ゲオルク・ジンメル
ゲオルク・ジンメル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 17:01 UTC 版)
特にフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの研究にはドイツの哲学者ゲオルク・ジンメル(1858年-1918年)の影響が色濃く現れていることが指摘されている。Gesellschsftsspieleというドイツ語はフォン・ノイマンによる先駆的論文「社会的ゲームの理論について」(1928年)において用いられ「ゲーム理論」という名称の由来にもなった単語であるが、当時としては一般的な表現ではなかった。しかしこの概念は、以下の引用に示されるように、ジンメルの著書『社会学の根本問題』(1917年)において主題のひとつとして既に論じられていた。なお引用文において翻訳者の清水幾太郎はGesellschaftsspieleに「社会的遊戯」という訳語を充てている。 社会的遊戯(独: Gesellschaftsspiele)という表現は深い意味において重要である。人間の間の一切の相互作用形式、社会化形式—例えば、勝利への意志、交換、党派の形成、略奪の意志、偶然との邂逅や別離のチャンス、敵対関係と協力関係との交替、落し穴や復讐—これらは何れも、油断のならぬ現実では目的内容に満たされているのに、遊戯となるとこれらの機能そのものの魅力だけを基礎として生きて行く。なぜなら遊戯が賞金目当ての場合でも、お金は他の色々な方法でも獲得できるものなので、それは遊戯の眼目ではなく、むしろ本当の遊戯者から見れば、遊戯の魅力は社会学的に重要な活動形式そのものの活気や僥倖にある。社会的遊戯には、更に深い二重の意味がある。すなわち、それが実質的な参加者たる社会のうちで行われるという意味だけでなく、加えて、それによって実際に「社会」が「遊戯」になるということである。 — Simmel, G. (1917) Grundfragen der Soziologie(清水幾太郎訳 1979, p. 81) 日本におけるゲーム理論研究に先鞭をつけた鈴木光男は「社会化のゲーム形式」と呼ばれるジンメルの社会観は後にフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンによって打ち立てられたゲーム理論そのものであると論じている。ゲーム理論における人間像は自己と他者との関係から成り立っており、したがってゲーム理論は社会存在としての「自我の自覚と他者の発見」という近代の市民社会の精神によって基礎づけられる。さらに、ゲーム理論は個人間の自由な関係を前提としているにもかかわらず、「レッセ・フェール(仏: laissez-faire)」と呼ばれる古典的自由主義の楽観的人間像とも異なった人間像・社会像を与えている。
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