人種 伝統的な人種の分類例(肌の色)

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人種

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/12 07:40 UTC 版)

伝統的な人種の分類例(肌の色)

各国の先住民の皮膚色を分配したマップ

肌の色は実際の居住地域の環境の影響を受けるために、肌の色や風貌によって集団間の遺伝的距離を測ることはできないとされる。 ただし同じ緯度でも人種によって濃淡の差異がある。例えばモンゴロイドであるアメリカ先住民は赤道域においてもネグロイドオーストラロイドほど黒褐色にならない。アボリジニは比較的中緯度においても皮膚色が薄くならない。これらは適応のみならず、皮膚の色が遺伝的にも支配されていることを示唆している。 また、現生人類の祖先はネグロイドのような黒褐色の皮膚を持っており、出アフリカ後、ユーラシアにおいてモンゴロイドコーカソイドが独立に皮膚を白色化させたと考えられ、両人種における肌を白色化させる遺伝子は異なると推定されている。

DNA分析による分類例

人類集団の遺伝的系統

左図は多型マイクロサテライトにより求められた人類集団の系統樹である。[18] この系統樹が意味するところは、最初にアフリカ人とその他の集団が分岐したこと、次にヨーロッパ人とその他の集団が分岐したこと、その次に東・東南アジア人とオーストラリア人が分岐し、最後の大きな分岐として東・東南アジア人とアメリカ先住民が分岐したということである。 この系統樹で見られた主要な特徴は、従来のタンパク質多型や最近の核DNAの多型によって明らかにされた人類集団間の系統関係と大筋において一致する。(外部リンクを参照)

近年の遺伝子研究により、中図のように北アフリカ人や中東人は遺伝子的にヨーロッパ人に近いが、長年の間にサハラ以南のアフリカ人と同化していることもあり、ヨーロッパ人とサハラ以南のアフリカ人の間に位置している。同様に、中央アジア人やインド人も地理的配置からヨーロッパ人と東アジア人(オーストラリア先住民、アメリカ先住民を含む)の間に位置している。[19]

右図は世界の18人類集団の遺伝的近縁関係を23種類の遺伝子の情報をもとに近隣結合法によって作成された人種の遺伝的近縁図である。 この分析が証明する人類集団の系統は、アフリカン(ネグロイド)からコーカソイド(白人)が分岐し、コーカソイドからオセアニアン(オーストラロイド)・イーストアジアン(モンゴロイド)が分岐、そしてイーストアジアンからネイティブアメリカンが分岐した、と云うものである。この人類集団の近縁関係は上記の遺伝的系統樹と現在の人類集団の地理的配置に一致する。

ただしこれらの系統樹には混血の歴史が反映されないため、より厳密な手法やハプログループによる系統で分析すべきという意見もある。

近年の研究においては現生人類の分類中、純粋なホモ・サピエンス(従来のネグロイド)と、ホモ・サピエンスの祖先と「ホモ・ネアンデルターレンシス」との雑種(ネグロイド以外の現生人類)が存在するとの論文が発表されている[20]

最近の研究から、東アジア人(モンゴロイド)を特徴付ける遺伝子があることがわかった[21][22]

Y染色体・mtDNAハプログループと人種

Y染色体ハプログループの拡散と人種。褐色がネグロイド、青色がオーストラロイド、黄色がモンゴロイド、桃色がコーカソイド

ミトコンドリアDNAやY染色体のようなゲノムの組換えしない部分を用いた系統樹の作成は、集団の移動とルーツを辿るのに用いられる。例えば日本人のミトコンドリアDNAのハプロタイプの割合と、周辺の集団(韓国や中国、台湾、シベリア先住民など)を比較することで、祖先がどのようなルートを辿って日本列島にたどり着いたかを推定できる。

崎谷満は人類のY染色体ハプログループおよびミトコンドリアDNAハプログループが出アフリカ後にイラン付近を起点にして南ルート(イランからインド、オーストラリアへ)、北ルート(イランからアルタイ山脈付近へ)、西ルート(イランから中東・カフカス山脈付近へ)の3ルートで拡散したとしている[23][24]。すなわち南ルートをとった集団がオーストラロイド、北ルートがモンゴロイド、西ルートがコーカソイド、非出アフリカがネグロイドということになる。

Y染色体ハプログループの拡散と人種

人種の要因

人種概念が誕生した要因は大きく二つに分けられる。一つは外見上の表現型の差異が存在するため、もう一つはそのような外見上の差異を認識する人間の認知能力が存在するためである。

集団間の表現型の差異は、全地球的な距離や山脈、気候要因など地理的障壁によって遺伝子流動が制限された異なる集団が時間の経過とともに異なる自然選択を受けたり(性選択も関わっているかも知れない)、異なる遺伝的浮動を経験することで生み出される。

二つの集団全体が十分に交流していれば、それぞれの集団中の遺伝子の頻度は平均化され、表現型の差異は生み出されない。このメカニズムは異なる種を作り出す種分化のメカニズムの一部であり、十分な時間、二つの集団の遺伝子流動が制限され続ければその集団は別個の二種となる。自然の中にも人種と同じように、連続した亜種の連なりを示すクラインを形成する種が存在する(例えば輪状種

人類アフリカ単一起源説のモデル図[25]
人類のアフリカ単一起源説
現生人類の起源と分散を説明する理論は二つあり、一つはアフリカ単一起源説、もう一つは多地域起源説である。どちらの説も十分に遡れば人類の起源はアフリカであることに同意しており、大きな違いはいつ我々の祖先がアフリカを出発したかである。DNA分析によれば、全人類の共通祖先は遠くとも25万年前には存在していたとされる(これは共通祖先が100万年以上遡ると見積もる多地域起源説への重大な反証である)。つまり人類のアフリカ単一起源説に基づけば、約25万年前以降に出アフリカを果たした人類が、距離や山脈など地理的障壁によって遺伝子流動が制限された結果、異なる遺伝的特徴を持った集団が成立したとされる。
人種的境界と地理的境界は一致する(移動の妨げとなる自然環境が人種を誕生させた)
上述の「人類集団の遺伝的系統-1.2」も参照。
また、「人類集団の遺伝的系統-1・2」を世界地図に重ね合わせると、ネグロイドはアフリカ大陸、コーカソイドはユーラシア大陸のヒマラヤ山脈及びアラカン山脈の南西側(DNA分析によればインド・アラブ・トルコ人もコーカソイドである)、モンゴロイドはヒマラヤ山脈及びアラカン山脈の東および北側、オーストラロイドはインド亜大陸からオーストラリア大陸とスンダ列島周辺、そしてネイティブアメリカンは南北アメリカ大陸に分布することが分かる。
つまり、出アフリカを果たした現生人類の祖先が各大陸に移住した後、ジブラルタル海峡・地中海・スエズ地峡・紅海・ヒマラヤ山脈・アラカン山脈・中央アジアの乾燥地帯・ベーリング海峡等の自然環境により、それぞれ交流が遮断された地域が、そのまま現在の主要人種の居住地域となっている。
人種間の遺伝的距離と地理的距離に相関がある
人種間の遺伝的距離と、対象となる人種と人種が居住する地理的距離は相関がある。つまり、人類誕生の地であるアフリカに住むネグロイドと各人種との遺伝的距離は、各人種の住む地域のアフリカからの地理的距離が離れている程、大きくなる。
例:「人類集団の遺伝的系統-1・2」にある通り、アフリカ人との遺伝的距離がもっとも近いのはアフリカ大陸の隣接地である地中海沿岸のユーラシア大陸に住むコーカソイドであり、逆にもっとも遺伝的距離が遠いのは、アフリカ大陸から地理的に最も遠いアメリカ大陸に住むネイティブアメリカンである。



  1. ^ a b c d e f g h i 精選版 日本国語大辞典小学館
  2. ^ 人種は生物学的な亜種ではなく、現生するヒトは、遺伝的に、種や亜種に値する程の差異は存在しないとされる。この場合の「種」は、生物学の概念としての「種」と混同してはならない。英語では、生物学的な「種」は speciesであり、人種はraceであり、両者はまったく異なる単語である。にもかかわらず、日本語では同じ「種」という訳語が採用されているので、両者が混同されやすい。生物学における「種」が適応されるのは、ホモ・サピエンス全体であり、そこには現生人類に加えて、ネアンデルタール人なども含まれる。「人種」の「種」が意図しているのは、あくまでも現生人類を、さらに細かく形質的特徴によって区分する試みである。しかも、この区分の基準は、時代や社会によって異なる流動的なものであることに留意する必要がある。
  3. ^ 岩波生物学辞典 第四版
  4. ^ スターン, C『人類遺伝学』田中克己訳、岩波書店、1952年。原著The Principles of Human Geneticsは、ドイツ生まれのアメリカの遺伝学者カート・スターン英語版の1949年の著作。
  5. ^ 他の生物における亜種に該当する。
  6. ^ 竹沢泰子人種とは何か考える
  7. ^ 竹沢泰子『人種概念の普遍性を問う』他
  8. ^ 「19世紀フランス人種思想のなかのアラブ人」杉本淑彦、2004年、『フォーラム 白人性と帝国』
  9. ^ 福澤諭吉『掌中萬國一覧』1869年
  10. ^ Carleton S. Coon, The Origin of Races, 1962.
  11. ^ 浦野茂「類型から集団へ」『概念分析の社会学─社会的経験と人間の科学』酒井泰斗, 浦野茂, 前田泰樹, 中村和生、ナカニシヤ出版、2009年。
  12. ^ クロード・レヴィ=ストロース 荒川幾男訳 (2008) [1952]. 人種と歴史 (新装版). みすず書房 
  13. ^ a b Leda Cosmides,John Tooby,Robert Kurzban Perceptions of race TRENDS in Cognitive Sciences Vol.7 No.4 April 2003
  14. ^ 斎藤成也人種よさらば
  15. ^ 竹沢泰子『人種概念の普遍性を問う』他
  16. ^ 山口敏「「人種」は虚構か」自然史学会連合 エッセイ
  17. ^ スティーブン・ピンカー 『人間の本性を考える 下』 第8章 「もし生まれついての差異があるのならば……」
  18. ^ High resolution of human evolutionary trees with polymorphic microsatellites. Nature 368,455-457
  19. ^ SCIENCE VOL 319 Worldwide Human Relationships Inferred from Genome-Wide Patterns of Variation
  20. ^ “Special Feature: The Neandertal Genome”. Science (アメリカ科学振興協会). (5 2010). http://www.sciencemag.org/special/neandertal/ 2010年8月12日閲覧。.  アブストラクト和訳PDF
  21. ^ Yuan, Dejian; Lei, Xiaoyun; Gui, Yuanyuan; Wang, Mingrui; Zhang, Ye; Zhu, Zuobin; Wang, Dapeng; Yu, Jun et al. (2019-06-09). “Modern human origins: multiregional evolution of autosomes and East Asia origin of Y and mtDNA” (英語). bioRxiv: 101410. doi:10.1101/101410. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/101410v6. 
  22. ^ Chen, Hongyao; Zhang, Ye; Huang, Shi (2020-03-11). “Ancient Y chromosomes confirm origin of modern human paternal lineages in Asia rather than Africa” (英語). bioRxiv: 2020.03.10.986042. doi:10.1101/2020.03.10.986042. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.10.986042v1. 
  23. ^ 崎谷満(2009)『新日本人の起源』勉誠出版
  24. ^ 崎谷満(2009)『DNA・考古・言語の学際研究が示す 新・日本列島史』勉誠出版
  25. ^ The Evolution of Human Genetic and Phenotypic Variation in Africa
  26. ^ Robert Kurzban, John Tooby, and Leda Cosmides Can race be erased? Coalitional computation and social categorization
  27. ^ Jonathan Kahn (August 2007). “Race in Bottle”. SCIENTIFIC AMERICAN. https://nikkeibook.com/science/english_read/bn200711.html. 
  28. ^ Kaiser Health Disparities Report: A Weekly Look At Race, Ethnicity And Health, Science & Medicine NitroMed To End Promotion of Heart Failure Medication Specifically Approved for Blacks”. kaisernetwork.org. 2010年1月22日閲覧。


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