ヘブライ語 ヘブライ語の概要

ヘブライ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/01 23:44 UTC 版)

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ヘブライ語
עברית, Ivrit
クムランで発見された最も長い死海文書のひとつ、Temple Scrollの一部
発音 IPA: 近代: [ivˈʁit] – 古代: [ʕib'rit][1]
話される国 イスラエル
地域 イスラエルとその占領地など
民族 イスラエル (民族); ユダヤ人およびサマリア人
消滅時期 ミシュナー・ヘブライ語は5世紀までには話し言葉として使用されなくなったが、ユダヤ教ヘブライ語聖書の典礼言語としては使用され続けた[2][3]
言語系統
標準語
表記体系 ヘブライ文字
ヘブライ点字
古ヘブライ文字 (古代聖書のヘブライ語)
アラム文字 (後期聖書のヘブライ語)
公的地位
公用語 イスラエル (現代ヘブライ語)
統制機関 ヘブライ語アカデミー (Academy of the Hebrew Language)
האקדמיה ללשון העברית (HaAkademia LaLashon HaʿIvrit)
言語コード
ISO 639-1 he
ISO 639-2 heb
ISO 639-3 各種:
heb — 現代ヘブライ語
hbo — 古代ヘブライ語
smp — サマリア語
Glottolog hebr1246[4]
Linguasphere 12-AAB-a
 
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概要

古代パレスチナに住んでいたヘブライ人母語として用いていた言語古代ヘブライ語(または聖書ヘブライ語)は西暦200年ごろに口語として滅亡し、その後は学者の著述や典礼言語として使われてきた。現在イスラエル国で話される現代ヘブライ語は、約1700-1800年の断絶を経て近代ヨーロッパで復興された言語である。現代ヘブライ語には2つの時期があり、ひとつは18世紀後半のハスカーラー運動におけるユダヤ文化復興の中で使われるようになった書き言葉であり、もうひとつは19世紀末に復興された話し言葉としてのヘブライ語である[5]。一度日常語として使われなくなった古代語が復活し、再び実際に話されるようになったのは、歴史上このヘブライ語だけである[6]

ヘブライ語(עברית イヴリート)の名は紀元前2世紀ごろから使われている[7]。聖書自身の中では「カナンの言葉」(שפת כנען セファト・ケナアン)または「ユダヤ語」(יהודית イェフディート)と呼ばれている[8]ミシュナーでは「聖なる言語」(לשון הקודש レション・ハコデシュ英語版)とも呼ばれる。

古代ヘブライ語

古代ヘブライ語または聖書ヘブライ語はフェニキア語などと同じくカナン諸語のひとつであり、最も古いヘブライ語で書かれた碑文は紀元前10世紀に書かれたゲゼル・カレンダーとされるが[9]、この碑文が本当にヘブライ語かどうかについては疑いも持たれている[10]。西暦132-135年のバル・コクバの手紙まで、数百の古代ヘブライ語碑文が残っている[11]

旧約聖書はこの言語で書かれているが、異なる時代の言語が混じっている。引用された韻文の言語にはきわめて古い時代のものがあり、イスラエル王国の成立(紀元前1000年ごろ)以前の士師の時代にさかのぼる。紀元前10-6世紀の言語は古典ヘブライ語または(標準)聖書ヘブライ語と呼ばれる。紀元前6-2世紀の言語は後期古典ヘブライ語、または後期聖書ヘブライ語と呼ばれる。このほかにサマリア五書(紀元前2世紀後半)も重要な資料である[12][13][14]

イスラエル王国ユダ王国ではこの言語が日常語として使用されていたが、紀元前6世紀にユダ王国が滅亡しバビロン捕囚が起きると、バビロンに連行されたものたちを中心にアラム語の強い影響を受けるようになり、紀元前537年アケメネス朝キュロス2世によって解放されエルサレムに帰還したのちもこの影響は続いた[15]ヘレニズム時代に入るとギリシア語も使用されるようになり、3言語併用の状況が続く中でヘブライ語の日常使用は減少していった[16]


  1. ^ セファルディム式ヘブライ語 [ʕivˈɾit]; Iraqi [ʕibˈriːθ]; イエメン式ヘブライ語 [ʕivˈriːθ]; アシュケナジム式ヘブライ語の実際の発音[iv'ʀis]または[iv'ris]、厳密な発音[ʔiv'ris]または[ʔiv'ʀis]; 現代ヘブライ語 [ivˈʁit]
  2. ^ Sáenz-Badillos, Angel (1993). A History of the Hebrew Language. Cambridge University Press. ISBN 9780521556347. https://books.google.com/books?id=EZCgpaTgLm0C&pg=PA1 
  3. ^ H. S. Nyberg 1952. Hebreisk Grammatik. s. 2. Reprinted in Sweden by Universitetstryckeriet, Uppsala 2006.
  4. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Hebrewic”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/hebr1246 
  5. ^ Berman (1997) p.312
  6. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p239 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  7. ^ シラ書』のギリシア語で書かれた序言(1:22)にΕβραϊστί「ヘブライ語で」が見られる。Joshua Blau. “Hebrew Language: Biblical Hebrew”. エンサイクロペディア・ジュダイカ. 8 (2nd ed.). p. 626. ISBN 9780028659282 
  8. ^ キリスト聖書塾(1985) p.388
  9. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p241 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  10. ^ The Oldest Hebrew Script and Language, Bible History Daily, (2018-04-01), https://www.biblicalarchaeology.org/daily/biblical-artifacts/inscriptions/the-oldest-hebrew-script-and-language/ 
  11. ^ Steiner (1997) p.145
  12. ^ McCarter (2004) p.319
  13. ^ a b c Steiner (1997) p.146
  14. ^ キリスト聖書塾(1985) p.389
  15. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p241 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  16. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p242-243 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  17. ^ McCarter (2004) p.320
  18. ^ McCarter (2004) p.321
  19. ^ McCarter (2004) pp.322-323
  20. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p244 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
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  23. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p247 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
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  26. ^ 「物語 エルサレムの歴史」p165-166 笈川博一 中央公論新社 2010年7月25日発行
  27. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p247 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  28. ^ 「日常語になった現代ヘブライ語」p117 鴨志田聡子(「イスラエルを知るための62章 第2版」所収 立山良司編著 明石書店 2018年6月30日第2版第1刷)
  29. ^ 「事典世界のことば141」p272 梶茂樹・中島由美・林徹編 大修館書店 2009年4月20日初版第1刷
  30. ^ 「物語 エルサレムの歴史」p167 笈川博一 中央公論新社 2010年7月25日発行
  31. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p246 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  32. ^ 「物語 エルサレムの歴史」p166-167 笈川博一 中央公論新社 2010年7月25日発行
  33. ^ 「イスラエル文学」p256-257 樋口義彦(「イスラエルを知るための62章 第2版」所収 立山良司編著 明石書店 2018年6月30日第2版第1刷)
  34. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p246 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  35. ^ 「日常語になった現代ヘブライ語」p118 鴨志田聡子(「イスラエルを知るための62章 第2版」所収 立山良司編著 明石書店 2018年6月30日第2版第1刷)
  36. ^ 「日常語になった現代ヘブライ語」p118-119 鴨志田聡子(「イスラエルを知るための62章 第2版」所収 立山良司編著 明石書店 2018年6月30日第2版第1刷)
  37. ^ 「日常語になった現代ヘブライ語」p136 鴨志田聡子(「イスラエルを知るための62章 第2版」所収 立山良司編著 明石書店 2018年6月30日第2版第1刷)
  38. ^ Klein, Zeev (2013年3月18日). “A million and a half Israelis struggle with Hebrew”. Israel Hayom. http://www.israelhayom.com/site/newsletter_article.php?id=8065 2013年11月2日閲覧。 
  39. ^ The differences between English and Hebrew”. Frankfurt International School. 2013年11月2日閲覧。
  40. ^ Hebrew – UCL”. University College London. 2013年11月2日閲覧。
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  47. ^ https://www.sankei.com/world/news/180719/wor1807190024-n1.html 「イスラエル国会で「ユダヤ国民国家法」可決 アラビア語を公用語から除外」産経新聞 2018年7月19日 2019年6月27日閲覧
  48. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3184150?cx_part=search 「ユダヤ人国家法」可決に抗議、アラブ系国会議員が辞任 イスラエル」AFPBB 2018年7月29日 2019年6月27日閲覧
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  51. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p248 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  52. ^ 「ヘブライ語文法ハンドブック」p252 池田潤 白水社 2011年8月30日発行
  53. ^ 「イスラエル文学」p256-260 樋口義彦(「イスラエルを知るための62章 第2版」所収 立山良司編著 明石書店 2018年6月30日第2版第1刷)
  54. ^ https://www.nobelprize.org/prizes/literature/1966/summary/ 「The Nobel Prize in Literature 1966」ノーベル財団 2019年8月9日閲覧
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  59. ^ 『図説 世界の文字とことば』 町田和彦編 66頁。河出書房新社 2009年12月30日初版発行 ISBN 978-4309762210
  60. ^ Goerwitz (1996) p.487
  61. ^ Steiner (1997) p.147
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  63. ^ a b Berman (1997) p.314
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