酒税法 酒類製造の制限

酒税法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/26 16:02 UTC 版)

酒類製造の制限

日本において酒類製造免許がない状態でのアルコール分を1%以上含む酒類の製造は、酒税法により原則禁止されている。これに違反し、製造した者は酒税法第54条により10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる。かつては家庭においてリキュールを作ることさえ不可能で厳格な法律であったが、一部については規制緩和が行われた。

規制緩和

1961年昭和36年)、当時の石橋内閣のもとで広報参与を務めていた読売新聞出身の石田穣が、日本経済新聞紙上に梅酒に関連した随筆を寄稿したことから、酒税法をめぐる騒動が発生する。石田の随筆の内容は、当時の酒税法に違反する内容であったためである。それまでも一般家庭では、梅酒やリキュールなどの自家製造は広く行われていたが、結局この失言騒動めいた経緯が決め手となり、翌1962年(昭和37年)に正式に法改正が行われ、家庭で梅酒などリキュールを作ることが可能となった[2][3]

ただし、漬け込むアルコールの度数は20度以上とするなど条件は厳しく、著しく例外規定的なものであった。一例として、2007年平成19年)6月14日テレビ番組きょうの料理』(日本放送協会)の「特集★わが家に伝わる漬け物・保存食~梅酒~」にて、みりんを使った梅酒のつくり方を放送したが、そのレシピに従い、個人が梅酒を作ると違法となることが判明し、後日、謝罪放送がされるという事態が発生した。

既存の小売業者を保護し、酒税の安定した賦課徴収を図るために、新規参入者に対しては、酒税法に基づく厳格な制限が課されていた。しかし1998年(平成10年)3月に第2次橋本改造内閣閣議決定された、規制緩和推進3カ年計画に基づき、2001年(平成13年)1月に距離基準(既存の販売場から一定距離を保つ規制)が廃止され、2003年(平成15年)9月には人口基準(一定人口ごとに酒類販売業免許を付与する規制)が廃止された。これにより、酒類の販売が事実上「自由化」されたものの、租税徴収と脱税防止のため、酒の販売に当たり『酒類販売業免許』が必要であることに変わりはない。

なお酒類販売の「自由化」と同時に、既存業者を保護することを目的とした議員立法酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法)が制定され、かえって規制が強化された地域(特別調整区域)が存在するようになった。同法は2年間の時限立法であったため、2005年(平成17年)8月31日に失効しているが、失効前の改正によって規制強化は2006年(平成18年)8月31日まで存続した。

注意点

酒税法上、酒類製造免許がない者が、梅酒サングリアなどの混成酒を造る場合、アルコール度数20度以上の酒を使用することが、酒税法により定められている。そのため通常、レシピのサングリアはワインが20度もアルコール度数がないため、酒税法違反となる[注釈 3][4]。また店舗で提供する場合は、税務署への届け出と20度以上の蒸留酒を用いることが酒税法により定められている。サングリアを提供する店舗をハイパーリンクして紹介するウェブサイトがあるが、注意が必要である[注釈 4][5]。どうしても作りたい場合は、酒税法43条10項の「消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない」より、飲む直前に混ぜることになる。

市販の酒類を蒸留しエタノールを抽出する行為も酒類の製造と見なされ、中学校の理科など基礎科学実験で多いみりんワインを蒸留する実験[6][7][8]には、飲料に使えないように添加物を加えたりアルコール事業法の制限(90度)に抵触しないように配慮しなければ違法となる[9]。しかし、国税庁は教育現場では「工業用アルコール」を使用しているとの建前で監査なども行わず、放置状態である[9]


  1. ^ 薄めてアルコール分1度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が90度以上のアルコールのうち、第7条第1項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く)または溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。
  2. ^ 第23条。1キロリットル当たりの酒税は、焼酎を含む蒸留酒類は21度未満が20万円、それ以上は度数×1万円であるが、ウイスキーなどは37度以下が一律37万円と異なる。ただし、一部に35度ウイスキーなどが存在する以外、一般に40度以上なので実質は同額である。
  3. ^ サングリアはレシピなどが出回っているが、酒税法違反がほとんどである。日本酒サングリアも日本酒が20度以上あるものが少ないため違反となっているケースが多い。
  4. ^ ワインは蒸留酒ではないし、アルコール度数も15度以下のため、店舗での提供は事実上不可能となる。
  5. ^ 一般に「焼酎乙類」と表記。「焼酎甲類」より劣ると誤解されないように「本格焼酎」という表現も用いられるが、焼酎乙類には糖分などを2度未満加えることが可能なのに対して、本格焼酎は無添加のものに限られるなどの違いがある。
  1. ^ 「ジャパニーズウイスキー」の悲しすぎる現実 - 東洋経済オンライン
  2. ^ 本郷明美『どはどぶろくのど 失われた酒を訪ねて』講談社
  3. ^ MSN産経ニュース - 産経抄 - 2011年12月5日(2011年12月4日時点のアーカイブ
  4. ^ 消費者が自宅で梅酒を作ることに問題はありますか”. 2016年8月18日閲覧。
  5. ^ 旅館等で自家製の梅酒を食前酒として提供することに問題はありますか”. 2016年8月18日閲覧。
  6. ^ 実験10みりん、ワインの蒸留/1年理科『化学』/takaの授業記録2002 - 中学校の教諭が生徒に持参させた酒類を蒸留する実験の記録
  7. ^ 蒸留でエタノールを取り出す - お茶の水女子大学附属中学校の教諭が中学向けの簡素な実験手順を紹介した事例。みりんワインを使用する際の注意点も書かれている。
  8. ^ アルコールの蒸留 文系学生実験 - 慶應義塾大学自然科学研究教育センターが文化系の学部生向けに行っている基礎化学の実習。ワインまたは焼酎を蒸留している。
  9. ^ a b 消毒用アルコールが無いなら赤ワインから合法的に作ってみる。 薬剤師 植芝亮太 - 薬剤師がワインから消毒用アルコールを製造するため国税庁などに問い合わせた事例。


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