国際シンボルマークとは? わかりやすく解説

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国際シンボルマーク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/07 09:55 UTC 版)

国際シンボルマーク

国際シンボルマーク(こくさいシンボルマーク、障害者のための国際シンボルマークISA: 英語: International Symbol of Access)は、広く各種障害のある(障害者に限らず高齢者やケガ人なども含む)[1]人々が利用できる建築物施設であることを示す世界共通のピクトグラムである[2][3]

概要

四角車椅子に人が乗っている様子がデザインされており、俗に車椅子マークとも呼ばれるが、車椅子使用者や肢体不自由者のみならず全ての障害者を対象としている[4]

国際リハビリテーション協会英語版(RI)の委員会である「機器とアクセシビリティーに関する国際委員会」(ICTA)によって維持され[5]、国際規格ISO 7001(公共情報シンボル)にも採用されている。日本国内では1983年に図形が商標登録され[6]公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会により管理されている[7]

内閣府では英語の"International Symbol of Access"に近い「障害者のための国際シンボルマーク」と表記しているが[8]、図形の商標権を持つ日本障害者リハビリテーション協会では"of Access"を抜かして「国際シンボルマーク」と呼称している。

機能

ISAは、特に車椅子利用者のためのアクセスが改善された場所でよく見られるが、その他の障害を持つ人に対する改善が行われた場所でも使用される[9]。高齢者、ベビーカーを使用する親、旅行者など助けるための環境障壁(段差など)の除去を示すためにも頻繁に使用される[10]ユニバーサルデザインは、ほぼすべての利用者がアクセスできる製品や施設を作ることによって、最初からそのようなシンボルマークをつけなくても良くすることを目指している。

ISAは以下のような場合に使用される。

なお、障害者が利用できる建物・施設・車両等のためのマークであって、単に障害者が利用している車両を示すマークではない。そのような用途の場合、日本では身体障害者標識聴覚障害者標識などを使用する。

歴史

ISAは、1968年にデンマークの学生スザンネ・コエフォード(Susanne Koefoed)によってデザインされた。スカンジナビア学生組織(SDO)が設置した急進的デザイン会議で初めてスケッチされた[11]。このグループはストックホルムの芸術デザイン学校コンストファックで夏期の勉強会を開催し、ワークショップセッションと大規模な講義の時間を交互に行った。これらの講義では、アメリカのデザイナー・教育者であるビクター・パパネック英語版によって方針が打ち出された。彼がこの時期に行った執筆においても、身体・精神障害者を、新たな注意を必要とする人物として想定していた[12]。パパネックがコエフォードと出会ったという証拠はないが、彼の影響は最初にISAがデザインされたセミナーに広がった。コエフォードは、SDOセミナー終了後に開催された1968年7月の展示会で、このシンボルマークの初期のバージョンを発表した。コエフォードがデザインしたシンボルマークは、だれも乗っていない車椅子を表現したものだった。このシンボルマークは、翌年までにスウェーデン周辺で広く宣伝された[13]

スウェーデンの新しい身体障害者研究所所長のカール・モンタン(Karl Montan)も、このシンボルマークを国際リハビリテーション協会(RI)に推薦した。 RIの「機器とアクセシビリティーに関する国際委員会」(ICTA)委員長でもあったモンタンは、ダブリンで開催される1969年の大会のシンボルマークを策定する特別委員会をRIに依頼した[14]。モンタンのグループは6つのシンボルマークから選択するように求められた。コエフォードのシンボルマークが提示されたとき、何人かのメンバーは、それがあまりにも簡素で判読不能であると主張した。モンタンは「シンボルマークのわずかな不便さは、それが一様な太い線であることである。これにより、文字によるモノグラムのような印象を与えている。シンボルマークに「頭」が付いてれば、この不便は解消される。」[15]と述べた。そして、元のデザインに手を加えて、座席の上部に円形を追加し、人が座っているような印象を与えるようにした。

修正ISA

修正ISA

一部の障害者活動家は、ISAの修正を主張している。サラ・ヘンドレン(Sara Hendren)とブライアン・グレニー(Brian Glenney)はアクセシブル・アイコン・プロジェクト(AIP: Accessible Icon Project)を共同で設立し、新しいアイコンをデザインし、障害のある人に焦点を合わせた、よりアクティブでポジティブなものに変えようとしている[16]。インドのEnabling Unit英語版などいくつかの障害者団体はそれを支持している[17]が、Second Thoughts Connecticutなど、それを障害者差別だとして拒否している障害者団体もある[18]。この修正ISAは、アメリカのニューヨーク州コネチカット州で公式に使用されている[19][20]。修正ISAはニューヨーク近代美術館の常設展示の中にある[21]

2015年5月、アメリカ連邦高速道路局英語版は、道路標識に修正ISAを使用することを拒否した。これは、アクセシブルデザインのための連邦基準の策定を担当する米国アクセス委員会英語版によって、採用・承認されていないというのが理由である。国際標準化機構も、ISO 7001に修正ISAを採用することを拒絶した[22]

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+267F - ♿
♿
車椅子マーク

[23]

この文字を表示するためには、DejaVu Sans[24]などの対応フォントをインストールする必要がある。

脚注

  1. ^ 国際シンボルマークQ&A”. www.dinf.ne.jp. 日本障害者リハビリテーション協会. 2020年7月8日閲覧。
  2. ^ 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会HP内 - よくあるご質問と回答 - テキスト版
  3. ^ 国際シンボルマーク”. 障害保健福祉研究情報システム. 2017年7月14日閲覧。
  4. ^ 国際シンボルマークQ&AQ3を参照。
  5. ^ International Symbol of Accessibility”. 国際リハビリテーション協会. 2016年9月7日閲覧。
  6. ^ 登録1562455
  7. ^ 国際シンボルマークについて
  8. ^ 障害者に関するマークについて内閣府
  9. ^ Ben-Moshe, L. and J. J. W. Powell (2007). Sign of our Times: Revis(it)ing the International Symbol of Access, Disability & Society 22(5): 489–505.”. 2009年11月22日閲覧。
  10. ^ Powell, J. J. W. and L. Ben-Moshe (2009). The Icons of Access: From Exclusion to Inclusion. Stimulus Respond "icon" issue, Autumn 2009: 90–95.”. 2009年11月22日閲覧。
  11. ^ Guffey, Elizabeth, "The Scandinavian Roots of the International Symbol of Access, Design and Culture, 7:3, pp 357-376
  12. ^ Papanek, Victor, Design for the Real World. New York: Pantheon books, 1971
  13. ^ Guffey, op cit, p. 371.
  14. ^ Rehabilitation International – Symbol of Access
  15. ^ International Committee on Technical Aids (1969) Symbol of accessibility (Stockholm, ISRD-ICTA)
  16. ^ “Wheelchair icon revamped by guerrilla art project”. The Boston Globe. https://www.bostonglobe.com/metro/2013/12/13/disability-icon-revamped-guerilla-art-project/HZDJAIORZvL68dukN9L0TL/story.html 
  17. ^ Medical Partners I The Accessible Icon Project”. 2013年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月14日閲覧。
  18. ^ “Proposal to Change Handicapped Parking Signs Gets Mixed Reaction From Disability Community”. CT News Junkie. (23 September 2015). http://www.ctnewsjunkie.com/archives/entry/proposal_to_change_handicapped_parking_signs_gets_mixed_reaction_from_disab/ 
  19. ^ Chokshi, Niraj (29 July 2014). “The handicap symbol gets an update — at least in New York state”. The Washington Post. http://www.washingtonpost.com/blogs/govbeat/wp/2014/07/29/the-handicap-symbol-gets-an-update-at-least-in-new-york-state/ 13 May 2015閲覧。 
  20. ^ http://portal.ct.gov/Departments_and_Agencies/Office_of_the_Governor/Press_Room/Press_Releases/2016/06-2016/Gov__Malloy_Announces_Modernized_Symbol_and_Language_to_be_Phased_in_on_New_Reserved_Parking_Signs/
  21. ^ “Museum of Modern Art”. http://www.moma.org/collection/object.php?object_id=174887 
  22. ^ Interpretation Letter 2(09)-111(I)”. 2017年7月14日閲覧。
  23. ^ The Unicode Standard, Version 5.0”. The Unicode Consortium. pp. 211 (2006年). 2007年7月26日閲覧。
  24. ^ WHEELCHAIR SYMBOL (U+267F) Font Support”. FileFormat.info. 2007年7月26日閲覧。

外部リンク


国際シンボルマーク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 07:12 UTC 版)

身体障害者標識」の記事における「国際シンボルマーク」の解説

上記身体障害者標識よりも古く1969年)から使われ圧倒的に認知度がある、いわゆる車椅子マーク」こと、「(障害者のための)国際シンボルマーク、International Symbol of Access」は、広く各種障害のある(障害者限らず高齢者ケガ人なども含む)人々利用できる建築物施設であることを示す、世界共通のピクトグラムである。 日本国内では公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会商標登録(第1562455号)を行って管理しており、車椅子意匠描かれているマーク障害者優先駐車スペース優先席車椅子などの利用考慮した多目的トイレなどに広く用いられている。しかし「車いす使用者だけ、あるいは肢体不自由者だけを対象としている」という誤解は多い。 あくまでも前記した通り障害のある人々の利便図られ建築物施設視認性向上や、健常者配慮促すために用いるのであって設備装備の無い普通の車両貼り付けることは、このマークの本来の使用方法からは乖離したものであり、ましてや障害者を示すマークではない。 本来の使用方法として車両に当マーク掲示するのであるならば、手もしくは足のみで操作する運転補助装置装備した車両や、車椅子用のリフトスロープもしくは回転式シートなど障害緩和する何らかの設備装備され車両いわゆる福祉車両」や、車椅子高齢者などの乗降配慮した低床バスノンステップバス)などに限られる多く人々健常者も、なかには障害者自身も)が勘違いしていると思われる使用方法として、このマークを車に貼って、障害者優先駐車スペース利用しあたかもこのマーク免罪符あるかのような使用法なされている。しかし、このマーク自体にはなんら法的効果を無い。同財団ガイドラインによれば、「推奨しない行為ではあるが、このマーク障害有する者が乗車する車両掲示したとしても、車内障害をもった者がいるということ意味するに過ぎない」としている。いわば譲り合い円滑となるシンボルに過ぎないのである自治体によっては、障害者駐車スペース利用できることを明示するために車内掲示するステッカーを、ある一定の条件有する人向けに発行しているところがある。

※この「国際シンボルマーク」の解説は、「身体障害者標識」の解説の一部です。
「国際シンボルマーク」を含む「身体障害者標識」の記事については、「身体障害者標識」の概要を参照ください。

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