列車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 14:13 UTC 版)
列車の種類
用途目的による分類
用途目的による列車の分類として、運賃を徴収して一般の旅客貨物を輸送する営業用列車と、鉄道事業者の業務の都合上運転する事業用列車の区分がある[9]。営業用列車はさらに、下記のようにいくつかに区分されている。
旅客列車
- 長距離列車
- 都市や観光地など需要の集中する地点を結んで設定され、中長距離を移動する人の需要を主体に考えた列車である。所要時間の関係から夜行列車となる場合もある。場合によって特急列車、急行列車、準急列車などの優等列車として設定される。長距離列車は、旅客列車の中ではもっとも大きな収入源となる[33]。
- 通勤列車
- 大都市圏を中心に、通勤輸送を担当する列車である。膨大な輸送需要と時間的な需要の変化が大きいことを特徴とする。鉄道旅客輸送が斜陽となっている国においても、大都市の通勤輸送に限っては鉄道の巨大な輸送力に頼らざるを得ない傾向がある。輸送力の整備に多大な費用が掛かるにもかかわらず、その設備が短時間しか稼働せず、しかも社会的な要請により割引率の高い運賃となっていることから、鉄道経営に与える負担が大きい[34]。
- 団体専用列車
- 事前に申し込みを受け付けた団体の輸送のために運転される列車である。大口団体輸送と小口団体輸送に分けられ、大口団体の場合はそのために特別に列車を編成して臨時列車として運転するが、小口団体は一般旅客と混乗輸送となる[35]。小口団体を何組も合わせて同一列車で輸送する集約臨時列車もある[36]。
- 荷物列車
- 乗客の手荷物や小口荷物を扱う旅客列車の一種[32]。荷物類は本質的には、貨物列車で運んでいる貨物と異なるものではないが、旅客の手荷物は旅客と一緒に輸送する必要があり、また小荷物類は速達の必要があることから、旅客列車に連結した荷物車で運ぶことになり、旅客輸送の一部であるとされてきた。しかし手小荷物の取扱量が増えると、その積み下ろしのために旅客列車を長時間停車させることはサービス上問題であり、輸送効率の点からも荷物車だけを集約した荷物列車を運行することになって、さらに貨物列車との差異は小さくなった[37]。なお郵便車による郵便物輸送も同様の理由で旅客輸送の一部であるとされる[38]。
- 観光列車
- 単なる移動手段でなく、乗車自体を観光目的とするサービス(豪華な内外装の車両・景色・食事など)を提供する列車[39]。
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長距離列車の例:アメリカのアセラ・エクスプレス
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団体専用列車の例:日本のサロンエクスプレス東京
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荷物列車の例:イギリスの325形郵便物輸送電車
貨物列車
- 一般貨物列車
- 様々な種類の貨物を搭載した雑多な貨車を連結した貨物列車である。発地も着地もばらばらであり、操車場で貨車をつなぎ変えながら目的地へ輸送する[40][41]。1両の貨車を特定の荷主で占有(貸切)して輸送するものを車扱い(しゃあつかい)、複数の荷主で共有して輸送するものを小口扱いという[42]。
- 専用貨物列車
- 専用貨物列車はユニットトレインとも呼ばれ、単一種類の貨物を単一種類の貨車で、決まった発地から着地まで輸送する[40]。一般貨物列車とは異なり、途中で貨車をつなぎ変えることなく直送するため、時間的にも費用的にも有利な方式である。石炭・穀物・セメントなど多くのばら積み貨物がこの方式で輸送されている[43]。
- インターモーダル貨物列車
- インターモーダル輸送を行う貨物列車で、コンテナ船やトラックなど、異なる貨物輸送手段との間を連絡して貨物を輸送する。貨物を搭載した輸送コンテナ(一般的にISO 668で規格化された海上コンテナ)やトレーラーを貨物列車に搭載する。トレーラーを搭載する場合ピギーバック輸送となる[40][44]。
また、鉄道車両自体を貨物として輸送する甲種鉄道車両輸送や、大物車を使った特大貨物輸送も貨物列車の一種である[45]。
混合列車
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客車と貨車を併結した列車を混合列車という。さらに区別して、客車に貨車を併結した列車を混合列車、貨車に客車を併結した列車を準混合列車という[32]。準混合列車は貨物列車としての運行が主体であり、貨車の解結、貨物の積み下ろしに重点が置かれて、旅客扱いは従たるものである[46]。
事業用列車
事業用列車は、鉄道事業のために用いられるが営業列車ではない列車である[47]。一般の旅客貨物を輸送する列車と使命が異なる列車として、特殊列車とも呼ぶ[48]。
- 工事列車
- 鉄道の工事用材料を運搬する列車で、軌条・砂利などを運び、停車場以外の場所でも積み下ろしする[9]。
- 試運転列車
- 新製車両や修理完了した車両の試験・確認や、線路・橋梁などの状態確認といった目的で運転される列車[9]。
- 回送列車
- 車両を車両基地から発駅まで送り込んだり、貨物を降ろした貨車を送り返したり(返空)する目的で運転される列車[49]。回送列車を特殊列車の分類ではなく、旅客列車や貨物列車の分類とする考え方もある[50]。機関車が客車や貨車を連結せずに単独で走ることを特に単行機関車列車、略して単機という[51]。
- 排雪列車
- 線路の除雪をするために運転される列車。雪かき車を用いて積雪を排除しながら運転する。近くに適当な雪捨て場がない場合に、貨車に雪を積み込んで河川などの適当な雪捨て場まで運ぶために運転する雪捨列車もある[9]。ラッセル車を用いる排雪列車は列車ダイヤに組み込まれて冬期間は定期的に運転される例が多く、ロータリー車を用いる排雪列車は特殊排雪列車などと呼ばれ、必要に応じて臨時に設定されることが多い。モーターカーを用いた排雪も行われるが、正式には車両ではなく機械としての扱いである[52]。
- 救援列車
- 事故や故障が発生した際に、現場に復旧のための資材や要員を送り込んだり、車両を収容したりする目的で運転される列車である。その性格上、列車としての要件に例外が認められており、駅間での後退が認められたり、信号条件にかかわらず1閉塞区間に複数列車の進入が認められたりする[9]。
- 配給列車
- 鉄道事業者内部で必要とされる物品を部内各所に配給するために運転される列車である[9]。
- お召し列車
- お召し列車、ロイヤルトレイン(宮廷列車)といった貴賓を乗せる列車も特殊列車として扱われることがある。日本の場合は、天皇・皇后が乗る列車がお召し列車、皇太子が乗る列車が御乗用列車と呼ばれる。またお召し列車の安全のために、その直前に先行して走らせる列車を指導列車、通称露払い列車と呼ぶ[9][53]。
動力車による分類
列車は動力車の種類により、機関車牽引列車、電車列車、気動車列車などに分類される[47]。異種動力車が併結されている場合はメインとなる動力車が基準となる[47]。機関車牽引列車には、蒸気機関車を使用する蒸機列車、電気機関車を使用する電機列車、内燃機関車を使用する内燃機列車などがある[9]。機関車牽引列車は、特に蒸機列車は、「汽車」とも呼ばれる[54]。
運行時期による分類
- 定期列車
- 毎日定期的に運行される列車(ただし曜日により時刻が多少異なる場合を含む)[47]。
- 季節列車
- 特定の期間限定して運行される列車[47]。たとえば、夏の多客期や冬のスキーシーズンに合わせて運転されるような列車のことで、季節による輸送需要の変化に対応するためのものである[45]。
- 臨時列車
- 特定の日に限定して運行される列車[47]。団体向けの列車(団体専用列車)や年末年始・ゴールデンウィークなどの多客時期に増発する列車、イベントのために設定する列車、鉄道事業者の内部目的で運転される特殊列車(試運転・排雪・救援・工事・配給など)などがある[45]。
運行距離による分類
- 長距離列車
- 直通列車あるいは直行列車などとも呼び、ある区間の全部を始点から終点まで通しで運転する列車である[9]。
- 区間列車
- 比較的短区間を運転するもので、近郊列車、ローカル列車などとも呼ぶ[9]。
- 小運転列車
- 区間列車の中でも特に短い区間を運行する列車のことを区別して小運転列車、俗に「ちょん行」と呼ぶ[9]。
運転時間帯による分類
- 昼行列車
- 昼間有効時間帯に運転される列車であり、始発駅の出発時刻がおおむね5時以降、終着駅の到着時刻がおおむね23時以前程度になるものである[9]。昼行列車は夜行列車に比べると快速性に重きをおき、1日をできるだけ有効に使えるような時刻設定が良いとされる[55]。
- 夜行列車
- おおむね18時以降に始発駅を出発し、おおむね翌朝8時頃までに終着駅に到着するような列車である。主要な大都市相互間の有効時間帯を考慮して設定される。所要時間が長い列車になると、昼間に運転される区間については昼行列車の性格を併せ持つことがある[9]。夜行列車の場合は必ずしも速達性は重視されず、出発地と到着地が適時になることが重視される[55]。所要時間が6時間を超えると、旅客は昼行列車より夜行列車を好む傾向があるとされている[56]。
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