列車 列車の概要

列車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/08 03:21 UTC 版)

概説

列車の定義は国によって微妙に異なる。

定義

(鉄道の歴史が長い)イギリスでは、1993年鉄道法英語版83(1)条において、列車 (train) を「(a) 2両またはそれ以上の鉄道車両が連結されたもので、少なくともそのうち1両は機関車であるもの、(b) 他の鉄道車両と連結されていない機関車」と定義している[2]機関車方式が前提となった定義を掲載している)。なおOxford Dictionaryでは「機関車や(車両と)一体化したモータ群(integral motors)によって動かされる、一連の連結された鉄道車両や貨車」という定義を掲載しており、機関車方式以外も想定している。[3]

アメリカ合衆国アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道1948年の運行規程では列車を「客貨車の有無にかかわらず、1両またはそれ以上の機関車が連結されており、標識類が示されたもの」と定義していた[4]

日本においては国土交通省の定めた、2002年施行の鉄道に関する技術上の基準を定める省令第2条13項で、「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両をいう」とされている[5]。日本では、「電車」という言葉で鉄道の線路を走る車両すべてを指すことがあるが[6]、電車は本来は電力によって走行する鉄道車両のことを指しており[7]、列車であるためにはどのような動力源を用いていてもよい[8]。(日本では)専門的には、停車場)の外の線路を運転させる目的で組成された車両のことを特に「列車」と呼び、同じ車両であっても運転させる目的をもたずに留置されているようなものは列車ではなく、単なる車両である[9]

(上述のイギリス、アメリカ、日本の、法規や運行規定の定義で、三国とも同様だと判るが)、車両数に関係なく、動力車単独であっても「列車」となりうる[10]

種類

列車は、その目的、運転時期、使用動力車、性質などにより分類できる[10]

語源

英語の「train トレイン」の語源は、古フランス語名詞の「train トラン」(男性形)や 「traine トレーヌ」 (女性形)である。これは古フランス語の「trahiner」という動詞から派生する。これは更にラテン語の「trahere」 (=引く、引っ張る)にたどり着く[3]

編成

列車は複数の車両を連結して運転されることがあり、このことを「編成を組む」などと呼び、組み合わせた車両を指して編成と呼ぶ。編成には、列車として具備するべき前述の条件に加えて、動力装置、電源系統、サービス設備などの制約もある[11]

機関車が客貨車を牽引する動力集中方式の場合は、牽引定数が問題となる。列車ダイヤで定められた時刻を守って列車を運転するためには一定の速度以上で走行する必要があり、運転対象路線にある勾配と機関車の性能から、牽引する編成の重量は一定の範囲内に収まっている必要がある[12]。編成の各車両に動力が分散している電車方式(動力分散方式)の列車では、運転を想定している路線の勾配に合わせて、動力車の比率(MT比)を決める必要がある[13]

列車暖房においては、蒸気暖房の時代には蒸気機関車またはそれ以外の機関車では蒸気発生装置から蒸気を供給して暖房を行っており、蒸気発生装置のない電気機関車ディーゼル機関車では暖房を使えなかった。電気暖房においても、機関車に電気暖房用の送電設備、客車にそれに対応したヒーターが搭載されている必要があり、対応しなければ暖房を使えないという制約がある[14]。冷房の面でも、冷房装置とそれに対応した電源がなければ冷房を使えない[15]

サービスの面では、必要に応じてグリーン車一等車)などの優等車両と普通車の割合を決めて編成に連結する[16]。現代では売店での食品販売や外食産業に押されて連結は減少しているが、供食設備として食堂車やビュフェ車が連結されることがある[17]。優等車両や寝台車を連結するに際しては、特別料金を払っていない旅客がこうした車両内を通り抜けることを防止するために、編成の一端にまとめて優等車両や寝台車を連結したり、食堂車やロビーカーを間に挟んだりする対策が行われる[18]荷物車郵便車は駅における取り扱い設備の配置の関係から、連結位置が決まっている[19]

線路容量や車両数の制約から、列車の分割・併合を行うことがある。列車が進行していく際に、輸送需要が低くなるにつれて一部の車両を切り離していく、あるいは輸送需要が高くなるにつれて車両を増結していくような運行の仕方(増解結)をすることがある。またはそうした切り離した車両が支線に直通して別の終着駅となる列車になっていたり、別の始発駅を出発して支線から直通してくる列車を増結したりする(多層建て列車)こともある[20]

初期の車両では、1両単位で電源や暖房などが独立した構成になっており、自由に連結・解放することができた。しかしそうした機器類にかかる費用を節約するため、走行に必要な機器類や空調電源などを編成全体でまとめて最適設計して各車両に配置する、固定編成という考えが生まれた。さらに基本編成と付属編成という組み合わせにして、輸送需要に応じて付属編成を切り離すといった運用が行われている[21]

列車の設定と運行

列車の運行計画

列車ダイヤ(ダイヤグラム)

列車の運行計画は、ダイヤグラム(列車ダイヤ)の形で立案される[22]

運行計画においてはまず、対象路線の輸送量を想定し、各種列車の輸送力を設定する。乗車率(混雑率)が低いほど、旅客にとって座席を確保しやすくなってサービス上は好ましいが、乗車率が低いと輸送量に対し必要とされる車両数が増えることになり、鉄道事業者の運営コスト上は好ましくない。競合する交通機関の状況を踏まえて決定される[23]

続いて列車の設定本数と区間を決定する。輸送量に応じて列車本数を調整したり、編成両数を増減したりする。また列車の運転する区間や異なる路線への直通列車の設定を検討する。列車本数が多い方が旅客にとっては利用しやすいが、線路容量や車両運用との兼ね合いもある[24]

設定した列車の配列順序・出発時刻を決定する。利用者の利便性を考慮しつつ、線路容量や駅の発着番線の都合などを考えて、各列車の順序と時刻を決定する[24]。そして各列車の使用車両の性能や線路の条件に応じて計算された基準運転時分に基づいて駅間の走行時間を決め、各列車の停車駅と停車時間を定めて列車の時刻を確定していく[25]。こうした時刻を決定するにあたっては、各駅間の閉塞の条件、線路容量、駅の信号の条件、車両の性能といった条件から決まる最短時隔を守る必要がある[26]

列車には、他の列車と区別するために、列車番号が与えられる。列車のおおよその性質を知ることができるような番号体系が定められており、運行管理上重要であることから、同一駅に同一番号の列車が発着しないようにされている[8]

列車の時刻決定と表裏一体のものとして、列車に乗務員および車両の割り当てを行う、乗務員運用計画および車両運用計画(運用)が作成される。乗務員や車両が循環して各列車に割り当たっていくことで、実際の列車の運行が行われる[27]

運行管理

運転指令所から列車の運行管理が行われる。

列車の運転は、常に当初の計画通りに行えるわけではなく、何らかの原因で列車に遅れが生じることがある。そうした列車の運行状況を監視し、必要に応じて対応策を講じて正常な運転に復帰させるために運行管理が行われる[28]

元来は、中央の運転指令所から電話で各地の駅や列車と連絡を取って指示命令を行っていた。現代においては、列車集中制御装置 (CTC) の導入が進み、運転指令所から各駅の信号設備を遠隔制御して列車の運行を制御している[29][28]。また運転指令所と列車の情報伝達には、列車無線が用いられるようになった[29]

CTCにおいても、列車の現在位置と列車ダイヤをもとに指令員が判断を行い、制御盤から信号を制御して列車の運行を管理していた。さらなる発展として、列車の運行状況をコンピューターを用いて自動的に追跡・監視し、あらかじめ入力された列車ダイヤのデータと照合して、自動的に運行管理を行う自動進路制御装置 (PRC) という装置が導入されるようになった[30]

列車ダイヤが乱れた際には、運転指令員が列車ダイヤや車両・乗務員運用計画の変更を行う。この作業のことを運転整理と呼ぶ。運転整理は、評価基準があいまいで難しく、制約が厳しいうえに大規模な組合せ最適化問題であるという、非常に難しい問題である[31]


  1. ^ 平凡社『世界大百科事典』「列車」、土田廣 執筆。
  2. ^ Railways Act 1993”. legislation.gov.uk. 2018年2月12日閲覧。
  3. ^ a b Oxford Dictionary Lexico "train"
  4. ^ Atchison, Topeka and Santa Fe Railway (1948). Rules: Operating Department. pp. 7 
  5. ^ 鉄道に関する技術上の基準を定める省令”. e-gov. 2018年2月12日閲覧。
  6. ^ 『鉄道のひみつ』pp.96 - 97
  7. ^ 電車”. コトバンク. 2018年2月11日閲覧。
  8. ^ a b 土田廣. “列車”. コトバンク(日本大百科全書). 2018年2月11日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『鉄道辞典 下巻』pp.1775 - 1776
  10. ^ a b 列車”. コトバンク(世界大百科事典 第2版). 2018年2月11日閲覧。
  11. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.3 - 5
  12. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.186 - 192
  13. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.129 - 132
  14. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.139 - 148
  15. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.148 - 152
  16. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.101 - 105
  17. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.88 - 92
  18. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.59 - 66
  19. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.67 - 72
  20. ^ 『国鉄/JR列車編成の謎を解く』pp.132 - 136
  21. ^ 『車両研究で広がる鉄の世界』pp.15 - 17
  22. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.218
  23. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.213 - 214
  24. ^ a b 『鉄道工学ハンドブック』p.214
  25. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.214 - 216
  26. ^ 『鉄道工学ハンドブック』pp.216 - 218
  27. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.222
  28. ^ a b 『鉄道工学ハンドブック』p.223
  29. ^ a b 『電気鉄道ハンドブック』p.445
  30. ^ 『電気鉄道ハンドブック』pp.446 - 447
  31. ^ 『電気鉄道ハンドブック』pp.436 - 443
  32. ^ a b c d 『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.52
  33. ^ 『日本国有鉄道論』pp.148 - 152
  34. ^ 『日本国有鉄道論』pp.152 - 155
  35. ^ 『日本国有鉄道論』pp.155 - 156
  36. ^ 『鉄道辞典 下巻』pp.1760 - 1761
  37. ^ 『日本国有鉄道論』pp.156 - 157
  38. ^ 『日本国有鉄道論』pp.158 - 159
  39. ^ 観光列車”. JTB総合研究所. 2017年11月18日閲覧。
  40. ^ a b c Penny Morris (2017年4月12日). “Three Types of Modern Freight Trains”. Our Pastimes. 2018年2月17日閲覧。
  41. ^ Jarrett Zielinski. “UNIT VS. MANIFEST TRAINS (PDF)”. CRUDE MARKETS & RAIL TAKEAWAY SUMMIT CANADA 2013. 2018年2月17日閲覧。
  42. ^ 『日本国有鉄道論』pp.161 - 163
  43. ^ Unit train”. Encyclopædia Britannica. 2018年2月17日閲覧。
  44. ^ What is Intermodal”. ユニオン・パシフィック鉄道. 2018年2月17日閲覧。
  45. ^ a b c 『鉄道工学ハンドブック』p.211
  46. ^ 『鉄道辞典 上巻』p.265
  47. ^ a b c d e f 『ダイヤグラムで広がる鉄の世界』p.53
  48. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.234
  49. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.31
  50. ^ 『鉄道工学ハンドブック』p.210
  51. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.291
  52. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.388
  53. ^ 『新版 鉄道用語事典』p.314
  54. ^ 『現代国語例解辞典』第二版、 1993年、小学館、279頁。ISBN 4-09-501032-0
  55. ^ a b 『日本国有鉄道論』pp.149 - 151
  56. ^ 幻の「寝台新幹線」構想 食堂車は高速化で姿消す 東海道新幹線、開業50年(上)”. NIKKEI STYLE (2014年9月8日). 2018年2月16日閲覧。
  57. ^ 『電気鉄道ハンドブック』p.428
  58. ^ 『電気鉄道ハンドブック』p.429
  59. ^ a b 『国鉄・JR列車名大事典』pp.14 - 35
  60. ^ 「ネームド・トレイン50年」
  61. ^ 『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』pp.85 - 86
  62. ^ 『小池滋のヨーロッパ鉄道 歴史と文化II』pp.86 - 87
  63. ^ 『貨物鉄道百三十年史 中巻』pp.261 - 263





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