財前への執刀
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 07:55 UTC 版)
財前五郎が胃癌で倒れると、財前に依頼された里見脩二の頼みと説得により、財前への怨讐を捨て、手術を執刀するも、肝臓にまで癌が転移しており、切除が不能であった(2003年版では肺癌の肺内転移と胸膜播種を起こしていて手の施しようがない状況に変更)。他に様々な対案が提案されたが、どれも容態が増悪を引き起こすデメリットが大きかったため、体力の温存を考えて何も施せず縫合した。直後に里見が5-FUの使用を提案したときには当初は反対していたが、最終的に里見の熱意に押されてこれを認め、結果鵜飼も了承した。 術後はしばし往診し、近畿労災病院の仕事があるのにわざわざ往診するのを恐縮する財前に対して「医者が執刀した患者を往診するのは当然のことであって、別に恐縮することはない」と諭した。 2003年版では財前の舅である又一が末期癌の告知を待ってほしいと頼んだ際は金井と共に最後まで反対したが、鵜飼の決定で緘口令が敷かれる。往診に赴いた際に抗がん剤投与に疑問を抱いた財前の質問に対して、「肺癌は油断ならないからプラチナベースの抗がん剤をきちんと投与した方が良い」と説明し、素直に聞き入れた財前に感心していた。 財前が黄疸から真の病状に気づいた際には、医師団の教授とともに鵜飼教授により招集される。鵜飼が財前への告知を渋るなか、「財前君ほどの臨床医を騙しおおせるのは無理だし、騙したまま死なせるには忍びないから、本来なら財前君には切除不能の癌だと告知した上で死んでもらうべきだろう。しかし、もし私自身が癌で倒れた時、一人の人間として死期を予知してもらったほうがよいかどうかは、自信を持っては答えられない…」と語り、死期が定まっている癌を前にして、人間としての弱さを見せた。また、鵜飼から財前の死期を問われ、後任教授の推薦を依頼されると、自分の弟子である財前すら使い捨てにしようとする鵜飼に「財前君はまだ生きています」と怒りを露にした(このシーンは78年版と2003年版にのみ登場するオリジナル)。そして、危篤に陥った財前の最期の脈を取った。 なお、1978年版では東ではなく助教授の金井達夫が最後の脈を取った。2003年版では里見の来訪を待っていたかのように意識を取り戻した財前にステロイドの投与を告げるが、うわごとで里見に話しかける彼をみて躊躇する。最期の脈を取るシーンはなく、かわりに(里見と二人だけにさせてやるため)退室しようとの又一の提案に応じ、最後まで退室を渋った鵜飼らを促した後、最後に退室、病室の扉を閉じた。 2019年版は、財前が里見により膵臓癌であることを告知された後、里見と鵜飼の頼みを受け入れ、執刀する。しかし、財前の膵臓癌は腹膜播種を起こしており、手の施しようがない状態になっていた。助手として立ち会った金井や佃に手術を断念するよう説得され、東はこれを受け入れる。術後の財前はすべてを悟っており、東は包み隠さず真実を話す。それでも財前は恨み言を決して口にせず、「ありがとうございました」と東に感謝する。更に「毎日診察に来る」と伝えると財前は「執刀してくれた医師が診てくれるとこんな気持ちになるんですね。ほっとします。初めてわかりました。」と患者の立場に立った心境を述べた。その後財前は、膵臓癌に起因する脳梗塞を併発。原作同様、東が最後の脈を取り、涙ながらに臨終を告げた。
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