かんえん‐ウイルス【肝炎ウイルス】
肝炎ウイルス
肝炎ウイルス[Hepatitis viruses]
ウイルス性肝炎
(肝炎ウイルス から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/26 14:53 UTC 版)
ウイルス性肝炎 | |
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概要 | |
診療科 | 感染症内科学, 消化器学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | B15-B19 |
ICD-9-CM | 070 |
Patient UK | ウイルス性肝炎 |
MeSH | D006525 |
ウイルス性肝炎(ウイルスせいかんえん、英:Viral hepatitis)とは、肝炎ウイルスが原因の肝臓の炎症性疾患のことを指す。
種類
種類 | ウイルス | 発見年度 | 形態 |
---|---|---|---|
A型肝炎 | A型肝炎ウイルス | 1973年 | RNA |
B型肝炎 | B型肝炎ウイルス | 1964年 | DNA |
C型肝炎 | C型肝炎ウイルス | 1989年 | RNA |
D型肝炎 | D型肝炎ウイルス | 1977年 | RNA |
E型肝炎 | E型肝炎ウイルス | 1980年 | RNA |
F型肝炎 | F型肝炎ウイルス | 1994年 | RNA |
G型肝炎 | G型肝炎ウイルス | 1995年 | RNA |
TT型肝炎 | TT型肝炎ウイルス | 1997年 | RNA |
その他、サイトメガロウイルス・EBウイルス・単純ヘルペスウイルス・風疹ウイルス・麻疹ウイルス・パルボウイルスなどのウイルスによって肝炎を起こすことがある。
臨床
ほとんどの場合、A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎が多く、E型肝炎は発展途上国を中心に流行しているが、その他の肝炎は少ない。
感染
それぞれ各項目の記述を参照
発症
A型肝炎・E型肝炎は急性肝炎を呈することが多く、B型肝炎・C型肝炎の場合慢性肝炎を生じることが多い。またA型肝炎・B型肝炎・E型肝炎は劇症肝炎を生じる場合も多い。
治療
主なウイルス性肝炎の早見表
病名 | A型肝炎 | B型肝炎 | C型肝炎 | D型肝炎 | E型肝炎 |
---|---|---|---|---|---|
病原体 | A型肝炎ウイルス(HAV) | B型肝炎ウイルス(HBV) | C型肝炎ウイルス(HCV) | D型肝炎ウイルス(HDV) | E型肝炎ウイルス(HEV) |
感染経路 | 経口感染 | 血液感染、性的感染、母子感染 | 血液感染、母子感染 | 血液感染、性的感染 | 経口感染 |
潜伏期間 | 約2週間〜2ヶ月 | 約1ヶ月〜半年 | 約2週間〜3ヶ月 | 約1ヶ月〜半年 | 約1〜2ヶ月 |
急性症状 | 重い | やや重い | 軽い、または無症状 | 単独では無症状 B型肝炎との混合感染で重症化 |
重い |
慢性化 | 稀 | あり | 多い | あり | 稀 |
劇症化 | あり | あり | 稀 | あり | 多い |
治療薬 | 特になし | インターフェロン | インターフェロン、直接作用型抗ウイルス薬(DAA) | 特になし | 特になし |
ワクチン | A型肝炎ワクチン | B型肝炎ワクチン | なし | D型肝炎自体には無し。ただしB型肝炎ワクチンが有効。 | なし |
感染症法 | 四類感染症 | 五類感染症 | 五類感染症 | 五類感染症 | 四類感染症 |
その他 | 高齢者は劇症肝炎を起こしやすい。 | 感染した時期やHBVの遺伝子の型によって予後が異なる。 | 肝硬変や肝細胞癌の原因として重要。 | B型肝炎の重症化に関与している。 | 妊婦は劇症肝炎を起こしやすい。 |
トピックス
B型肝炎について
アメリカではB型肝炎の予防接種を受ける事が義務付けられている。垂直感染したB型肝炎ウイルスは感染者肝臓や血液中に長時間とどまり、キャリアとなる。キャリアの10~20%は生涯のどこかの時期に慢性肝炎を発病するので、フォローアップが必要である。これは病気にしか保険適応がない一般医療機関の適応にはならないので、そのような機関としてキャリアクリニックがある(1985年より開設された北海道赤十字血液センター内のキャリアクリニックなど)。
薬害C型肝炎問題
ミドリ十字社(現・田辺三菱製薬)が製造販売していたフィブリノゲン製剤の投与によるC型肝炎感染(フィブリノゲン問題)も、社会問題になっている(薬害肝炎)。米国では、食品医薬品局(FDA)が、B型肝炎感染の危険性があること及びフィブリノゲン製剤の臨床効果を評価するのは困難であり有効とされる適応症がほとんどないことを理由に、1977年12月、フィブリノゲンと同成分の製剤の製造承認を取り消していた。
日本でも、1979年には、一部の研究者がこうした事実を指摘していた(国立予防衛生研究所血液製剤部長の安田純一著「血液製剤」)。また、ミドリ十字社も、1978年1月に、FDAによるフィブリノゲン製剤の承認取消が掲載された米国連邦広報を入手し、社内で回覧していた。にもかかわらず、旧厚生省が初めて実態調査を指示して自主回収が始まったのは、青森県三沢市における肝炎の集団感染が発覚した1987年からであり、完全に回収されたのは実に10年間以上かかった。
肝炎ウイルス検査
日本では、厚生労働省や各自治体が「肝炎ウイルス検査」を推進している。
東京都は、ゾウをモチーフにした「かんぞうくん」を、肝炎ウイルス検診事業キャラクターに据えている[1]。
歴史上におけるB型肝炎ウイルスの感染例について
ミイラ化した遺体を調査する事により、歴史上のB型肝炎ウイルスの感染事例を見つけたとする報告がある。
- 韓国で発見された16世紀のミイラ化した子供に対する、腹腔鏡を用いた肝臓への剖検[2]により、古代B型肝炎ウイルス(aHBV)のDNAが検出されたとの報告がなされた[3][4]。
- 16世紀にイタリアのナポリにあるサン・ドメニコ・マッジョーレ教会に埋葬された、子どものミイラにDNA分析を実施したところ、B型肝炎に感染していた事がわかったとする研究論文が、2018年1月4日に発表された[5]。(顔に明白な発疹の跡があることから、当初は天然痘に感染していたと判断されていた事例)
脚注
- ^ 肝炎ウイルス検診を受けましょう 東京都福祉保健局
- ^ 出典元では「laparoscopic-derived liver biopsies」と表記
- ^ Gila Kahila, Myeung Ju, Athalia, Dong Hoon, Chang Seok 他 (2012年5月14日). “Tracing hepatitis B virus to the 16th century in a Korean mummy” (英語). American Association for the Study of Liver Diseases(アメリカ肝臓病学会). 2025-01-27 06:10(JST)閲覧。 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。
- ^ Gila Kahila, Myeung Ju, Athalia, Dong Hoon, Chang Seok 他 (November 2012). “Tracing hepatitis B virus to the 16th century in a Korean mummy”. HEPATOLOGY (American Association for the Study of Liver Diseases) 56 (5): 1671-1680. doi:10.1002/hep.25852.
- ^ “イタリアの子どものミイラ、天然痘でなく肝炎に感染 DNA分析で判明”. AFP (AFP). (2018年1月5日 11:20) 2025-01-27 08:05(JST)閲覧 エラー: 閲覧日が正しく記入されていません。. "アメリカの医学誌 PLOS Pathogens の掲載論文を基にした記事"
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関連項目
外部リンク
- 知って、肝炎 - 厚生労働省
- 肝炎の概要 - MSDマニュアル
- 各自治体の「肝炎ウイルス検査」についての取組 - 厚生労働省
肝炎ウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 21:08 UTC 版)
詳細は「ウイルス性肝炎」を参照 肝炎は、古代末期から知られる肝臓の疾患である。その症状は黄疸 (皮膚、眼、体液の黄染) を伴う。肝炎を引き起こす多くの因子の中にはウイルスも含まれ、特にA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが主要な原因となる。黄疸の流行は歴史を通じて記録されており、主に戦場の兵士がその影響を受けている。この「戦役黄疸」(campaign jaundice) は中世にはありふれたものだった。また、それはナポレオンの軍隊や、19世紀と20世紀の主要な戦闘のほとんどでも発生した。アメリカの南北戦争では4万を超える症例と約150人の死亡が報告された。流行性の黄疸を引き起こすウイルスは20世紀の半ばまで発見されなかった。流行性の黄疸と血液を介して感染する黄疸とが異なる疾患である証拠が1946年に発表され、それぞれに対しA型肝炎、B型肝炎という名称が1947年に初めて用いられた。1960年代にB型肝炎ウイルスが発見され、A型肝炎ウイルスは1974年に発見された。 B型肝炎ウイルスの発見とその検出法の発明は、医療・美容に関するの処置の多くに抜本的な変化をもたらすこととなった。献血のスクリーニングが1970年代初頭に導入され、ウイルスの伝染は劇的に減少した。1975年以前に集められた血漿と第VIII因子には、しばしば感染性レベルのB型肝炎ウイルスが含まれていたのだった。1960年代の末までは医療の専門家はしばしば皮下注射針を再使用しており、また彫り師の針も一般的な感染源となっていた。1990年代の末には、静注薬使用者による感染の拡大の防止を目的とした「注射器交換プログラム(英語版)」(needle exchange program) がヨーロッパとアメリカで設立された。これらの手段は、その後のHIVやC型肝炎ウイルスの影響を低減するのにも役立った。
※この「肝炎ウイルス」の解説は、「ウイルスの社会史」の解説の一部です。
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「肝炎ウイルス」の例文・使い方・用例・文例
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