列車 編成

列車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 14:13 UTC 版)

編成

列車は複数の車両を連結して運転されることがあり、このことを「編成を組む」などと呼び、組み合わせた車両を指して編成と呼ぶ。編成には、列車として具備するべき前述の条件に加えて、動力装置、電源系統、サービス設備などの制約もある[11]

機関車が客貨車を牽引する動力集中方式の場合は、牽引定数が問題となる。列車ダイヤで定められた時刻を守って列車を運転するためには一定の速度以上で走行する必要があり、運転対象路線にある勾配と機関車の性能から、牽引する編成の重量は一定の範囲内に収まっている必要がある[12]。編成の各車両に動力が分散している電車方式(動力分散方式)の列車では、運転を想定している路線の勾配に合わせて、動力車の比率(MT比)を決める必要がある[13]

列車暖房においては、蒸気暖房の時代には蒸気機関車またはそれ以外の機関車では蒸気発生装置から蒸気を供給して暖房を行っており、蒸気発生装置のない電気機関車ディーゼル機関車では暖房を使えなかった。電気暖房においても、機関車に電気暖房用の送電設備、客車にそれに対応したヒーターが搭載されている必要があり、対応しなければ暖房を使えないという制約がある[14]。冷房の面でも、冷房装置とそれに対応した電源がなければ冷房を使えない[15]

サービスの面では、必要に応じてグリーン車一等車)などの優等車両と普通車の割合を決めて編成に連結する[16]。現代では売店での食品販売や外食産業に押されて連結は減少しているが、供食設備として食堂車やビュフェ車が連結されることがある[17]。優等車両や寝台車を連結するに際しては、特別料金を払っていない旅客がこうした車両内を通り抜けることを防止するために、編成の一端にまとめて優等車両や寝台車を連結したり、食堂車やロビーカーを間に挟んだりする対策が行われる[18]荷物車郵便車は駅における取り扱い設備の配置の関係から、連結位置が決まっている[19]

線路容量や車両数の制約から、列車の分割・併合を行うことがある。列車が進行していく際に、輸送需要が低くなるにつれて一部の車両を切り離していく、あるいは輸送需要が高くなるにつれて車両を増結していくような運行の仕方(増解結)をすることがある。またはそうした切り離した車両が支線に直通して別の終着駅となる列車になっていたり、別の始発駅を出発して支線から直通してくる列車を増結したりする(多層建て列車)こともある[20]

初期の車両では、1両単位で電源や暖房などが独立した構成になっており、自由に連結・解放することができた。しかしそうした機器類にかかる費用を節約するため、走行に必要な機器類や空調電源などを編成全体でまとめて最適設計して各車両に配置する、固定編成という考えが生まれた。さらに基本編成と付属編成という組み合わせにして、輸送需要に応じて付属編成を切り離すといった運用が行われている[21]


  1. ^ 平凡社『世界大百科事典』「列車」、土田廣 執筆。
  2. ^ Railways Act 1993”. legislation.gov.uk. 2018年2月12日閲覧。
  3. ^ a b Oxford Dictionary Lexico "train"
  4. ^ Atchison, Topeka and Santa Fe Railway (1948). Rules: Operating Department. pp. 7 
  5. ^ 鉄道に関する技術上の基準を定める省令”. e-gov. 2018年2月12日閲覧。
  6. ^ 『鉄道のひみつ』pp.96 - 97
  7. ^ 電車”. コトバンク. 2018年2月11日閲覧。
  8. ^ a b 土田廣. “列車”. コトバンク(日本大百科全書). 2018年2月11日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『鉄道辞典 下巻』pp.1775 - 1776
  10. ^ a b 列車”. コトバンク(世界大百科事典 第2版). 2018年2月11日閲覧。
  11. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.3 - 5
  12. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.186 - 192
  13. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.129 - 132
  14. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.139 - 148
  15. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.148 - 152
  16. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.101 - 105
  17. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.88 - 92
  18. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.59 - 66
  19. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.67 - 72
  20. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.132 - 136
  21. ^ 『車両研究で広がる鉄の世界』pp.15 - 17
  22. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.218
  23. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.213 - 214
  24. ^ a b 『鉄道工学ハンドブック』p.214
  25. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.214 - 216
  26. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.216 - 218
  27. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.222
  28. ^ a b 『鉄道工学ハンドブック』p.223
  29. ^ a b 『電気鉄道ハンドブック』p.445
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  31. ^ 『電気鉄道ハンドブック』pp.436 - 443
  32. ^ a b c d 『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.52
  33. ^ 『日本国有鉄道論』pp.148 - 152
  34. ^ 『日本国有鉄道論』pp.152 - 155
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  36. ^ 『鉄道辞典 下巻』pp.1760 - 1761
  37. ^ 『日本国有鉄道論』pp.156 - 157
  38. ^ 『日本国有鉄道論』pp.158 - 159
  39. ^ 観光列車”. JTB総合研究所. 2017年11月18日閲覧。
  40. ^ a b c Penny Morris (2017年4月12日). “Three Types of Modern Freight Trains”. Our Pastimes. 2018年2月17日閲覧。
  41. ^ Jarrett Zielinski. “UNIT VS. MANIFEST TRAINS” (PDF). CRUDE MARKETS & RAIL TAKEAWAY SUMMIT CANADA 2013. 2018年2月17日閲覧。
  42. ^ 『日本国有鉄道論』pp.161 - 163
  43. ^ Unit train”. Encyclopædia Britannica. 2018年2月17日閲覧。
  44. ^ What is Intermodal”. ユニオン・パシフィック鉄道. 2018年2月17日閲覧。
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  46. ^ 『鉄道辞典 上巻』p.265
  47. ^ a b c d e f 『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.53
  48. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.234
  49. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.31
  50. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.210
  51. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.291
  52. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.388
  53. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.314
  54. ^ 『現代国語例解辞典』第二版、 1993年、小学館、279頁。ISBN 4-09-501032-0
  55. ^ a b 『日本国有鉄道論』pp.149 - 151
  56. ^ 幻の「寝台新幹線」構想 食堂車は高速化で姿消す 東海道新幹線、開業50年(上)”. NIKKEI STYLE (2014年9月8日). 2018年2月16日閲覧。
  57. ^ 『電気鉄道ハンドブック』p.428
  58. ^ 『電気鉄道ハンドブック』p.429
  59. ^ a b 『国鉄・JR列車名大事典』pp.14 - 35
  60. ^ 「ネームド・トレイン50年」
  61. ^ 『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』pp.85 - 86
  62. ^ 『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』pp.86 - 87
  63. ^ 『貨物鉄道百三十年史 中巻』pp.261 - 263





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