人種 人種を知覚する人間の認知能力

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人種

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/12 07:40 UTC 版)

人種を知覚する人間の認知能力

人種差別や人種に基づいたステレオタイプ視は意識的に抑制できるが、人種の認識は自動的に無意識に行われるようである。なぜ人間は人種に敏感なのかを説明する仮説は大きく分けると三つある。石器時代の祖先の頃は、他の人種と出会うことはまず無く、従って人種を見分ける能力は他の能力の副産物であると考えられる[13]

  1. 色や形を見分ける視覚能力が肌の色を感知するだけであり、人種概念は実在しない社会構築物に過ぎない。
  2. 人種の認識は自然の物体を区別する本質主義的で生得的な推論システムの副産物である。本質主義的な推論システムとは、例えば無機物と動物と植物を区別し、それぞれに共通の特性(例えば動物なら動く、逃げる、襲いかかってくる)があると理解する専門化された認知能力のことで、外見が異なる人には異なる本質が存在すると直観する。
  3. 人種の認識は連合や協力のために進化した計算機的メカニズムの副産物である。

実験によれば、無意識に人種で人を区別するが、他に顕著な目印があるとそちらに注目し、人種によるカテゴリ化が行われなくなるようである(対照的に性別によるカテゴリ化は根強く残った)[26]。また同じチームを応援するなどの共通点がある場合には、人種的な偏見やステレオタイプ視は弱まるようである。

行政的な概念としての人種

アメリカ食品医薬品局は2005年、特定人種用医薬を承認した。認可された薬バイディル英語版はアフリカ系アメリカ人専用の心不全治療薬として喧伝されたもので、患者個人の特定遺伝子に働くようデザインされた医薬を目指すオーダーメード医療時代に向けた第一歩として,FDAはこの承認を広くアピールした。もっとも、この薬は人種関係なく処方されている二つのジェネリック薬の合剤であり、しかもいかなる遺伝子との相関も見つかっていないし、他の人種と比べて,バイディルがアフリカ系アメリカ人によく効いたり,違った効果を発揮したりすることを裏づける確かな証拠はない。[27]。結局発売元のNitroMed社は2008年に、発売を中止した[28]

人種や民族の相違・混同

「人種」と「民族」という概念の相違・混同から、以下のような事例が存在する。

ユダヤ人
ユダヤ人はセム系とされ『旧約聖書』等の記述は人種概念を形成する際に大いに利用された。しかし、現代イスラエル国家は"ユダヤ人は人種を問わずユダヤ教の信仰を中心としたユダヤ文化を共有する民族の総称にすぎない"としている。イスラエルに「移住」するユダヤ人には様々な人種が含まれている。
日本人
日本人については、長谷部言人が「日本人種」の存在を主張した事もあるが、学会の主流をなす意見では、日本人という人種は存在せず、日本人という言葉は日本国籍を持つ日本国民の事を指す。
人食い人種
人食いを行う民族のことであり、人食い人種と呼ばれる人々は、ここで定義される人種ではない。



  1. ^ a b c d e f g h i 精選版 日本国語大辞典小学館
  2. ^ 人種は生物学的な亜種ではなく、現生するヒトは、遺伝的に、種や亜種に値する程の差異は存在しないとされる。この場合の「種」は、生物学の概念としての「種」と混同してはならない。英語では、生物学的な「種」は speciesであり、人種はraceであり、両者はまったく異なる単語である。にもかかわらず、日本語では同じ「種」という訳語が採用されているので、両者が混同されやすい。生物学における「種」が適応されるのは、ホモ・サピエンス全体であり、そこには現生人類に加えて、ネアンデルタール人なども含まれる。「人種」の「種」が意図しているのは、あくまでも現生人類を、さらに細かく形質的特徴によって区分する試みである。しかも、この区分の基準は、時代や社会によって異なる流動的なものであることに留意する必要がある。
  3. ^ 岩波生物学辞典 第四版
  4. ^ スターン, C『人類遺伝学』田中克己訳、岩波書店、1952年。原著The Principles of Human Geneticsは、ドイツ生まれのアメリカの遺伝学者カート・スターン英語版の1949年の著作。
  5. ^ 他の生物における亜種に該当する。
  6. ^ 竹沢泰子人種とは何か考える
  7. ^ 竹沢泰子『人種概念の普遍性を問う』他
  8. ^ 「19世紀フランス人種思想のなかのアラブ人」杉本淑彦、2004年、『フォーラム 白人性と帝国』
  9. ^ 福澤諭吉『掌中萬國一覧』1869年
  10. ^ Carleton S. Coon, The Origin of Races, 1962.
  11. ^ 浦野茂「類型から集団へ」『概念分析の社会学─社会的経験と人間の科学』酒井泰斗, 浦野茂, 前田泰樹, 中村和生、ナカニシヤ出版、2009年。
  12. ^ クロード・レヴィ=ストロース 荒川幾男訳 (2008) [1952]. 人種と歴史 (新装版). みすず書房 
  13. ^ a b Leda Cosmides,John Tooby,Robert Kurzban Perceptions of race TRENDS in Cognitive Sciences Vol.7 No.4 April 2003
  14. ^ 斎藤成也人種よさらば
  15. ^ 竹沢泰子『人種概念の普遍性を問う』他
  16. ^ 山口敏「「人種」は虚構か」自然史学会連合 エッセイ
  17. ^ スティーブン・ピンカー 『人間の本性を考える 下』 第8章 「もし生まれついての差異があるのならば……」
  18. ^ High resolution of human evolutionary trees with polymorphic microsatellites. Nature 368,455-457
  19. ^ SCIENCE VOL 319 Worldwide Human Relationships Inferred from Genome-Wide Patterns of Variation
  20. ^ “Special Feature: The Neandertal Genome”. Science (アメリカ科学振興協会). (5 2010). http://www.sciencemag.org/special/neandertal/ 2010年8月12日閲覧。.  アブストラクト和訳PDF
  21. ^ Yuan, Dejian; Lei, Xiaoyun; Gui, Yuanyuan; Wang, Mingrui; Zhang, Ye; Zhu, Zuobin; Wang, Dapeng; Yu, Jun et al. (2019-06-09). “Modern human origins: multiregional evolution of autosomes and East Asia origin of Y and mtDNA” (英語). bioRxiv: 101410. doi:10.1101/101410. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/101410v6. 
  22. ^ Chen, Hongyao; Zhang, Ye; Huang, Shi (2020-03-11). “Ancient Y chromosomes confirm origin of modern human paternal lineages in Asia rather than Africa” (英語). bioRxiv: 2020.03.10.986042. doi:10.1101/2020.03.10.986042. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.10.986042v1. 
  23. ^ 崎谷満(2009)『新日本人の起源』勉誠出版
  24. ^ 崎谷満(2009)『DNA・考古・言語の学際研究が示す 新・日本列島史』勉誠出版
  25. ^ The Evolution of Human Genetic and Phenotypic Variation in Africa
  26. ^ Robert Kurzban, John Tooby, and Leda Cosmides Can race be erased? Coalitional computation and social categorization
  27. ^ Jonathan Kahn (August 2007). “Race in Bottle”. SCIENTIFIC AMERICAN. https://nikkeibook.com/science/english_read/bn200711.html. 
  28. ^ Kaiser Health Disparities Report: A Weekly Look At Race, Ethnicity And Health, Science & Medicine NitroMed To End Promotion of Heart Failure Medication Specifically Approved for Blacks”. kaisernetwork.org. 2010年1月22日閲覧。


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