遺伝的浮動とは? わかりやすく解説

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いでんてき‐ふどう〔ヰデンテキ‐〕【遺伝的浮動】

読み方:いでんてきふどう

生物個体群において、適応とは無関係に、ある形質にかかわる遺伝子無作為に選択され次世代に伝わる遺伝子頻度変動すること。比較個体数少ない集団内で生じる。遺伝子浮動機会的浮動


遺伝的浮動


遺伝的浮動

同義/類義語:ライト効果
英訳・(英)同義/類義語:genetic drift, random genetic drift

集団遺伝学で、集団中の遺伝子構成確率的に変動すること。

機会的浮動

同義/類義語:遺伝的浮動
英訳・(英)同義/類義語:random drift, random genetic drift

集団遺伝学で、集団中の遺伝子構成確率的に変動すること。
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現象や動作行為に関連する概念:  概日リズム  構成的造血  標的突然変異  機会的浮動  機械的消化  機能的制約  正の選択

遺伝的浮動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/17 10:03 UTC 版)

遺伝的浮動のシミュレーション。ある一つの対立遺伝子について、異なる集団サイズ別に、50世代にわたる10回のシミュレーション結果を示している。シミュレーション条件は、集団サイズ, nが上から、n=20, 200, 2000. 対立遺伝子の初期頻度が0.5. これらの結果を見ると、対立遺伝子が集団から除かれる(頻度が0の場合)、あるいは、集団に固定する(頻度が1の場合)ことは、集団サイズが最も小さいシミュレーションでのみ起こっている。

遺伝的浮動(いでんてきふどう、genetic drift)とは、無作為抽出の効果によって生じる、遺伝子プールにおける対立遺伝子頻度の変化である。[1]機会的浮動ともいう。この対立遺伝子頻度の変化には自然選択の効果は含まれていない。

具体的には、ある子世代における対立遺伝子(allele)は親世代の対立遺伝子からの無作為抽出で決定される、生物学的なモデルを考える。このモデルが仮定していることを現実的に解釈すると、「個体が生殖可能年齢まで生き残り、繁殖に成功するか否かはすべて偶然によって決定されている」ということである。この仮定においては、自然選択や性選択などの効果は無視されている。

この無作為抽出による手順が、子世代から孫世代、さらに曽孫世代・・・と繰り返されるとき、生物集団中の対立遺伝子頻度(allele frequency)はランダムに増減する。このランダム性により、遺伝的浮動は集団から遺伝的変異を取り除く。すなわち、集団中の遺伝的多様性を減少させる効果を持つ。この効果は集団が小さいとき強くなり、集団が大きいとき弱くなる。

遺伝的浮動を含む、中立説進化における重要性については、自然選択説と対比され、激しい論争を引き起こした。

進化との関係

遺伝的浮動は、小規模な交配集団の遺伝子頻度に特に大きな影響をもたらす。その典型的な例として、ボトルネック効果創始者効果が挙げられる。前者では一時的な個体数の減少、後者では個体群の隔離によって、集団サイズが小さくなった状況を想定する。このような集団では遺伝的浮動による遺伝子頻度の変動は、ときには集団内からのそれらの遺伝子の偶発的な消失を招く。いったん集団から消失した遺伝子は当然ながら後代に受け継がれることはない。このため、その集団の見かけ上の遺伝子の進化速度が速まることになる。

中立進化説

中立進化説では、生物の生存に有利でも不利でもない遺伝子の変化、すなわち遺伝的浮動が分子レベルでの進化の主因であると考える。

数学的モデル

理想集団における対立遺伝子頻度変化を遺伝的浮動の数学的モデルとして記述するとき、分岐過程や拡散方程式が用いられる。 [2]

Wright–Fisher モデル

ある遺伝子座には2つの対立遺伝子, A, aがあり、各々の頻度をp, qとする。N個体からなる二倍体生物の集団にを考えると、遺伝子のコピー総数は2Nであり、一個体がもつ2つの遺伝子の組み合わせは、ホモ接合の場合とヘテロ接合の場合が考えられる。シューアル・ライトロナルド・フィッシャーが名づけたWright–Fisher モデルとは、世代が重複しない(例えば、一年生植物)、かつ、子世代に出現する遺伝子のコピーは親世代の遺伝子プールからの無作為抽出であると仮定したモデルである。

このモデルにおいて、子世代集団中で対立遺伝子Aがkコピー得られる確率を表す式は、

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関連項目

外部リンク


遺伝的浮動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/06 09:22 UTC 版)

進化」の記事における「遺伝的浮動」の解説

遺伝的変異なかには適応度に全く、あるいはごくわずかしか影響しないものも多い。その場合には、遺伝子頻度ランダムに確率的に変動することになる。また適応度影響する場合でも、確率的な変動影響は受ける。このランダムな遺伝子頻度変化を遺伝的浮動という。遺伝的浮動はとくに数の少な個体群において重要である。そのため、少数個体新し生息地移住して定着した場合遺伝子頻度大きく変化することがあり、これを創始者効果という。 木村資生は、遺伝子レベル進化においては遺伝的浮動が重要であると指摘した分子進化の中立説)。分子進化の中立説は、塩基配列データをよく説明できる表現型レベルでも、適応度上中立な変化であれば遺伝的浮動によって進化することはありうるが、実際にほとんどない考えられている(ただし、表現型分子それぞれにおいて、浮動選択がどの程度重要かについては議論がある)。

※この「遺伝的浮動」の解説は、「進化」の解説の一部です。
「遺伝的浮動」を含む「進化」の記事については、「進化」の概要を参照ください。

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