財前の家族、関係者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 08:16 UTC 版)
「白い巨塔の登場人物」の記事における「財前の家族、関係者」の解説
財前 杏子(ざいぜん きょうこ) 演 - 長谷川待子(映画版)、瞳麗子(67年版)、生田悦子(78年版)、高橋ひとみ(90年版)、若村麻由美(03年版)、夏帆(19年版) 職業 - 主婦、財前五郎の妻、財前又一の娘 夫は浪速大学付属病院第一外科教授、財前五郎。父親は、産婦人科医院を経営している財前又一。一夫と富士夫の2人の子供がいる。性格は、死んだ母親に似て虚栄心が強く、大阪の下町風よりも芦屋や夙川方面の山の手風が好きで、気取り屋で我儘と又一に評されている。 財前が教授に就任した後、教授を夫に持つ婦人の会合「くれない会」に参加。夫さながらの立ち居振る舞いで、五郎をさらなる有力者に押し上げていく。花森ケイ子の存在は最後まで知らなかった。 財前が倒れた後、真の病状は彼女には伝えられず、財前の手術後は又一や子供たちと共にたびたび財前を見舞う。手術から3週間後、杏子が渡したコンパクトの鏡で黄疸による眼球黄染を確認した事が、財前が真の病状を確信する決め手となった。その際、財前に頼まれて里見脩二へ帰りがけに病室まで来てもらいたい、と電話で伝えた。財前が危篤に陥ってから初めて病状を知らされ、又一と共に病室へ駆けつける。虫の息の財前に「私と子供を残して死なないで!」と叫び、臨終後は嗚咽して動けなくなった。 2003年版 原作と違い財前との間に子供はなく、家庭外で活発に動く現代的な女性として描かれる。愛人であるケイ子の存在も把握しており、自ら彼女に接触するなど大胆な行動に出る。財前の発病後は鵜飼典江からそれとなく夫の容態の重さについて知らされ、思うところがあったのか「お別れを言ってやってほしい」と彼女を病院に呼び出し、財前と2人きりで過ごす時間を与えるほどの関係になる。 財前が危篤になった際は東から人工呼吸器の挿管による延命治療を提案されるが、「そうまでして生きる事を望む人じゃないわ」と拒絶する。 財前 又一(ざいぜん またいち) 演 - 石山健二郎(映画版)、内田朝雄(67年版)、曽我廼家明蝶(78年版)、藤岡琢也(90年版)、西田敏行(03年版)、小林薫(19年版) 職業 - 財前産婦人科医院院長、浪速医師会副会長、財前五郎の義親 大阪医専を卒業後、財前産婦人科医院を開業。一貫した開業医のため、大学教授という肩書きに異常なほどの劣等感を持っており、娘婿の財前五郎を投資株に例え、その教授選や学術会議会員選では莫大な金を投じていく。そのため、婿の五郎の栄達を本人以上に喜ぶ。 また、大阪市北区医師会会長の岩田重吉とは親しい。性格は極めて豪快かつ好色で、妾・時江に料亭を構えさせ婿の五郎にも浮気を勧める度量がある。婿を実の息子のようにかわいがるのと対照的に、自身の娘、杏子をわがままでダメな娘などと平気で言う。ちなみに2003年版ではカツラを被っている。なお、経緯はわからないが、婿に浮気を容認していながら興信所を使って財前の愛人・花森ケイ子の存在を察知していたらしいが、それ自体をとがめだてはせず、怪文書に注意するよう助言する。 財前に対しては、最初は「五郎君」と呼んでいたが、やがては「五郎」と呼び捨てにするようになった。 控訴審直後は敗訴の原因となった里見、柳原、東の3人の事を根に持ち激しく憎んでいたが、財前が手術不能と分かると、それどころではなくなり普通に接している。財前の死期が近づくと、身体的に無理をさせた事を悔いて財前に詫びる。2019年版では、東により臨終が告げられると、「わしが悪かった!無理させ過ぎた…!」と自分の行為を悔いて詫びていた。 財前の死の後日談となる2003年版特別編では、浪速大学へ急患を搬送して来た救急車に同乗した際に同地で柳原と再会する。佃・安西など、かつて財前の取り巻きだった人物が地方へ飛ばされる一方、大学に残る柳原に「君はうまくやった。教授にでも(がん)センター長にでもなれ」と遠まわしに嫌味を口にして去った。 財前 一夫(ざいぜん かずお) 演 - 木村雄(78年版) 職業 - 小学生、財前五郎・杏子の長男 財前五郎、杏子夫妻の長男。母親似で女の子のように気が優しい。小学校の遠足で摩耶山に上る事になり、野山の花をスケッチするのを楽しみにした。癌で入院した財前の見舞いに訪れたとき、帰り際に食べかけのカステラを財前に渡して去る。それが財前が黄疸に気づく遠因となった。 財前 富士夫(ざいぜん ふじお) 演 - 佐久間良(78年版) 職業 - 小学生、財前五郎・杏子の次男 財前五郎、杏子夫妻の次男。父親似で気が強い腕白坊主だが、学業は優秀。祖父・又一の腕白でも勉強ができればいいという信念に影響を受けており、学校内での武勇伝を家族に披露した際に、母の杏子からはたしなめられたが意に介さず、父の財前からは「おじいちゃんの言う通りでいいが、人を怪我させてはいけないよ」と釘を刺された。 花森 ケイ子(はなもり けいこ) 演 - 小川真由美(映画版)、寺田史(67年版)、太地喜和子(78年版)、池上季実子(90年版)、黒木瞳(03年版)、沢尻エリカ(19年版) 職業 - バー「アラジン」のホステス、財前五郎の愛人 バー「アラジン」のホステス(1978版ではバー「シロー」、2019年版ではバー「ラディゲ」)。1978年版では、本来理科学部志望だったが、両親の死後に養ってくれた叔父の意向で女子医大に入るも4年の後期で中退。2003年版では、女子医大の医学部を中退後、大阪北新地でバー「アラジン」を経営するママとして登場する。 財前五郎の愛人であり、財前を愛する一方で、野心うごめく大学医学部の医局の動向を冷やかに見ている。特に教授選の際には、決選投票を前に財前支持の佃や安西が対立候補である石川大学の菊川教授の元に乗り込んで直談判に及んだ挙句捨て台詞を吐いて問題になったが、これはケイ子が唆したものである。鋭い嗅覚の持ち主で、財前が他に愛人を作った事実を体臭から嗅ぎ取り、「他の女の匂のする男には抱かれるのは屈辱よ」と怒鳴り、財前の不節操に激怒している。なお、2003年版では、財前はケイ子以外の愛人を作っておらず、あくまでも日陰の女として振舞っている。 第一審の結審後は一時期財前に批判的になるが、控訴審や学術会議会員選挙と多忙を極める財前の身体を気遣う。財前が控訴審で敗訴し、病に倒れた翌日、里見脩二の元に検査に行った直後に彼女の自宅へ行ったのが2人が会った最後となった。財前の手術後、近畿がんセンターに里見を訪れて財前の病状について色々と尋ね、見舞いを希望するが断られたために赤いバラの花束を託する。里見の対応からケイ子は財前の病を悟るが、2人でよく行った木津川の河口で、また元気な財前に抱かれたい、と涙ながらに思った。1978年版 里見とたびたび面会している他、財前の頼みで財前の実母・黒川きぬの面倒を見るようになる。そしてきぬからたびたび手紙を貰うようにまでなり、体調不良を訴えたきぬが財前の紹介により岡山大学で診察するときには岡山まで行って付き添った。検査の結果を聞いた財前は、選挙と裁判が終わったらきぬを大阪近くに住まわせたいから、そのときには口添えしてほしいと頼む。 最終話では、木津川において逢瀬をしていたが、財前は一時倒れる。気丈に振舞う財前に、疲れてるのよ、と指摘。財前が敗訴し、倒れた後、里見に彼の病状を問いただした時には、見舞いへの同行を勧められるが固辞している。その後、きぬを浪速大病院まで行かせたが、財前に病気を悟られてしまう、と固辞される。その後他界した財前の遺書には、送ってくれたバラの花に対する感謝の言葉と、母を頼む、という(名前こそ書いてはいないが)ケイ子への言伝が書かれていた。きぬを里見と共に浪速大へ向かわせた後、ケイ子自身は財前の死を悟って木津川の河口で涙を流した。 2003年版 財前の仕事関係者からは「彼の行き付けの店のママ」として認知されている。財前の裁判を傍聴しに来た際にきぬと知り合う。その後、以前から関係を知っていた財前の妻・杏子に「最後のお別れを言ってやって欲しい」と病室に招かれ、病床の財前と病院の屋上で別れの言葉を交わし、直後に財前は危篤となり、亡くなった。 そして、きぬを彼の病室まで送り届けた後、自分は何も言わずに去っていった。 加奈子(かなこ) 演 - 夏樹陽子(78年版)、盛本真理子(90年版) 職業 - クラブ「リド」のホステス 財前五郎が接待を受けて訪れたクラブ「リド」で、財前についた若いホステス。その後何度か訪れるたびに、手の匂いをかいで「血の匂いがする」などと財前を挑発。べんち性胃潰瘍の手術で最短時間記録を作った夜に、その勢いで誘い男女の関係になる。その後も度々関係を持つが、財前の愛人である花森ケイ子にはばれていた。その後、学術会議会員選挙を前に身辺整理のため財前から別れ話を持ち出されると、逆に月極契約を持ち出し、財前は口止め料と割り切って応諾した。 時江(ときえ) 演 - 浦里はる美(78年版) 職業 - 「扇屋」の女将、財前又一の愛人 黒川 きぬ(くろかわ きぬ) 演 - 瀧花久子(映画版)、中北千枝子(78年版)、池内淳子(03年版)、市毛良枝(19年版) 職業 - 財前五郎の実母 2019年版では、黒川キヌの名称で登場。 財前五郎の実母で、岡山県和気郡在住。五郎が小学生の時、学校教諭だった夫と死別し、自身の内職と夫の残した財産で五郎を高等学校まで進ませる。その後、篤志家である郷里の医師・村井清恵(せいけい)の支援で五郎を浪速大学医学部に入学させた。一方で、五郎に諮らずに村井の知己である財前又一の婿養子になる話を進め、自身は岡山に残って一人で暮らし続け、10年以上息子とは面識がなかった。母を故郷に残してきた事を負い目に感じていた五郎は、有給助手となって以降、貴重な給料を割いてきぬへ仕送りを続けていた。 息子が医者になってくれただけで十分に満足したが、養子に出している手前、自ら会う事はなく、無理をして頑張っているのではないかといつも危惧し、息子に関する新聞記事などを切り抜きしていた。その後は大学教授になった五郎が訴えられた事を心配していたが、五郎が一審に勝訴した1ヵ月後に持病の高血圧のため死去した。1978年版、2003年版、2019年版 原作と異なり死亡する事なく最後まで登場している。財前の愛人であった花森ケイ子とは影から見守る同じ立場として、裁判中より交流している。病院に駆けつけたのも息子の最期を迎えた後であった。 特に1978年版では、控訴審の最中に自ら浪速大学を訪れた際にケイ子と知り合い、以後文通する仲となった。その折、自身の体調の不調を綴った手紙がケイ子から五郎に知れる事になり、五郎の紹介で岡山大学にて診察を受けている。きぬが一人岡山で黙々と耐えているのを不憫に思ったケイ子は今後の事を五郎に問いただすと、五郎は「日本学術会議会員選挙と裁判が決着したら大阪へ呼び寄せるつもりだ」と語っている。また、財前が敗訴し倒れたのちには、ケイ子によって浪速大学の五郎の病室近くまで連れて行かれるが、自分が見舞いに行く事で五郎は病気の深刻さに気付き苦しむ事を恐れ、これを固辞して病院を辞去する。五郎が危篤に陥った際には里見脩二と共に病室へ向うが臨終には間に合わず、きぬはベッドの上に泣き崩れた。財前は今際の際に、「母さん」と言葉を発していた。2003年版では財前の死の翌朝、ケイ子に付き添われて遺体と対面し「良く頑張ったね、ご苦労様でした」と優しく語りかけていた。 2019年版では、杏子から電話で財前の死期が近付いている事を知らされる。杏子からは臨終を看取って欲しいと告げられるも、その頼みを敢えて拒否し、財前の臨終には立ち会わなかった。一方で、財前とは電話で最後となる親子の会話を交わしている。
※この「財前の家族、関係者」の解説は、「白い巨塔の登場人物」の解説の一部です。
「財前の家族、関係者」を含む「白い巨塔の登場人物」の記事については、「白い巨塔の登場人物」の概要を参照ください。
- 財前の家族、関係者のページへのリンク