各国のメディア
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「2012年の中国における反日活動」の記事における「各国のメディア」の解説
日本メディア 『読売新聞』は9月17日と9月19日付の社説で、一連の破壊行為を「狼藉」と位置づけ「日本の対中感情は悪化するばかり」とし、中国政府による容疑者の厳正な処分、海上保安庁による万全の尖閣警備、日本政府から中国政府への日系企業と邦人の安全確保の強い申し入れ、日米両国の協力による中国への働きかけ、在日米軍の機能強化、尖閣諸島の日本領有に関する国際的アピール等の必要性を訴えた。 中国メディア 多くの中国メディアは各地で暴徒が日系企業等を襲撃、放火、略奪したことを伝えず「理性的な態度で現場警察の誘導に従い、皆さんの協力に感謝する」「デモは秩序的に行われた」などと報じ、当局の統制のもとで虚偽報道を行った。 一方、9月16日の中国メディア『財訊』は「破壊活動の最大の被害者は中国人民で、反日デモを反中国政府デモに繋げることこそ日本政府のシナリオ」とし、「中国製品やサービスの質を向上させることで、日本製品やサービスを退出させることが、破壊的な反日デモよりも良い」と主張した。翌9月17日の中国共産党の機関紙『人民日報』は「日本政府による国有化という茶番に有効に反撃した」と反日デモを評価する一方で、「同胞の財産に損害を与えたり、中国に滞在する日本人に怒りをぶつけたりするのは極めて不当だ」として暴徒化については批判した。また共産主義青年団の機関紙『中国青年報』も「日本のメディアが他人の不幸を喜ぶかのように中国の反日が『暴徒化した』と伝えている」と報じ反日デモ参加者の暴徒化を戒めた。 シンガポールメディア 石之瑜(中国語版)(国立台湾大学)は、『聯合早報』9月11日付け「南シナ海で強硬姿勢を取るよりもシャトル外交を」において、尖閣諸島問題で、台湾は劣勢にあり、主として中国と日本が対立する中で、台湾が第三者としての日中間のシャトル外交を通じて、両者が面目を保つ形で合意を図り、平和的解決に一役買うことができれば、国際社会において地位を確立できると述べている。 欧米メディア 9月16日付け『ニューヨーク・タイムズ』は、反日デモを伝える記事で、「どうして日本は新たに失われた10年を求めるようなことをするのか。20年も歴史を遡るようなことをしようとするのか。中国は常に経済カードを非常に注意深く切ってきた。しかし、主権をめぐる争いで、もし日本が挑発を続けるならば中国もその戦いに立ち上がるだろう」と結論付けた。これについてロバート・キャンベルは、「この記事は、一番大切な結論のところで人民日報の社説をそのまま引用している。すごく挑戦的な言葉で締めくくっている」と評した。 『南ドイツ新聞』は、カイ・シュトゥリットマイヤー記者による「愛国主義者の怒り」と題した9月17日付の記事で、中国で警察が介入することなく反日デモが行われる時は、突発的でないものとみなされ、中国共産党は危険なゲームを行っており、中国共産党はマルクスと毛沢東を葬り、その代替イデオロギーとして愛国主義を中国人が結束する接着剤として利用して、自国の問題から中国人の気を逸らしており、政党の実力者が汚職を行っていると判断され、その配偶者は殺人犯とされ、次期後継者と目される人物が2週間行方不明になっているが、中国政府が気を逸らしているため、中国人は日本を攻撃の標的として非難している。中国共産党による屈辱を中国人が忘れるために、日本からのただ一つの屈辱が歴史として中国人に伝えられているが、中国人は日本を非難するだけでなく、日本に対して弱腰且つ愛国主義でなさすぎるとして自国の指導層を罵る声が既に出始めており、それは中国共産党にとって危険であると論じている。 9月18日付け『タイムズ』は「日本の短気で性急な言動は日本全体に冷たい風を吹かせている」と、一連の騒動の非は日本にもあると書いた。これに対して宮崎哲弥は「日本のPRベタ。日本側は挑発なんかしていない。自国の領土を国有化しただけだ」と評した。 9月18日付け『ザ・バンクーバー・サン(英語版)』はジョナサン・マンソープ論説委員による「中国指導部が諸島を巡る反日抗議を指揮している」と題する記事で、1970年に国連報告書が尖閣諸島海域に石油と天然ガスの埋蔵を指摘するまで、日中間で争いの種はなく、今回の反日デモは、中国当局が助長しており、それは数ヶ月後に迫る中国共産党と中国政府を指導する次期後継者を巡り、その渦中にある派閥が反日国粋主義を利用している節があり、中国共産党は中国人に強い反日的偏見を抱かせ、それは最悪だった毛沢東の支配から中国人の注意を逸らすことが目的であったが、国粋主義や超愛国主義が中国共産党指導部に向けられる危険性に気付いており、反日デモを助長する一方で、統制もしている、と指摘している。 『アイリッシュ・タイムズ』は「シャドーボクシング」と題した9月18日付の社説で、中国において定期的に吹き出す愛国心や反日感情は、国民の団結を図り、国内問題から目を逸らすために中国共産党によって演出されており、今回の反日デモも、指導者から退く胡錦濤あるいは新指導者である習近平が中国人民解放軍での立場を強化するために助長されたとの分析がある、と論じている。 『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』は「何をするか予測のつかない中国」と題した9月18日付の論説で、「中国における対日抗議行動は中国の本性を現しており、危険である」として、中国では、権威主義体制が同意しないかぎり、何人も公に抗議行動は行えず、中国共産党指導部が交代する本年は様々な派閥争いが生じ、経済も大きな課題に直面する中で、外国のスケープゴートはまさに好都合であり、今回の反日デモは、野党や反体制勢力はおろか、法治国家も多元主義も存在しない中国の予測不可能性を示しており、経済的な中国依存は誤りであるが、残念ながら実際はそのようになっていると論じている。 『ウォール・ストリート・ジャーナル』は「理解に苦しむ中国デモ隊の反日過激行動」と題した9月19日付け社説で、反日の憎しみの炎を煽ってその後沈静化させるのは中国政府の典型的手段であり、中国共産党の歴史的正当性は侵略者である日本を駆逐したことであるから、反日感情をくすぶらせ続けるのは中国共産党にとって恩恵があり、中国が自国民からの都合の悪い経済ニュースや政治的スキャンダルから目を逸らそうとしていると分析し、石原は摩擦をもたらす極端なナショナリストで、野田総理は尖閣諸島を国有化することで中国との摩擦を避けるため責任ある行動をしたと評し、「究極的に中国は、外国貿易や投資を育んで安定的で理性的で信頼できる大国としての評判を得るという国益よりも、ナショナリスト的な衝動を優先したことによって、代償を支払うだろう。問題は、中国の指導者たちがその最悪の衝動を抑えようとしないならば、その代償が高価にならざるを得ず、その代償を支払わなければならないのは中国以外の何者でもない、ということだ」と結論付けた。さらに、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は「中国の愛国主義者の怒り」と題した9月25日付の社説で、反日デモ活動家は、日本の全滅を呼びかける横断幕を掲げて「日本のビジネスを破壊したり放火したりしたことは、理解に苦しむ」として、中国共産党は、反日感情を維持することで利益を得ており、それは、中国政府が日本の侵略者を追い出し、世界における中国の地位を回復したという正統性を得ているからであるが、日本に対する怒りを制御しなければ、反日デモ活動家の非難が中国政府に向かう。さらに、中国政府は武力衝突の危険を高める措置を講じており、アメリカは中国の近隣諸国への侵略に対して断固とした対応をとる必要があり、さもなくば、中国政府は、愛国主義者の怒りにまかせておいても構わないと考えるだろう、と論じた。 『フィナンシャル・タイムズ』は「中国と日本の島をめぐる問題」と題した9月19日付の社説で、中国は尖閣諸島問題を平和的に解決すると繰り返しているが、反日感情の高まりから外交的手段による緊張の高まりを抑えることが不明瞭になっており、過去の中国共産党は、自らの信頼回復のために愛国主義的感情を扇動することを厭わなかったが、今回の反日デモは、こうした扇動が急速に制御不能になる危険性を示唆しており、日本は長く中国共産党の政治的武装の道具であったが、今回の反日デモでは、かかる愛国主義が急速に制御不能な状況に連鎖し、大衆的騒乱への対応に抑制を示すべきであるとした。 ビル・エモットは、『ラ・スタンパ』9月22日付け「中国・日本 世界を恐れさせる争い」において、汚職と経済成長のスピード低下から国内世論の圧力を受けている中国共産党は、自国民の愛国心を鼓舞するために反日デモを利用しており、過去の大戦はささいな紛争やわずかな計算ミスが発端となったが、世界は東シナ海の小さな島々のために再度こうした状況が発生しないことを祈らなければならない、と述べている。 ジャンピエール・カベスタン(フランス語版)(香港浸会大学)は、『フィガロ』9月25日付け「中国は尖閣諸島を忘れよ」において、1945年の国民政府は、尖閣諸島と釣魚島が同じ島であることを理解しておらず、この問題をとりあげることなく、1952年に日本と平和条約を締結し、中国は本件に一言も言及しなかったが、石油の埋蔵が指摘されたことから、中国のナショナリストが目覚め、領土問題を棚上げした鄧小平の政策に反し、現在の中国共産党指導者はそれを乗り越えられると信じているが、日本は譲歩せず、さらにアメリカの同盟国であるから、尖閣諸島での武力衝突は急速に拡大するため、EUは「中国が釣魚島を忘れる」か、法的手段で紛争を解決するように中国へ圧力をかけるべきであると述べている。
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