遺伝的比較とは? わかりやすく解説

遺伝的比較

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:52 UTC 版)

琉球民族」の記事における「遺伝的比較」の解説

以下は遺伝子研究による、九州以北日本本土住民南西諸島奄美群島以南)の住民との比較である。ただし、遺伝的な近さ遠さ民族概念と必ずしも一致するものではない(日本人ユダヤ人参考のこと)。 最近遺伝子研究沖縄県民九州以北本土住民は、縄文人基礎として成立し現在の東アジア大陸部主要な集団とは異な遺伝的構成であり、同じ祖先を持つことが明らかになっている。また、中国南部及び東南アジア集団とは地理的に近く昔から活発な交易おこなわれており、九州以北日本本土住民違いその影響があったと考えられていたが、遺伝子研究から中国台湾集団とはかなり離れていることが判明している。九州以北日本本土住民との近縁と共にそれを介して北海道アイヌ民族との近縁性も指摘されている。父系遺伝子Y染色体ハプログループD1a2aを持つのは世界で本土日本アイヌ民族及び沖縄のみであり、近隣台湾中国韓国には全く見られず、中国台湾住民のものとは大きく異なっている。世界的にも珍しいY染色体ハプログループD1a2a系統日本人では30%~40%、アイヌでは90%、沖縄本島では50%の人が有しており、この点で日本本土との関係が深い。 高宮広士(鹿児島大学)は、沖縄島々人間適応できたのは縄文中期後半から後期以降であり、農耕をする集団移住したのは古代から中世にかけての10世紀から12世紀頃で、九州から沖縄移住した指摘している。考古学などの研究含めて南西諸島住民先祖は、九州南部から比較新し時期10世紀前後)に南下して定住したものが主体であり、それまで居住していた奄美・沖縄諸島先島諸島の2グループ先住民に取って代わったと考えられている。これらのことから九州以北とは遺伝的人類学的にみても明瞭な境界線を引くことは難しい。 政治的な人種論対す批判として指摘されることは、日本列島住民複数人種混血であり、その混血度は地域によって異なることである(沖縄県民含めた日本人他国比べれば混血度は少ないとされる)。 これら以外にも記録史跡から、中国大陸方面からの移民の子孫や、15世紀大交易時代名残からフィリピン系、スペイン系との混血などのルーツを持つ住民存在し、またアメリカ合衆国による沖縄統治時代生まれたアメリカ系との混血も多い。 2008年理化学研究所ゲノム医科学研究センターが、日本全国(含沖縄県、除中国四国地方7000人のゲノム中にある14箇所一塩基多型統計的に解析したところ、ゲノム特徴の点で7000分の標本は「本土クラスタ」と「琉球クラスタ」に明確に分かれることがわかった。特に3番染色体組織適合抗原HLA)の遺伝子大きなちがいがみられ、ゲノム医科学研究センターは、その違い原因両人類集団のいずれか過去経験した何らかの感染症有無ではないか推測した。さらに2012年ごろには、日本列島人類集団遺伝学コンソーシアムが、北海道平取町在住沖縄在住東京在住北京在住漢族イバダン在住ヨルバ族ユタ州在住西欧系といった複数人類集団それぞれ属す人々ゲノム100万箇所一塩基多型統計的に解析したところ、アイヌ人からみると琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり、両者中間位置する本土人は、琉球人に次いでアイヌ人に近いことが示された。また、本土人からみると琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり、日本列島人(アイヌ人琉球人、本土人)は、現在の東アジア大陸部主要な30人類集団とは異な遺伝的構成であることも示された。琉球弧を含む日本列島人のルーツ説明する仮説としては、ベルツなどが提唱した「もともと縄文系の人々住んでいたところに弥生人が後から大陸経由でやってきたが、沖縄北海道アイヌ)の人々本土人々とあまり交流がなかったために異な集団となった」とする二重構造説存在するが、21世紀前半比較新しい研究手法用いてなされた研究によるこれらの結果も、二重構造説矛盾しない2014年9月17日琉球大学大学院研究グループが、琉球列島沖縄本島だけでなく、八重山宮古地方も含む)の人々遺伝情報広範に分析した結果台湾大陸集団とは直接遺伝的つながりはなく、日本本土由来する事がわかったとモレキュラーバイオロジーアンドエボリューション(英語版)に発表したまた、琉球民族」にはATLのレトロウイルスHTLV-1)が日本列島内でも高頻度観察される事から、縄文人の血が濃く残っていると考えられる2018年国立遺伝学研究所発表した核DNA分析における遺伝子研究による民族遺伝的分布において、アイヌ本土沖縄は共に父系縄文人に持つ同一円内と判明し、他の東アジアとは別種であることが確認された。 Watabe et al. (2020)による47都道府県日本人11,000名の全ゲノムSNP遺伝子型データ解析では、沖縄県人々は他の都道府県大和民族)とは別のクラスター形成することが明らかになった。 Nishikawa & Ishida (2021)では、琉球のうち奄美については、その地理的位置歴史反映して遺伝的に本土住民沖縄住民中間位置することが明らかになった。 2021年11月10日マックス・プランク人類史科学研究所中心とした、中国日本韓国ヨーロッパニュージーランドロシアアメリカ研究者を含む国際チームが『ネイチャー』に発表した論文によると、宮古島市長墓遺跡先史時代人骨DNA分析したところ「100%縄文人」だったことが分かり先史時代先島諸島人々沖縄諸島から来たことを示す研究成果となったまた、言語学および考古学からは、中世グスク時代11世紀~15世紀)に九州から「本土日本人」が琉球列島移住したことが推定でき、高宮広土(鹿児島大学)は、「結果として琉球方言の元となる言語有した農耕民が本土から植民した著名な日本人二重構造論』を否定するという点で大変貴重だ」と指摘している。

※この「遺伝的比較」の解説は、「琉球民族」の解説の一部です。
「遺伝的比較」を含む「琉球民族」の記事については、「琉球民族」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「遺伝的比較」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「遺伝的比較」の関連用語

遺伝的比較のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



遺伝的比較のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの琉球民族 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS