チャンドラヤーン2号とは? わかりやすく解説

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チャンドラヤーン‐にごう〔‐ニガウ〕【チャンドラヤーン二号】

読み方:ちゃんどらやーんにごう

インド月探査機チャンドラヤーン1号続き2009年7月国産ロケットGSLV-Ⅲで打ち上げられた。月の南極域のローバーによる探査を行う予定だったが、着陸失敗した


チャンドラヤーン2号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/20 20:40 UTC 版)

チャンドラヤーン2号 (Chandrayaan-2) (चन्द्रयान-2)
所属 インド宇宙研究機関
任務 オービターランダーローバー
周回対象
軌道投入日 2019年8月20日
打上げ日時 2019年7月22日
打上げ機 GSLV-III
任務期間 1年 (オービタ)
公式サイト ISRO - Chandrayaan-2
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チャンドラヤーン2号(チャンドラヤーン2ごう、Chandrayaan-2、サンスクリット: चंद्रयान-२[1][2])は、インド宇宙研究機関 (ISRO) による月探査ミッションである。当初はインドオービターロシアランダー/ローバーによる共同計画であったが[3][4]、後にインド単独の計画となった。2019年7月に打ち上げられ、8月に月周回軌道へ投入された(着陸は失敗)。

車輪のついたローバーは月表面を移動し、土や岩のサンプルを採取してその場で科学的な分析を行い、そのデータはオービタから地球に送信される予定であった[5]チャンドラヤーン1号のミッションを成功させたミルスワミー・アナドゥライの率いるチームが引き続き運営を担当している。

歴史

チャンドラヤーン2号のCG図

インド政府は、マンモハン・シン首相の下で、2008年9月18日にミッションを承認した[6]

2007年11月12日、ロシア連邦宇宙局とインド宇宙研究機関の代表者が、チャンドラヤーン2号のプロジェクトに対して両機関が協力するという協定に調印した[7]。インド宇宙研究機関はオービタを担当し、ロシア連邦宇宙局はランダー/ローバーを担当することとなった。宇宙船の設計は、両国の科学者の合同チームにより2009年8月に完成した[8][9]。チャンドラヤーン2号はインドのGSLV打上げ機によって2013年中に打ち上げられる予定であった[10]。ロシア側のこの探査計画はルナグローブ2(ルナ・レスールス)と呼ばれていた。

2013年8月に、ロシアの探査機を外して、インドの探査機のみの単独ミッションで打ち上げることに変更したことが明らかにされた。この大きな変更は、ロシアのフォボス・グルントミッションの失敗を受けて信頼性向上の対策を行った結果、重量が超過したためにインド単独の計画にするよう見直しされた[11]。またこれに伴って、2013年に予定されていた打ち上げ時期は2016年か2017年へと変更された[12]

打ち上げ前のチャンドラヤーン2号オービター
打ち上げ前のチャンドラヤーン2号ランダーとローバー

しかし打ち上げはさらに遅延し、最終的に2019年7月22日に新型のロケットであるGSLV-IIIロケットにて打ち上げられた。すべてうまく行けば、着陸機が9月上旬には月面の南極域に降り立つ予定であった[13]。 月への軌道を順調に飛行した後、9月2日に着陸機「ビクラム」を切り離し、月面に向けて高度を徐々に下げていたが、現地時間9月7日午前2時ごろ(日本時間同5時半ごろ)、月面の上空2.1キロ付近まで降下したところで交信が途絶えた。正式に着陸が失敗したとは認めてないものの、ナレンドラ・モディ首相は「科学に失敗はない」と述べて事実上失敗したことを認め[14]、インド宇宙研究機関は「90 - 95%の目標は達成した」として通信の失敗原因に触れなかった[15]。インド宇宙研究機関の匿名筋の情報として分解はしておらず一塊のままと報じられていたが[16]アメリカ合衆国NASAは南極から約600キロ離れた高地に衝突して約20か所に破片が散乱しているビクラムの衛星写真を公開した[17][18]

結局ISROは2020年1月1日、当初の予定には無かったチャンドラヤーン3号の計画を正式に発表し、月面着陸はそちらで目指すことになった[19]。なお現地のメディアによればチャンドラヤーン3号は2020年11月までに打ち上げられる予定といわれていたが[18]、その後の報道では2021年[20]、さらに2023年[21][22]へと延期された。最終的に2023年7月14日に打ち上げられ[23]、8月23日に月面着陸に成功した[24]

設計

プラギャンのCG図

ロシアは、ランダーとローバーを設計し、製造した。宇宙船が月軌道に入ると、ローバーを抱えたランダーがオービタから放出され、月面に着陸して、ローバーがランダーの中から外へ転がり出る[25]。インド宇宙研究機関は、オービタに核エネルギーで電力を供給する実現可能性について研究を行う[26]

アメリカ航空宇宙局欧州宇宙機関も、オービタに積む計測機器を提供する形でミッションに参加する。既にインド宇宙研究機関に提案を送っていると報じられている[27]

ローバー

ローバー「プラギャン」(サンスクリット: प्रज्ञान 日本語: 知恵、叡智) の質量は27kgで、6つの車輪を備え、太陽電池で走行する。月の南極付近に着陸し、月の1日、地球の1日にして約14日運用される。毎秒1cmの速度で進み走行距離は500mを予定していた。

出典

  1. ^ candra”. Spoken Sanskrit. 2008年11月5日閲覧。
  2. ^ yaana”. Spoken Sanskrit. 2008年11月5日閲覧。
  3. ^ “Chandrayaan-2 to be finalised in 6 months”. The Hindu. (2007年9月7日). http://www.hinduonnet.com/2007/09/27/stories/2007092756381500.htm 2008年10月22日閲覧。 
  4. ^ “Centre approves Chandrayaan 2”. Deccan Herald. (2008年9月19日). http://www.deccanherald.com/Content/Sep192008/national2008091890836.asp 2008年10月22日閲覧。 
  5. ^ “ISRO plans moon rover”. The Hindu. (2007年1月4日). http://www.hindu.com/2007/01/04/stories/2007010401342200.htm 2008年10月22日閲覧。 
  6. ^ “Cabinet clears Chandrayaan-2”. The Hindu. (2008年9月19日). http://www.hindu.com/2008/09/19/stories/2008091961981800.htm 2008年10月23日閲覧。 
  7. ^ “India, Russia to expand n-cooperation, defer Kudankulam deal”. Earthtimes.org. (2008年11月12日). http://www.earthtimes.org/articles/show/140647.html 2008年11月11日閲覧。 
  8. ^ “ISRO completes Chandrayaan-2 design news”. domain-b.com. (2009年8月17日). http://www.domain-b.com/aero/space/spacemissions/20090817_chandrayaan-2_design.html 2009年8月20日閲覧。 
  9. ^ “India and Russia complete design of new lunar probe”. (2009年8月17日). http://en.rian.ru/world/20090817/155832962.html 2009年8月20日閲覧。 
  10. ^ “India and Russia Sign an Agreement on Chandrayaan-2”. ISRO. (2007年11月14日). http://www.isro.org/pressrelease/Nov14_2007.htm 2008年10月23日閲覧。 
  11. ^ “India Drops Russia from Chandrayaan-2 Lunar Mission”. spaceNews.com. (2013年8月15日). http://www.spacenews.com/article/civil-space/36795india-drops-russia-from-chandrayaan-2-lunar-mission 2013年8月18日閲覧。 
  12. ^ “India to launch second mission to moon by 2017”. Moondaily.com. (2014年1月13日). http://www.moondaily.com/reports/India_to_launch_second_mission_to_moon_by_2017_999.html 2014年1月26日閲覧。 
  13. ^ “「月の南極」初探査へ、インド宇宙開発のねらいは”. (2019年7月25日). https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/072500433/ 
  14. ^ “交信途絶えたインドの月面探査機 首相、着陸失敗認める”. 朝日新聞. (2019年9月7日). https://www.asahi.com/articles/ASM970V81M96UHBI04F.html 2019年9月14日閲覧。 
  15. ^ “目標の90~95%達成とインド 無人探査機の月面着陸失敗で声明”. 時事通信. (2019年9月8日). https://this.kiji.is/543096866482160737?c=39546741839462401 2019年9月14日閲覧。 
  16. ^ 塚本直樹 (2019年9月10日). “インド着陸機は衝突分解せず月面に存在? ISRO匿名筋の報道伝わる”. sorae.jp. https://sorae.info/space/2019_09_10_india.html 2019年9月15日閲覧。 
  17. ^ “NASA月周回衛星、月面に墜落したインド着陸船を発見”. AFPBB. (2019年12月3日). https://www.afpbb.com/articles/-/3257777 2019年12月3日閲覧。 
  18. ^ a b 通信が途絶えていたインドの月着陸機、米月周回衛星の画像から発見”. sorae.jp (2019年12月5日). 2019年12月6日閲覧。
  19. ^ 塚本直樹 (2020年1月4日). “インド、チャンドラヤーン3号での月面探査実施を正式発表”. https://sorae.info/space/20200103-chandrayaan3.html 2020年3月21日閲覧。 
  20. ^ Firstpost •Jan 27. “Chandrayaan 3: ISRO starts work on second lander mission to the moon, launch planned in early 2021- Technology News, Firstpost” (英語). Firstpost. 2020年8月1日閲覧。
  21. ^ Kumar, Chethan (2022年4月6日). “2 Gaganyaan abort tests in August, December; relay satellites next year” (英語). ザ・タイムズ・オブ・インディア. 2022年9月4日閲覧。
  22. ^ 出口隼詩 (2023年1月7日). “2023年の注目宇宙開発ニュース 後編:月着陸機打ち上げブームの到来!”. sorae. 2023年1月8日閲覧。
  23. ^ “インド、月探査船打ち上げ 軟着陸成功なら4カ国”. 産経新聞. (2023年7月14日). https://www.sankei.com/article/20230714-IOQ2SHNINVPVFDQE3BO3UOBGKA/ 
  24. ^ 【速報】インド月探査機「チャンドラヤーン3号」月面着陸成功”. sorae (2023年8月23日). 2023年8月23日閲覧。
  25. ^ India and Russia complete design of new lunar probe
  26. ^ Chandrayaan-II may have N-powered systems (08 August 2009)
  27. ^ “NASA and ESA to partner for chandrayaan-2”. Skaal Times. (2010年2月4日). http://www.sakaaltimes.com/SakaalTimesBeta/20100204/4693467461593115964.htm 2010年2月22日閲覧。 

関連項目

外部リンク


チャンドラヤーン2号

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探査車」の記事における「チャンドラヤーン2号」の解説

詳細は「チャンドラヤーン2号」を参照 チャンドラヤーン2号計画インド探査計画で、オービターローバー構想されている。学生探査車設計を行う機会与えられ150人の学生設計提案しそのうち6案が選定された。これらの案はインドリモートセンシングセンター(英語版)で実演されインド宇宙研究機構でも行う予定である。当初ランダー含めたロシアとの共同計画とされ、ロシア設計した探査車重さは50kgで、6つ車輪持ち太陽光パネル発電して走行するものであった近く着陸し一年わたって運用される予定であり、最大速度は360m/hで150km程度探査見込んでいる。当初打ち上げ2014年見込んでいたが、インド単独への計画変更その際ランダー取りやめ)の後、2017年3月報道では2018年第一四半期延期されている。

※この「チャンドラヤーン2号」の解説は、「探査車」の解説の一部です。
「チャンドラヤーン2号」を含む「探査車」の記事については、「探査車」の概要を参照ください。

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