壁孔壁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/30 00:20 UTC 版)
ドイツトウヒ (マツ科) の仮道管の走査型電子顕微鏡像. 有縁壁孔を細胞外側から見たところ. 壁孔壁は中央が肥厚し (トールス)、周縁部がセルロース微繊維だけからなる (マルゴ). 左端で壁孔壁が一部はがれて内側の孔口縁が見えている. 有縁壁孔対において壁孔壁が一方へ押しやられて孔口を閉ざしている状態. 壁孔は壁孔壁で閉じられているが、この壁孔壁を通して水などが透過する。また木部柔細胞など壁孔をもつ生細胞では、壁孔壁を通して多数の原形質連絡が存在する。 壁孔壁は一次細胞壁からなり、また隣接する壁孔壁と接する部分には中葉 (中層;細胞間を接着させている部分でありペクチンを多く含む) が存在する。しかし壁孔の形成過程で、細胞壁の成分が部分的に分解されることもある。 球果類 (針葉樹) の仮道管に存在する有縁壁孔の壁孔壁には、トールスとマルゴとよばれる特異な構造が存在する (右図)。このような壁孔壁では中央部が円盤状に肥厚しており、トールス (torus) とよばれる。それに対して周縁部はセルロース微繊維 (ミクロフィブリル) のみが残った構造になっており、マルゴ (margo) とよばれる。マルゴの部分は通水の抵抗が少なく効率的な水輸送が行われる。また隣接する細胞が気泡で満たされるなどして大きな圧力差が生じると、壁孔壁が一方へ押しやられることになる。この際、トールスの部分が孔口の突出した縁に押し付けられて孔口が栓をされた状態になる (右図)。トールスは厚いため、隣接細胞からの気泡の侵入などを防ぐことができると考えられている (気泡形成は道管要素や仮道管の通水を阻害する;道管#木部輸送を参照)。このような壁孔の閉鎖は、被子植物でも見られることがある。 被子植物の道管では、一次細胞壁、中葉とも残された均質な壁孔壁をもつもの (トネリコ属など)、中葉を欠き周縁部で部分的にセルロース微繊維が疎なもの (ヤナギ科など)、中央部の肥厚 (トールス;上記) をもつもの (モクセイ科の一部など) などが知られている。また木部繊維では、壁孔壁に大きな孔があるものや、特異な肥厚が存在するものもある。
※この「壁孔壁」の解説は、「壁孔」の解説の一部です。
「壁孔壁」を含む「壁孔」の記事については、「壁孔」の概要を参照ください。
- 壁孔壁のページへのリンク