木部柔細胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 21:35 UTC 版)
木部に存在する柔細胞は木部柔細胞 (もくぶじゅうさいぼう、xylem parenchymatous cell) とよばれ、柔組織である木部柔組織 (xylem parenchyma) を形成している。木部柔細胞は、基本的に木部における唯一の生細胞である。柔細胞はふつう薄い一次細胞壁をもつが、木部柔細胞の細胞壁はときに肥厚し、単壁孔をもつものもある。木部柔細胞の主な機能は糖や樹脂、結晶などの貯蔵であり、ほかにも物質生産や物質輸送にも関わっている。 二次木部 (下記) の木部柔細胞には、多くの管状要素と同様に長軸方向に連なる軸方向柔組織 (axial parenchyma; 紡錘形柔組織 fusiform parenchyma) と、放射方向にならんだ放射柔組織 (ray parenchyma, radial parenchyma) がある。被子植物の軸方向柔組織は、道管とは独立して存在する独立柔組織 (apotracheal parenchyma) と、道管に接して存在する随伴柔組織 (paratracheal parenchyma) に大別される。放射柔組織の中には、縦に1列に並んだもの (単列放射組織 uniseriate ray) や、複数列に並んだもの (多列放射組織 multiseriate ray) がある (右図)。また放射柔細胞は、放射方向に長い平伏細胞 (procumbent ray cell)、長軸方向に長い直立細胞 (upright ray cell)、等径的な方形細胞 (square ray cell) に類別される。このうち1種類の細胞だけからなるものを同形放射組織 (homocellular ray)、複数の種類の細胞が混在するものを異形放射組織 (heterocellular ray) とよぶ。放射組織の分布様式に基づく区分もあり、同サイズの放射組織が均等に散在しているものは散在放射組織 (diffuse ray) とよばれる。一方、小型の放射組織が密集しているものは集合放射組織 (aggregate ray) とよばれ (ハンノキ属など)、さらに密集化して1個の大きな放射組織となったものは広放射組織 (broad ray; 複合放射組織 compound ray) とよばれる (コナラ属など;右図)。 木部柔細胞の中には、それぞれ特殊な物質を含む異形細胞 (周囲の細胞と極端に異なる形をした細胞) として油細胞 (oil cell)、結晶細胞 (crystalliferous cell)、多室結晶細胞 (chambered crystalliferous cell) などが存在することがある。例えばイチョウ (イチョウ科) の木部には、シュウ酸カルシウムの結晶を含む異形細胞が存在する。また二次木部では、軸方向または水平方向に分泌道 (secretory canal) がしばしば見られ、乳管 (latex tube) やタンニン管 (tanniferous tube) が存在することもある。球果類の木部では、エピセリウム細胞 (epithelial cell) とよばれる柔細胞で囲まれた細胞間隙が存在することがある。この間隙はエピセリウム細胞が分泌する樹脂で満たされ、樹脂道 (resin canal) とよばれる (右図)。
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