HAKUTO-R_ミッション2とは? わかりやすく解説

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HAKUTO-R ミッション2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/25 08:34 UTC 版)

HAKUTO-R ミッション2
RESILIENCE
ispaceのランダーローバーの模型
所属 ispace
主製造業者 ispace
運用者 ispace
国際標識番号 2025-010B
カタログ番号 62717
状態 運用終了
目的 月探査
観測対象
打上げ場所 ケネディー宇宙センター 39A射点
打上げ機 ファルコン9ブロック5
打上げ日時 2025年1月15日6時11分 (UTC)[1]
軟着陸日 2025年6月6日午前4時17分頃 (JST)(当初予定時刻)
衝突日 同日午前4時15分頃 (JST)(推定) [2]
通信途絶日 同日午前4時15分頃 (JST)(推定)
運用終了日 2025年6月6日[3]
先代 HAKUTO-R ミッション1
物理的特長
本体寸法 直径1.6 m 高さ 1.64 m の八角柱
最大寸法 2.6 m x 2.3 m x 2.6 m
質量 340 kg (乾燥質量)
発生電力 350 W
主な推進器 400 Nスラスター x 1
200 Nスラスター x 6
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HAKUTO-R ミッション2 (ハクトアール ミッションツー、M2) は、日本の航空宇宙企業ispace2025年1月15日に打ち上げた月探査機。同社の月探査プログラムHAKUTO-Rの第二弾として月面車 (ローバー) による探査を行う計画で[4]月面着陸ミッションは約5か月後の同年6月6日実施された[5]

概要

HAKUTO-R ミッション2はispaceが実施する月探査ミッション。着陸機にはミッション1同様ispace自社開発のシリーズ1が使用される。またミッション2ではispaceが開発したマイクロローバー「TENACIOUS」による月探査が行われる[6]。打ち上げは当初2020年に予定されていたが、その後数回延期され、2025年1月15日に打ち上げられた[1][4][7]

搭載された貨物

以下のペイロードがHAKUTO-R ミッション2に搭載された[8][9]

月面用水電解装置
高砂熱学工業が開発した[10]。着陸機が月面に降り立ったのち、電解装置が水を原料に水素と酸素を生成する実証実験を行う[11][12]。高砂熱学によると、M2に搭載された装置が月面での水素と酸素の生成に成功すれば、これは世界初になるという[13][14][15]。月には水が存在すると考えられており、将来それを採取して電気分解することによりロケットの燃料や、人が生活するための酸素を現地調達できることが期待されている[16]。M2で行う実証では月の水ではなく、装置と一緒に地球から運んだ水を使用する[17]。また同社は装置の開発で得たノウハウは地上製品の省エネ技術へスピンオフでき、持続可能な社会の構築に役立つとしている[17][16]
株式会社ユーグレナの自己完結型食料生産モジュール
台湾・国立中央大学の深宇宙放射線プローブ
株式会社バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」
スウェーデンのアーティスト、ミカエル・ゲンバーグスウェーデン語版の「ムーンハウスプロジェクト」
ispace EUROPEが開発した小型月面探査車「TENACIOUS
人類の言語と文化遺産を記録したユネスコのメモリーディスク
RESILIENCEランダーに搭載[18]

運用

HAKUTO-R ミッション2は2025年01月15日午後3時11分にアメリカのケネディ宇宙センターからSpaceXファルコン9Firefly Aerospace社の月着陸船ブルーゴースト英語版と共に打ち上げられた[19]。 打ち上げから約5か月後の同年6月6日に月面着陸ミッションが実施された[5]。同日午前3時13分、着陸シーケンスの実行を指示するコマンドが送信され、RESILIENCEランダーは月周回軌道を離脱し、降下を開始した。高度約100kmから約20kmまでは惰性降下が行われ、その後、予定通り主エンジンを噴射して減速を開始した[3]。しかし、着陸予定時刻の約1分45秒前、高度は約50m、速度は約187km/hを示していた。その数秒後、速度表示が表示されなくなり、高度が-223mと表示された直後に通信が途絶した[2]。同日9時時点で通信の回復が見込まれず、月面着陸を確認する事が困難と判明し、ミッション2の終了を判断をした[3]

iSPACEは6月24日、失敗に終わった技術的な要因の分析結果に関する報告会を開催した[20]。それによれば、レーザーレンジファインダー(LRF)からの有効な高度データの取得が想定よりも遅く始まったために、充分な減速ができなかったことが示された。今後は着陸センサーまわりの検証計画や選定・運用の見直しをするとしている。

マイルストーン

以下のマイルストーンが予定されていた[8]。日本時間2025年6月6日、マイルストーン9「月面着陸」は失敗に終わった[21]

マイルストーン 打上後期間 内容 達成状況
Success 1 2,3日前 打ち上げ準備の完了 完了
Success 2 1時間後 打ち上げ及び分離の完了 完了
Success 3 数時間後 安定した航行状態の確立 完了
Success 4 1,2日後 初回軌道制御マヌーバの完了 完了
Success 5 1か月後 月フライバイ 完了
Success 6 3か月から3か月半後 月周回前の最後の深宇宙軌道制御マヌーバ 完了
Success 7 4か月後 月周回軌道投入 完了[22]
Success 8 4か月半後 月周回軌道上での最後の軌道制御マヌーバ 完了[3]
Success 9 4か月半後 月面着陸の完了 失敗[21]
Success 10 4か月半後 月面着陸後の安定状態の確立 未完

脚注

  1. ^ a b ispace、ミッション2 マイルストーンのSuccess 2「打ち上げ及び分離」が完了!”. ispace (2025年1月15日). 2025年1月15日閲覧。
  2. ^ a b ispace月着陸船が通信途絶、成否不明--最終テレメトリは「高度マイナス223m」(更新)ミッション断念”. CNET Japan (2025年6月6日). 2025年6月6日閲覧。
  3. ^ a b c d ミッション 2 マイルストーンの「Success 9」に関するお知らせ”. ispace (2025年6月6日). 2025年6月6日閲覧。
  4. ^ a b Missions”. ispace. 2023年2月26日閲覧。
  5. ^ a b アジア初の快挙、ispaceが挑戦する月面着陸Mission 2を解説」『SPACE CONNECT』Space Connect、2025年6月5日。2025年6月6日閲覧
  6. ^ ispace、2022年末頃の打ち上げに向け、フライトモデル組み立ての最終工程に着手 HAKUTO-Rのミッション1と2の進捗報告を実施”. ispace (2022年1月25日). 2023年2月26日閲覧。
  7. ^ ispace「HAKUTO-R」ミッション2の月着陸船は2025年1月に打ち上げへ” (2024年11月13日). 2024年11月17日閲覧。
  8. ^ a b ispace「HAKUTO-R」ミッション2のマイルストーンを発表 2025年1月中旬にも打ち上げ”. sorae (2024年12月21日). 2024年12月21日閲覧。
  9. ^ 【速報】ispaceの月着陸船「レジリエンス」が月に向けて打ち上げ成功–従業員や家族が見守る中”. uchubiz (2025年1月15日). 2025年6月6日閲覧。
  10. ^ 令和3年度宇宙開発利用推進研究開発(月面におけるエネルギー関連技術開発(技術課題整理))報告書”. 経済産業省 (2022年3月). 2023年2月26日閲覧。
  11. ^ 小林行雄 (2019年12月18日). “高砂熱学工業、月面での水の電気分解による水素/酸素の生成に挑戦”. マイナビニュース. 2022年12月11日閲覧。
  12. ^ 高砂熱学の水電解技術が“月面”へ、水素/酸素生成を実験”. ITmedia BUILT (2019年12月20日). 2023年2月26日閲覧。
  13. ^ TAKASAGO CORPORATE REPORT 2022”. 高砂熱学工業 (2022年11月16日). 2023年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月26日閲覧。
  14. ^ フロンティアビジネス研究会 宇宙開発の未来共創2019 パネルディスカッション2:宇宙資源ビジネスに必要なこととは?”. 三菱総合研究所 (2019年12月18日). 2023年2月26日閲覧。
  15. ^ 内田敦 (2021年3月22日). “月ビジネス トヨタが「月面走行車」開発中 40兆円市場へ大手も新興も続々参入=内田敦”. 週刊エコノミスト. 2023年2月26日閲覧。
  16. ^ a b HAKUTO-Rのispace、月面データをビジネス化する「Blueprint Moon」”. Impress Watch (2020年8月21日). 2023年2月26日閲覧。
  17. ^ a b 新・宇宙時代の到来 人類はなぜ月を目指すのか?”. Wedge (2022年3月28日). 2023年2月26日閲覧。
  18. ^ ispace、ミッション2 マイルストーンのSuccess 1「打ち上げ準備」を完了!”. ispace (2025年1月14日). 2025年6月6日閲覧。
  19. ^ SpaceX launches two moon missions in one fell swoop”. CNN (2025年1月15日). 2025年6月6日閲覧。
  20. ^ ispace、軟着陸に失敗した月着陸機「レジリエンス」に関する報告会を開催”. sorae (2025年6月25日). 2025年6月25日閲覧。
  21. ^ a b 「ispace」“月面着陸は失敗” 日本の民間で初の着陸挑戦も”. NHK. 2025年6月7日閲覧。
  22. ^ HAKUTO-R ミッション2”. sorae (2025年5月11日). 2025年6月6日閲覧。

関連項目

外部リンク




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