人種学
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すでに述べたように自民族を高貴な民族とみなす考え方は8世紀の『サリカ法典』にもみられるが、1434年のバーゼル公会議でスウェーデンのラーグヴァルトッソン司教が述べた「スウェーデン王国は最も古く高貴な王国であり、スカンディナビアは人類発祥の土地である」という発言には近代的な人種主義的ナショナリズムの萌芽がみられる。 16世紀後半、ドミニコ会の哲学者ブルーノは、インディアン、エチオピア人、ネプチューンの洞窟の住民、ピグミー、巨人は、人間と同じ出自ではなく、神の創造したものではないとした。 マラーノのアイザック・ラ・ペイレールは1655年の『前アダム人』で、聖書はユダヤ史のみを取り扱っているにすぎず、アダム以前に数百万の前アダム人がおり、またユダヤ史は「アダムからイエスまでの選びの時代」と「イエスから17世紀までの排除の時代」であったとし、その後にユダヤ人の復活の時代が訪れ、ユダヤ人(アダム人)以外の民も含めた万人が救済されるとした。 1689年、哲学者ジョン・ロックは『人間知性論』において、子供が人間の観念を形成する際に周囲の白人の肌色から白色が人間という複雑な観念の内の単純観念の一つとなるので黒色のニグロは人間ではないと判断する、と論じた。 ライプニッツは『人間知性新論』で「動物の習性とも見なしうるほどの残忍さにみちたアメリカの蛮人の習慣を認めるには、彼らと同じほど愚鈍でなければならない」と述べた 博物学者ジョン・レイは、色の違う花が異なる種に属すように、ニグロとヨーロッパ人は異なる種に属すと論じた スウェーデンの博物学者リンネは1735年の『自然の体系』で人間を4つに分類し、白いヨーロッパ人は発明の才に富み、法によって統治され、赤いアメリカ人は自由で短気で習慣によって統治され、黄色いアジア人は高慢で貪欲で世論によって統治され、黒いアフリカ人は無気力で主人の恣意的な意志によって統治されているとし。 ヒュームは1742年、黒人などの白人以外の文明化されていない人種は、白人種のような独創的な製品、芸術、科学を作り出せないとし、非白人による文明民族は存在したことはないとした。 科学者モーペルテュイは、黒人から白い子供が突然生まれるのに対して、その逆はないことから、人間の最初の色は白であると論じた。 ドイツの哲学者G.F.マイアーは、最初の人間アダムは脇腹にすべての人間をたずさえ、その中のアブラハムの精子にはすべてのユダヤ人が含まれていたとした 解剖学者メッケルは1757年にニグロを解剖した結果、彼らの脳も血液も黒いため、白人とは別の人種であるとした。解剖学者カンペルは、ユダヤ人には色の黒いポルトガル系や、白いチュートン系もいて、皮膚の色が違っても始祖は同じアダムであり、ニグロも人間であるとメッケルを批判した。カンペルはヨーロッパ人、カルムイク人(蒙古人)、ニグロ、猿の順に「顔面角」が減少していくとした。 博物学者ビュフォンは『博物誌(1749-1788)』において、ロバが退化した馬であり馬に属するようにニグロは人間に属する、あるいは、白人が人間であるとすれば、ニグロは人間でなく猿のような別の動物であるとした。 ヴォルテールは、ニグロが猿より優れているように、白人はニグロより優れているとし、ニグロは猿との性交から生まれた怪物の種であるとした カントは1764年の『美と崇高との感情性に関する観察』で「アフリカの黒人は、本性上、子供っぽさを超えるいかなる感情も持っていない」し、また東洋の住民は誤った趣味を持っているのに対して、ヨーロッパ人は美と崇高の正しい趣味を作り上げ、世界市民 (コスモポリタン)の人倫的感情を高めたと論じた。カントは1777年の「様々な人種について」では人間は共通の祖先を持つとしたが、『自然地理学』(1756-96年)で白色人種によって人類は最大の完全性に到達するとした。 1799年、医者チャールズ・ホワイトは白いヨーロッパ人は人類の最も見事な産物であり、ヨーロッパ人以外にこれほど美しい頭の形、これほど大きな頭脳をどこに見出すことができるだろうかと書いた。 エドワード・ロングは、ヒト種を、ヨーロッパ人、ニグロ、オランウータンの3つに分けて、白人とニグロの混血児もニグロとオランウータンの混血児も生殖能力を持たないとした。 クリストフ・マイナースは「美しい白人種」と「醜い黒人種」の二つに分け、白人、特にケルト民族だけが真の勇気などの美徳を持っており、黒人は無情で無感覚な恐ろしい悪徳を持っているとした。 >> 「近代人種学」へ
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