ゼーゼマン家
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「アルプスの少女ハイジ (アニメ)」の記事における「ゼーゼマン家」の解説
クララ・ゼーゼマン(Klara Sesemann) 声 - 吉田理保子 / 潘恵子(劇場版) ドイツ中西部のフランクフルトに住んでいるゼーゼマン家の一人娘で、ハイジより4つ年上。金髪で後頭部に水色の大きなリボンを結んでいる。身体が弱いため常に車椅子に乗り、外出することなく生活している。幼い頃に母親を亡くし父も仕事でいつも不在のため、家の中だけで家事使用人らの世話を受けて育ち、ハイジが来るまで同世代の友人はいなかった。従順で少し大人びた発言をすることもあるが、依存心があり大人を困惑させる言動をとることも。 「体の弱いクララは屋敷の中で安静にしているべき」と考えるロッテンマイヤーの厳しい管理の下、屋敷の外の世界に興味を持たず、規則正しく退屈で孤独な毎日を送っていた。ハイジとの交流やハイジの起こす騒動を経て次第に意欲的になり、外への興味や関心が広がるが、ロッテンマイヤーはそのことを快く思っていない。またハイジがアルムへ帰りたがっていることを知っているが、唯一の友人であるハイジを失い孤独で退屈な日々に戻ることを恐れてもいる(結局はこれがハイジが夢遊病となり重度のホームシックになった主たる原因であり、早い話クララのハイジを自分の手元に置きたいが為の我が儘をロッテンマイヤーが真に受けてしまったのも重なった)。ハイジが帰郷した後、ハイジとの約束で訪れたアルムの山の大自然の中で、徐々に体力を取り戻し、ロッテンマイヤーが愕く程の食欲を見せるなど、徐々に健康になって行く。ついにはクララを訪ねてきた祖母と二人きりの時に牛に襲われ、恐怖で無意識に自力で立ち上がる。その後、アルムおんじに見守られるなか、ハイジやペーターの手助けで歩く練習を始め、最終回では短時間ながらも自力で歩くことに成功、フランクフルトの屋敷に戻ってからはロッテンマイヤーの指導の下、屋敷の階段を使ってのリハビリに悪戦苦闘しながらも「来年山に行く為にも、もっと長い時間歩けるようになりましょう」と励ましを受け、再びハイジたちと会うため、冬の間リハビリに専念することを改めて誓う。 なお、原作では肝油(ビタミンD欠乏によるくる病の予防薬として飲まれる)を飲む描写がある(本作品でも「苦い薬を飲まされる」と僅かに触れられている)。ビタミンDの欠乏は紫外線(日光)の照射不足が原因のひとつであり、全く外出しない彼女が病弱であることも、アルムの山で徐々に健康を回復することも、理に適っている。 ロッテンマイヤー(Rottenmeier) 声 - 麻生美代子 / 京田尚子(劇場版) ゼーゼマン家の執事である中年女性。原作では、ゼーゼマンの妻(クララの母)が亡くなった後に、ゼーゼマン家の家事一切を差配し、使用人を監督し、クララの教育係を務めている「ロッテンマイヤーさん(Fräulein Rottenmeier)」とある。ゼーゼマン家の中で唯一、ハイジを洗礼名(本名)のアーデルハイドと呼ぶ。アーデルハイドとはハイジの実母の名で、洗礼名を問われた際に叔母のデーテが伝えたものである。ハイジのことを、他の使用人たちにお嬢様と呼ばせていた理由は、単にクララの遊び相手だからではなく、ハイジのゼーゼマン家における地位はロッテンマイヤーと同じ程度だからである。 髪型は常に夜会巻きで、鼻眼鏡をかけている。家事一切を取り仕切り、大富豪の執事に足る教養を持つ。杓子定規で頭が固く、融通がきかないため、形式に沿わぬことや大騒ぎなどが大嫌い。そのため気さくなおばあさまとは気が合わず、他の使用人たちからの人望もいまひとつで、自由奔放なハイジとの相性は最悪と言える。決して悪人ではないのだが、生活の秩序を守ることや体の弱いクララを第一に考えているため、ハイジへの思い遣りに欠ける面がある。またクララの体が“これ以上悪くならない”ことばかりを考え、クララに無理をさせまいとしてきたため、それがクララの意欲を削いでいたことにも気づいていない。大の動物嫌いで、屋敷を抜け出したハイジが拾ってきた子猫に飛び掛かられて気絶するほどである。アルムを訪ねた時は、ヤギ達やヨーゼフを「けだもの」呼ばわりし、引っ掻き回されハラハラの連続だった。なお原作では、クララと一緒にアルムの山へは行かなかった。 学校に通っておらず礼儀作法を知らないハイジを、ゼーゼマン家に相応しい秩序ある人物にすべく、粘り強く厳格に教育する。しかし彼女のやり方が合わず、ハイジは様々な騒動を引き起こす一方でホームシック状態となるが、それに気づくことはなかった。おばあさまが別荘へ戻った後、ハイジもアルムの山へ戻るのではないかと憂うクララに配慮するあまり、ハイジに対して「以後、山に関する話題を一切口に出さない」ように言い渡す等したことで、結果的にハイジの心を破綻させ、彼女が夢遊病を発症する直接の原因を作った。尚、この仕打ちについてはセバスチャンら他の使用人たちだけでなく、優しく温厚なゼーゼマンをも怒らせてしまい、彼から「よくもあの子に残酷な仕打ちを……。貴方こそハイジを幽霊(みたいな病状)にした責任者だ!」と激しい叱責を受ける事となった。 ハイジがアルムへ戻った後、当初はクララが山に行くことを訝しく思っていた。しかし山でクララが歩けるようになったことから、フランクフルトに戻ったクララに屋敷の階段を使ってのリハビリに付き添う。一見厳しいながらも「来年山に行く為にも、もっと長い時間歩けるようになりましょう」と励ましており、最終的にはクララの山行きに理解を示し、むしろ勧めるようになる。 余談だが、舞台版では戦前の発音に基づき「ロッテンマイエル」と表記される場合がある。これはペーターを「ペーテル」と発音していたのと同様である。また阿川弘之の小説「犬と麻ちゃん」でも野村耕平が言及するシーンがあるが、ここでの“フロイライン”は名前ではなく敬称の「嬢」であり、ファーストネームではない。 セバスチャン(Sebastian) 声 - 肝付兼太 / 加藤治(総集編) ゼーゼマン家の使用人の中年男性。原作ではロッテンマイヤーではなく彼が執事とされている(ロッテンマイヤーはガヴァネス)。ドイツ語での発音はゼバスティァンに近い。 クララの身の回りの世話を全般的に行う。ハイジはセバスチャンを最初に見たとき「おじさん、ペーターに似ている」と話している。物分かりが良く、大らかな性格で、ハイジの良き理解者。ハイジの帰国時には仕事が忙しいデーテに代わってハイジをデルフリ村まで送ってくれた。デルフリでハイジと別れる際にも「山が嫌になったら、いつでもフランクフルトに帰ってきていいんですよ」と言う等、ハイジに対して、まるで父親が娘に接するような振る舞いを見せる。その為、ハイジにとってはおばあさまと並び、フランクフルト滞在時の心の支えとなった優しい人。ただし原作の方のセバスチャンは無条件に優しいだけではなく、用心深くて計算高い一面もある。ハイジが起こした騒動を利用してロッテンマイヤーをからかうシーンなどがある。 チネッテ(Tinette) 声 - つかせのりこ / 高山みなみ(総集編) ゼーゼマン家の使用人の若い女性。ハイジが起こした騒動の後始末をすることが多く、そのためか無愛想でハイジに対して少々冷たいところがある。ロッテンマイヤーが所用でゼーゼマン家を空ける時、「あの婆さんがいなくてせいせいする」という言葉通り、どちらかというと彼女はロッテンマイヤーを嫌っている様子。ハイジの起こした大騒ぎでロッテンマイヤーが大慌てするのを見て、セバスチャンと一緒にほくそ笑んだり、ハイジに対するロッテンマイヤーの厳しすぎる躾を快く思わない素振りを見せる一面もあり、彼女自身は決してハイジが嫌いというわけではないようだ。また、タンバリンを上手にたたけるなど、音楽的素養も持ち合わせていたり、ロッテンマイヤー同様にネズミが嫌いのようだが、猫は大丈夫のようである。 ヨハン(Johann) 声 - 根本好章 / 千田光男(劇場版) ゼーゼマン家の御者。白い口髭を生やした小太りの男性で、シルクハットをかぶっている。 ゼーゼマン(Herr Sesemann) 声 - 鈴木泰明 クララの父親。貿易の仕事で忙しく、パリに出かけているため滅多に家にはいない。そのためか、一人娘のクララを溺愛している。とても優しく、温厚で紳士的で、ハイジにもクララと同じ位に深い愛情を注いでおり、ハイジがホームシックと夢遊病を併発した時、その原因がロッテンマイヤーの厳しすぎる言いつけにあったことを知った際は珍しく激高し、ロッテンマイヤーに大喝を浴びせ叱責した。 ハイジがやってきてからの自宅内がうまくいっていないことを察し、実母であるクララのおばあさまをフランクフルトに呼び寄せる。ハイジがゼーゼマン家のあれこれを乱したから、という解釈ではなく、前々からロッテンマイヤーの少々行き過ぎた管理・躾などを是正するために、実母のおばあさまを呼び寄せたというのが実情と言える。 最終回で冬が近づいたためにクララを迎えに来たゼーゼマン家の一同の前でクララが自力で立ち上がり、短時間ながら歩いて見せた時には一同の中で最も驚き、かつ感動のあまり大号泣し、アルムおんじに感謝の言葉を述べた。 おばあさま (Großmama) 声 - 川路夏子 / 此島愛子(総集編) / 麻生美代子(劇場版) クララの父方の祖母。とても気さくかつ聡明な老婦人で、ロッテンマイヤーをも軽くあしらう。ハイジに挿絵つきのグリム童話の本をプレゼントし本を読み聞かせることで、本への興味を持たせ、字の読み書きを自発的に学んでいけるようにした。また、ホームシックのハイジに気晴らしをさせようと、郊外の森に連れて行ったりと、フランクフルト滞在時のハイジにとって、一番の心の支えになった人物。 クララ曰く、高齢ながら別荘で仕事をしているとのこと。アルムの山でのクララの生活ぶり、アルムおんじのクララに対する考えに感銘を受け、おんじにアルムでのクララの滞在を任せる。ペーターにも信頼をおいている。 原作によると、ゼーゼマン家の財を築いた人物とされる。 お医者様(Clessen) 声 - 根本好章 / 中庸助(総集編) ゼーゼマンに“冷たい水”を頼まれたハイジが、街中へ冷たい井戸水を汲みに行ったときに偶然出会った老紳士。実はゼーゼマンの友人にしてクララの主治医で、名はクラッセンという。ゼーゼマン家で幽霊騒動が起きたときには科学者の立場で立ち会い、騒動はハイジのホームシックが原因であるとして、ハイジをアルムの山へ帰すよう指示した。普段はハイジやクララ、ゼーゼマンなどの意を汲む温厚で融通の利いた性格だが、ハイジがホームシックと夢遊病を併発しているとわかったとき、一日も早くハイジを(アルムへ)帰すべきと忠言し、ゼーゼマンの「ハイジを元気にしてから、山へ帰そう」との言葉には、「ホームシックは粉薬や丸薬で治る病気と違う」、「今すぐに山へ帰さないと、手遅れになってしまいかねない」と医師として毅然とした態度を示す。 クララの体を治すのは、内服薬だけではなく、不便なアルムで懸命に暮らそうというクララ自身の意欲も必要であるということに気付いた。また、クララが実際にアルムに行き一定期間過ごせるのかを直接確認する為にやってきた時には、アルプスの大自然の美しさ、たまたま出会って山小屋まで案内をしてくれたペーターの朴訥で優しい心、意見交換をして知ったおじいさんの考えや心などにより「ハイジがホームシックになるのも無理はない」と、お医者様自身の五感で感じたことを素直な表現で感銘を受けたシーンがある。このことは、クララがアルムにおいて長期滞在をし、自分の足で歩くことが可能であるかもしれないと確信に至る1つのきっかけを作った重要な場面となる。 家庭教師の先生 声 - 島田彰 クララの家庭教師。丸眼鏡に灰色の髪の中年男性で、一人で様々な科目をクララに教えている。ハイジが来てからは、並行してハイジにも勉強を教えることになるが、字の読み書きもできないハイジにクララと同じ内容を教えるよう、ロッテンマイヤーに指示され苦心する。 2010年代に制作された家庭教師のトライのテレビCMでは、この家庭教師に代わってオリジナルキャラクターの「トライさん」が登場している。
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