整センターは、2006年8月までにレバノンで使用された旧式のクラスター爆弾で、子爆弾の4割が不発のまま残ったとしている。この戦闘ではイスラエル軍によりヒズボラに対して子爆弾644発を積載したクラスター爆弾が最低でも1,800発使用されたが、これの不発分が市街地などに散乱しており、全ての撤去には1年以上かかるとされている。

残留した不発弾が戦後復興に影響する場合もあり、レバノンでは戦闘中に避難していた市民乗用車で戻ってきたところ、その車列で爆発が発生、驚いた市民らが車から降りて更に爆発が発生し、30分で市民15人が死傷したケースもあると2006年9月20日の朝日新聞が報じている。中にはに引っ掛かった状態の子爆弾もあり、2006年10月23日の朝日新聞報道では、果樹園で取り入れを手伝っていた子供の死亡事例が多いと報じている。同記事は、同年8月14日-10月22日までの間に、20名が死亡、120名が負傷したとしている。

2003年には、ヨルダンクィーンアリア国際空港において、毎日新聞社のカメラマンであった五味宏基が「取材活動の記念に」とイラクから持ち出した不発弾が爆発し、空港職員が1人死亡、空港職員と一般人の計2名が負傷する事件が発生した。爆発したのは、形状などから地上発射兵器MLRSロケット弾で散布される成形炸薬弾M77と見られている。

2008年8月に起きた南オセチア紛争において、グルジア政府はロシア連邦軍がクラスター爆弾を使用したとして非難し、欧米マスコミもこれを大々的に報じた。ところが後に、関係者の証言からグルジア軍自身もクラスター爆弾を使用していたことが発覚する。双方の使用による犠牲者は数十名ほどではないかと見られている。

フランスリヨンベルギーブリュッセルに本拠のあるNGO団体Handicap International(ハンディキャップ・インターナショナル)は、「この爆弾で被害を受けるのは、過去98%が一般市民だ(残りが本来の目標である軍人[2]」と主張し、クラスター爆弾の使用を非難している。

使用禁止に向けた動き

2006年2月16日には、世界に先駆けてベルギーがクラスター爆弾を法的に禁止した[3]2007年2月22日2月23日には、ノルウェーが呼びかけたクラスター爆弾禁止に関する国際会議が、ノルウェーの首都オスロで開催された[4]。49か国が参加したこの会議では、参加国中の46か国によって2008年中にクラスター爆弾の使用・製造・移動・備蓄の禁止条約を実現させることを目指すという内容の「オスロ宣言」[5]が採択された。この宣言は、「受け入れがたい民間人被害をもたらすクラスター爆弾を禁止する条約を08年中に作る」とも述べ、クラスター爆弾の廃棄、使用された爆弾の撤去や被害者のケアへの枠組づくりも含んでいる。ノルウェーなどの提唱有志国が禁止条約作りを目指す運動を「オスロ・プロセス」と呼ぶ。

同会議に参加していた日本ポーランドルーマニアの3か国はこの宣言に加わらなかった。アメリカイスラエルロシア中国など、主要なクラスター爆弾の配備運用国は会議そのものに参加していない。イギリスは土壇場で参加を決め[6]、会議の翌月に英軍が使用するクラスター爆弾を自爆機能ありのものに切り替え、不発弾による被害を生じやすいものは即時使用を停止し、廃棄することを決定した[7]。オスロ会議の前後にはノルウェーやオーストリアスイスなどがクラスター爆弾の使用を凍結している。2006年2月に使用を禁止したベルギーは、会議後の2007年3月にはクラスター爆弾の製造企業への投資を違法とした[8]

日本が当初宣言に加わらなかった理由は、国際的に見て特殊な防衛事情を持つ日本の安全保障上の判断とされている。詳細は「保有国の対応」の節を参照。

2007年5月23日から5月25日までは、ペルーの首都リマで68か国が参加して「クラスター爆弾禁止リマ会議」が開催されたが、禁止条約の草案の合意には至らなかった[9]

2008年5月28日ダブリンでの国際会議で、無力化機能を有する一部の型を除いて禁止する条約案が合意された。条約文第2条は、「禁止対象とならないクラスター弾」の要件を以下のようなものとしている[10]

  • (第2条2項c) - 周囲に対する無差別的な影響ならびに不発弾による危険性を回避するために次の特性を備える弾薬。
  1. 10個未満の爆発性子弾しか含まない。
  2. それぞれの爆発性子弾の重量が4キログラム以上である。
  3. 単一の目標を察知して攻撃できるよう設計されている。
  4. 電気式の自己破壊装置を備えている。
  5. 電気式の自己不活性機能を備えている。

2016年9月、アメリカで唯一製造していたテキストロンが製造中止を決定した[11]

不発弾の性質

クラスター爆弾の不発弾を、「意図的に不発になるよう仕組まれており、復旧作業の妨害を狙っている」「民間人(子供)の興味を引く玩具のような形状と色にして、拾うように仕向けている」「地雷禁止条約の抜け道として、不発弾を地雷代わりにしている」とし、非人道的であるといった批判もある。

滑走路などの軍事目標に対して復旧を遅らせる目的で、爆撃終了後に爆発するよう時限信管を設定したり、子弾に地雷を混在させて使用するイギリス空軍のトーネード搭載JP233 ディスペンサーなどの例もあるが、不発弾は発生が偶発的で分布などをコントロールできないため、「意図的に不発弾を発生」させたり、「特定の標的に拾わせる」といった運用は現実的でない。玩具のようとされる形状は空気抵抗で落下姿勢や散布範囲を調整[注釈 4]するためのもので、明るい黄色などの鮮明な色に塗装されているのは、目に付く色で不発弾の存在を強調して触らないよう注意を促し、戦闘終了後の発見回収を容易とするためのものである。

この警戒色は、人道援助として空中散布される救援用非常食レーション)を目立たせるための塗装と同じ色だったことで、アフガニスタンでは混乱の原因となった。アメリカ国防省は2001年11月1日にこの問題を認め、クラスター爆弾の危険性に対して市民に注意を促すチラシを配布すると共に、非常用食料はオレンジ色のパッケージに変更すると発表している[12]


注釈

  1. ^ 例・親子爆弾事件
  2. ^ 250kg爆弾×1発をクラスター爆弾化すれば、在来爆弾の数倍の面積を制圧できる。同じ面積を制圧するのに投下する爆弾の個数は従来の数分の1で済み、爆撃作戦に必要な航空機の数も、在来型航空爆弾を使った場合の数分の1で済む。戦闘爆撃機であるF-15Eの場合、CBU-59なら最大26発を搭載でき、1回の出撃で最大6,422発の子弾を投下することができる
  3. ^ 第二次大戦後、戦闘用航空機の単価は高騰を続け機数が削減傾向にあったほか、弾道ミサイルの登場で戦略爆撃機とそれに対する迎撃機が削減された
  4. ^ ある程度風に乗る形状でないと、一箇所に集中して落下してしまい効果範囲が狭まる
  5. ^ テキストロンは軍事以外に金融業や民需部門を所有しており上記4社以外にも提携やライセンス生産を受け持つ日本企業は複数存在している。

出典

  1. ^ Diplomatic Conference for the Adoption of a Convention on Cluster Munitions "Convention on Cluster Munitions" - 英語正文第2条(2008年5月20日)"“Cluster munition” means a conventional munition that is designed to disperse or release explosive submunitions each weighing less than 20 kilograms, and includes those explosive submunitions."
  2. ^ Handicap Internationalのレポート
  3. ^ Bulletin of Cluster Munition Coalition for February 2006 (英文)
  4. ^ Pledge to seek cluster bomb ban, the BBC, 23 February 2007 (英文)
  5. ^ 「オスロ宣言」、地雷廃絶日本キャンペーンのサイト内、PDF文書
  6. ^ 46 Nations commit to ban cluster bombs, The Diana, Princess of Wales Memorial Fund, 23 February 2007 (英文)
  7. ^ Britain bans 'dumb' cluster bombs, the BBC, 20 March 2007 (英文)
  8. ^ World Briefing | Europe: Belgium: Cluster Bomb Investments Barred, the New York Times, March 3, 2007 (英文)
  9. ^ クラスター爆弾禁止リマ会議:草案合意に至らず, the Inter Press Service Japan, 2007年6月12日
  10. ^ Diplomatic Conference for the Adoption of a Convention on Cluster Munitions "Convention on Cluster Munitions" - 英語正文(2008年5月20日)
  11. ^ 証券取引委員会
  12. ^ ヒューマン・ライツ・ウォッチ「Cluster Bomblets Litter Afghanistan」
  13. ^ [1] - アーマード・インターナショナル。英文
  14. ^ Yemen: Cluster Munitions Wounding Civilians: US Supplied Weapon Banned by 2008 Treaty, Human Rights Watch, February 14, 2016.
  15. ^ クラスター弾の軍事的有用性と問題点―兵器の性能、過去の使用例、自衛隊による運用シナリオ― 国立国会図書館レファレンス2007-09 福田毅
  16. ^ クラスター弾に関する条約 - 日本外務省
  17. ^ 防衛大臣記者会見の概要(2008/11/28)
  18. ^ [2] - 代替案を報じる毎日新聞電子版
  19. ^ [3] - 時事通信電子版
  20. ^ 防衛省「クラスター弾の廃棄完了について」
  21. ^ “日本の4社、クラスター爆弾製造企業に投資 NGO発表”. 朝日新聞. (2017年5月23日). http://www.asahi.com/sp/articles/ASK5R55NPK5RUTFK00R.html 2017年5月24日閲覧。 
  22. ^ [4] Lists of countries involved in the problem of cluster munitions(クラスター爆弾の問題に関わる国の一覧)
  23. ^ Edward McGill Alexander (July 2003). Appendix A to Chapter 9 of the Cassinga Raid. University of South Africa(南アフリカ大学. http://uir.unisa.ac.za/bitstream/10500/1475/7/12appendix9a9b.pdf. 
  24. ^ [5] MND says Taiwan is ready to make cluster-bombs クラスター爆弾製造 準備は整っている-台湾防衛省 (英文)
  25. ^ [6] Estonia remains clusterbombs in its weaponry エストニア クラスター爆弾を兵器として保有(エストニア語)
  26. ^ [7]Air Force Weapons: Alpha Bomb, SAAF:South African Air Force
  27. ^ [8] Podpis pogodbe o kasetnem strelivu:: Prvi interaktivni multimedijski portal, MMC RTV クラスター爆弾の条約の署名(スロベニア語)




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