コウヤマキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2023/03/12 00:49 UTC 版)

名称

コウヤマキの学名のうち、属名の Sciadopitys は、ギリシア語の skias（日傘）と pitys（松）に由来し、輪生する葉を傘に見立てている^[19]^[22]。英名である Japanese umbrella pine の umbrella pine も同じ意味である^[19]。種小名（種形容語） verticillata は、「輪生する」を意味する^[22]^[43]。

単に「マキ（真木、槙、槇）」ともよばれる。マキは良い木、立派な木のことであり、コウヤマキの他にイヌマキ、スギ、ヒノキを意味することもある^[13]^[44]^[45]。コウヤマキを特に「ホンマキ（本槇）」とよんでイヌマキに対比させることもあるが、イヌマキを本槇とよぶこともある^[15]。現在標準的な和名である「コウヤマキ（高野槇）」は、和歌山県の高野山に多く生えていることに由来する^[30]。上記のようにコウヤマキは高野山との関わりも深い。

分類

コウヤマキは、コウヤマキ属の唯一の現生種である。種鱗と苞鱗が半分以上癒着しており、種鱗に多数の胚珠がつくこと、花粉や種子の形態的特徴から、スギ科^{[注 3]}に分類されることが多かったが、小胞子葉に2個の花粉嚢がつくこと、種鱗と苞鱗が一部2重になること、胚珠が倒生胚珠であることなどマツ科に似る点もあり、また特殊な葉の形態、材の構造、染色体数など特異な特徴も多く、独立のコウヤマキ科とされるようになった^[21]^[19]^[46]。その後の分子系統学的研究でも、コウヤマキは他の球果類（針葉樹）と系統的に離れていることが示され、独立の科とすることが支持されている^[19]^[2]。分子系統解析からは、コウヤマキ科はヒノキ科+イチイ科の姉妹群であることが示されている^[2]。

コウヤマキ科に関連すると考えられる化石記録は、後期三畳紀またはジュラ紀にさかのぼる^[22]^[19]（下表1）。白亜紀にはユーラシアから北米の北半球全体に広く分布し^[22]^[19]、また第三紀にヨーロッパに多く生育していたコウヤマキ類は現在利用されている褐炭の起源となった^[47]。しかし鮮新世以降ヨーロッパでは姿を消し、やがて日本のコウヤマキ1種のみが生き残った^[19]。そのため、コウヤマキは「生きている化石」ともよばれることもある^[22]。

表1. 化石属 (†) を含むコウヤマキ科の属 †Parasciadopitys X.Yao, T.N.Taylor & E.L.Taylor (1997) 三畳紀（南極）^[48] †Protosciadopityoxylon J.Schmalhausen (1879) ジュラ紀から白亜紀（中国）^[49]^[50] †Sciadopitophyllum D.C.Christophel (1973) 後期白亜紀から古第三紀暁新世（カナダ）^[51] †Sciadopitycutis W.Schneider (1969) 新第三紀中新世（ドイツ）^[51] †Sciadopityostrobus K.Saiki (1992) 後期白亜紀（北海道）^[52] †Sciadopityoxylon J.Schmalhausen (1879) ジュラ紀から第三紀（中国、ロシア、ドイツ）^[49]^[50] コウヤマキ属 Sciadopitys Siebold & Zucc. (1842) 後期白亜紀から現生 †Sciadopitytes H.R.Göppert & A.Menge ex T.G.Halle (1915) 前期白亜紀（カナダ）^[53] †Zhangoxylon ジュラ紀（中国）^[54]

脚注

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脚注

注釈

^ ヒノキ科、イチイ科などとともにヒノキ目に分類されるが^[2]^[3]^[4]、マツ科（およびグネツム類）を加えた広義のマツ目（Pinales）に分類することもある^[5]。
^ ^a ^b ^c ^d マキ、ホンマキ、クサマキがイヌマキ（マキ科）を意味することもある^[13]^[15]^[16]。
^ 2022年現在では、スギ科はヒノキ科に含められている^[2]。

出典

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