バリアフリー バリアフリーの概要

バリアフリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/19 07:00 UTC 版)

定義

もとは建築用語で障害のある人が生活上障壁となるものを除去する意味で使用されていた[1]。その後、バリアフリーの意味は広くなり、すべての人にとって社会参加する上での物理的、社会的、制度的、心理的な障壁の除去という意味で用いられている[1]

バリアフリーは建築物などに存在する障壁を除去する意味で用いられていたが、ロナルド・メイスによってはじめから多くの人が利用しやすいものとするユニバーサルデザインが提唱され、駅などの触知案内板や音声案内、パソコンの読み上げ機能などもユニバーサルデザインに含まれる[1]

「設備やシステムが、広く障がい者や高齢者などに対応可能であること」を指して「バリアフリー」と言うのは、主にアジアやヨーロッパなどの非英語圏で見られる用法で(例えばドイツでは「Barrierefreiheit」と呼ばれる)、アメリカやイギリスなどの英語圏では「アクセシビリティ」(accessibility)と呼ぶ。それに対して、英語圏で「バリアフリー(barrier free)」と言うと、単に建物の段差を取り除くことなどのみを示すわけではない。

歴史

  • 1974年6月 バリアフリーデザインに関する専門家会議(国連障害者生活環境専門家会議)において、報告書『バリアフリーデザイン』が作成され、これがバリアフリーと言う言葉(この時点では単なる建築用語であり、建物などのハード面を指していた[2])の知られるきっかけとなった。
  • 1982年、前年実施された「国際障害者年」を受け、国連総会において『障がい者に関する世界行動計画』が採択される[3][4]
  • 1987年 イタリア政府が国連で障がい者の権利を守る国際条約の提案を行う。
  • 1989年 スウェーデン政府が国連で障がい者の権利を守る国際条約の提案を行い、この提案が『障害者の機会均等化に関する基準規則』として採択される。
  • 2001年 メキシコ政府が国連で国際条約の提案を行う。
  • 2001年 国連総会で障がい者の権利条約の設置がされる。
  • 2006年 国連総会で障がい者の権利条約として『障がい者の権利、尊厳の保護、促進に関する包括的、総合的国際条約』が採択される。

物理上の改善

バリアフリーは最初は建築物の段差解消などの意味で用いられた[1]

具体的には、施設面(特に公共施設)では

  • 車椅子利用者向け
  • 視覚障害者向け
    • 点字
      • 点字ブロック (点字ブロックは歩行困難者や車椅子使用者にとってはバリアになる問題点が指摘され、段差凹凸の低いものが開発実用化されてきている)
    • 容器・包装の改良(ユニバーサルデザインも参照)
      • 牛乳パックの上部の切欠き(日本農林規格及び日本工業規格)
      • ラップフィルムの紙箱の凹凸の「W」マーク(業界団体・家庭用ラップ技術連絡会)
      • シャンプー容器の側面の刻み(業界団体・日本化粧品工業連合会)
    • 音響式信号機(盲人用押しボタン(歩行者用信号機の青の点灯時間が長くなる)が併設されているケースがある)
    • 玄関・入口近くでの電子チャイム(盲導鈴
    • コントラストの強い公共表示(弱視者のため)
  • オストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)向け
    • オストメイト対応トイレ
  • 子供を持つ保護者などに対する配慮
    • ベビーチェア(トイレを保護者が使用している間に、子供が暴れたりしないように座らせる椅子。ベビーキープとも称される[5]。)
    • ベビーベッドベビーシート(乳児のオムツ交換のために座らせる設備)
    • 授乳室
  • その他(内部障害など)[6]
    • 歩きたばこの禁止とその表示(携帯用酸素ボンベへの引火などの危険がある)
    • 携帯電話使用禁止とその表示(総務省の基準では15センチメートル程度以上離すとされる)
    • 施設の禁煙化とその表示(肺に障害がある場合、タバコの煙が症状を悪くする)
    • 小便器近傍への手すり設置
    • 玄関・入口・トイレへの呼出し用インターホン

などを指す。


  1. ^ a b c d ユニバーサルデザインの考え方の整理について”. 府中市. 2021年11月8日閲覧。
  2. ^ 神奈川県立生命の星・地球博物館、博物館検討シリーズ(II)―生命の星・地球博物館開館三周年記念論集―ユニバーサル・ミュージアムをめざして―視覚障害者と博物館―、博物館のより良きバリアフリー施策を目指して、閲覧2017年9月6日
  3. ^ 「障害者に関する世界行動計画」についての国連総会決議”. 一般財団法人全日本ろうあ連盟. 2013年11月4日閲覧。
  4. ^ 障害者に関する世界行動計画と国連障害者の10年”. エンパワメント研究所. 2013年11月4日閲覧。
  5. ^ ベビーキープ対応トイレのご案内”. 新宿御苑. 一般財団法人国民公園協会 (2018年10月25日). 2022年3月13日閲覧。
  6. ^ 障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック”. 名古屋市 (2015年3月). 2022年3月13日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 和平好弘. “ヨーロッパにおける交通のバリアフリー”. 2021年11月8日閲覧。
  8. ^ 車イス乗車 また大もめ バス35台が運休 乗客ら実力排除も『朝日新聞』1977年(昭和52年)4月13日朝刊、13版、23面
  9. ^ 人にやさしいまちづくり事業”. 国土交通省. 2013年11月4日閲覧。
  10. ^ 事業の目的”. 国土交通省. 2013年11月4日閲覧。
  11. ^ 内閣府<言語バリアフリー化調査事業>”. 内閣府 (2012年3月7日). 2013年11月4日閲覧。
  12. ^ 復興へ付け替え横行 省益優先 予算奪い合い”. 東京新聞. 2012年10月18日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年11月4日閲覧。


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