ADEOS Iとは? わかりやすく解説

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みどり (人工衛星)

(ADEOS I から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/02 07:15 UTC 版)

地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり(ADEOS)」
所属 NASDA(現JAXA
主製造業者 三菱電機
公式ページ 地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり(ADEOS)」
国際標識番号 1996-046A
カタログ番号 24277
状態 運用終了
目的 地球観測
設計寿命 3年
打上げ場所 種子島宇宙センター
打上げ機 H-IIロケット4号機
打上げ日時 1996年8月17日
10時53分(JST)
通信途絶日 1997年6月30日[1]
運用終了日 1997年6月30日[1]
先代 TRMM
後継機 みどりII
物理的特長
本体寸法 4×4×5m[2]
太陽電池パドル:約3×26m[2]
質量 3,560kg[3]
発生電力 4500 W[3]
姿勢制御方式 三軸姿勢制御方式(ゼロモーメンタム)
軌道要素
軌道 太陽同期準回帰軌道[1]
高度 (h) 796.75 km[1]
軌道傾斜角 (i) 98.5925 [1]
軌道周期 (P) 100.8分[1]
回帰日数 41日[1]
降交点通過
地方時
午前10時30分±15分[2]
観測機器
OCTS 海色海温走査放射計
AVNIR 高性能可視近赤外放射計
ILAS 改良型大気周縁赤外分光計
IMG 温室効果気体センサ
RIS 地上・衛星間レーザ長光路吸収測定用リトロリフレクタ
NSCAT 海上風測定マイクロ波散乱計
TOMS オゾン全量分光計
POLDER 地表反射光観測装置
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みどり日本地球観測プラットフォーム技術衛星Advanced Earth Observing Satellite、略称:ADEOS

概要

1996年(平成8年)8月17日10時53分に、ふじ3号とともに種子島宇宙センターよりH-IIロケット4号機で打ち上げられた。

みどりは地球温暖化オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、異常気象の発生等の環境変化に対応した観測データを取得するとともに、次世代観測システムに必要なデータ収集や軌道間データ中継技術等の開発を行うことを目的とした衛星である。

多くの新規技術が取り入れられており、運用による成果が期待されたが、打ち上げ後約6ヶ月で太陽電池パドルの破断により機能を停止。運用が断念された。

故障と運用断念について

1997年6月30日

9時46分頃に「みどり」が日本上空を通過した際、地球観測センターに観測データが受信されなかった[4][5]。衛星の状態を確認すると、衛星になんらかの異常が発生し、軽負荷モード[注釈 1]に移行していることが判明した[4][5]

11時30分頃および13時15分頃の2回にわたって沖縄宇宙通信所で衛星の状態を確認した際には、9時46分以前に一度姿勢を喪失し、地球捕捉モードに移っていることが確認された[5]。また、太陽電池からの供給電流がゼロ状態を示しており、衛星はバッテリーのみで運用されていることを示すテレメトリデータが取得された[4][5]

12時にはNASDA内に緊急対策チームが設置された[5]

スウェーデンキルナ局で16時21分および16時46分に、南アフリカハービーショーク局英語版で18時1分と18時26分の計4回にわたって衛星の状態の確認、および衛星の負荷を軽くする等の緊急コマンドを送信する作業を行った[4][6]。しかし、16時20分以降に衛星からのテレメトリデータを受信することは無かった[4][6]

キルナ局にて20時41分と21時20分に、増田宇宙通信所勝浦宇宙通信所および沖縄宇宙通信所にて21時2分および22時39分に緊急コマンドの送信及びテレメトリデータの受信を試みた[7]。しかしこれまでと同様に衛星からの応答は無かったため、運用の断念を決定した[4][7]。以降は緊急コマンドの送信を実施しない方針を決定した[7]

1997年7月1日

太陽電池パドルの過去データを調べた結果、規定値を割り込んでいないものの、6月27日から発生電力が低下している傾向にあることが判明した[7]。また、太陽電池パドルの温度の過去データについても6月23日から異常になっていることが判明した[7]。そして、事故発生後に「みどり」の軌道に変化があることが確認された[8]。14時に事故対策本部が設置され[9]、16時には第1回会合が開催された[8]

原因究明の経過

観測装置

OCTS

海色海温走査放射計(OCTS) 観測の概念図

海色海温走査放射計: Ocean Color and Temperature Scanner)とは、海洋の水色及び水温を高頻度、高感度で観測しクロロフィル濃度や浮遊物など把握を行うことを目的とした光学センサである[10]NIMBUS-7に搭載されたCZCSの観測ミッションを引き継いだ[10]。OCTSは可視近赤外域8バンド、赤外域4バンドの観測波長を持つ[10]。NASDA (宇宙開発事業団)が開発を行った。

OCTS 観測チャンネル[11]
チャンネル 観測波長帯 波長帯 分解能 観測幅 偏光感度特性 観測対象
Ch1 可視光 402-422 nm 700 m(衛星直下) 1400 km 5 % 溶存態有機物
Ch2 433-453 nm 2 % クロロフィル色素
Ch3 480-500 nm フィコビリン色素
Ch4 510-530 nm 浮遊懸濁物
Ch5 555-575 nm ヒンジポイント
Ch6 660-680 nm 大気補正
Ch7 近赤外線 745-785 nm
Ch8 845-885 nm
Ch9 中赤外線 3.55-3.85 μm - 海面温度
Ch10 8.25-8.75 μm
Ch11 熱赤外線 10.3-11.3 μm 雲 / 海面温度
Ch11 12.5-12.5 μm

AVNIR

高性能可視近赤外放射計: Advanced Visible and Near Infrared Radiometer)とは、可視・近赤外域を用いて陸域の植生などを観測する装置である[10]。NASDAが開発を行った。

AVNIR 観測チャンネル[12]
チャンネル 観測バンド 波長帯 分解能 瞬時視野角 視野角 S/N MTF
Mu1 マルチスペクトル 0.42-0.50 mm 16 m 20 mrad 5.7 度 ≧200 ≧0.25
Mu2 0.52-0.60 mm
Mu3 0.61-0.69 mm
Mu4 0.76-0.89 mm ≧0.20
Pa パンクロマチック 0.52-0.69 mm 8 m 10 mrad ≧90 ≧0.20

IMG

温室効果気体センサ: 大気中の温室効果ガスの分布の測定を行う装置。通商産業省が開発。

ILAS

改良型大気周縁赤外分光計: 極域における大気の微量成分の高度分布の測定を行う装置。環境庁が開発。

RIS

地上・衛星間レーザ長光路吸収測定用リトロリフレクター: Retroreflector In Space)とは、地上局から発射されたレーザー光を地上局に反射するためのリトロリフレクターであるである[10]。地上局上空のオゾンフロン12二酸化炭素メタン等の濃度測定が可能である。国立環境研究所が開発。

NSCAT

海上風測定マイクロ波散乱計 海上風の風向風速の測定を行う装置。NASA (アメリカ航空宇宙局)らが開発。

TOMS

オゾン全量分光計 オゾン量及び二酸化硫黄の分布の測定を行う装置。NASA らが開発。

POLDER

地表反射光観測装置 地球表面や大気で反射される太陽光の測定を行う装置。フランス国立宇宙研究センターが開発。

脚注

注釈

  1. ^ 観測機器等をの電源を切り、衛星の電力消費を最小限にするモード

出典

  1. ^ a b c d e f g ADEOS|一般財団法人リモート・センシング技術センター”. リモート・センシング技術センター. 2024年3月11日閲覧。
  2. ^ a b c ADEOSプロジェクト概要”. 宇宙航空研究開発機構. 2024年3月11日閲覧。
  3. ^ a b WMO OSCAR  ”. 世界気象機関. 2024年3月11日閲覧。
  4. ^ a b c d e f ADEOS事故経過状況”. 宇宙開発事業団 (1997年7月1日). 2003年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月11日閲覧。
  5. ^ a b c d e 地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」の運用異常について”. 宇宙開発事業団 (1997年6月30日). 2003年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月11日閲覧。
  6. ^ a b 地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」の運用断念について”. 宇宙開発事業団 (1997年6月30日). 2003年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月11日閲覧。
  7. ^ a b c d e 地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」のその後の状況について”. 宇宙開発事業団 (1997年7月1日). 2003年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月11日閲覧。
  8. ^ a b 地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」事故対策本部の第1回会合の結果について”. 宇宙開発事業団 (1997年7月1日). 2003年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月11日閲覧。
  9. ^ 地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」事故対策本部の設置について”. 宇宙開発事業団 (1997年7月1日). 2003年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月11日閲覧。
  10. ^ a b c d e 用語集 – JAXA 第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター”. 航空宇宙研究開発機構. 2024年3月14日閲覧。
  11. ^ 松村皐月「海色海温走査放射計(OCTS)による海洋生物過程の研究」『日本リモートセンシング学会誌』第13巻第4号、日本リモートセンシング学会、1993年、355-359頁、doi:10.11440/rssj1981.13.355ISSN 0289-79112024年7月2日閲覧 
  12. ^ Earth Observation Satellite”. 宇宙航空研究開発機構. 2007年7月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月14日閲覧。

関連項目

外部リンク


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