長周期地震動とは? わかりやすく解説

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ちょうしゅうき‐じしんどう〔チヤウシウキヂシンドウ〕【長周期地震動】

読み方:ちょうしゅうきじしんどう

地震発生する周期が数秒以上のゆっくりとした長い揺れ震源から遠くまで伝わり、特に平野部揺れる。高層ビルなどの大型構造物共振しやすく、従来免震構造制震構造では十分ではない可能性指摘されている。また、石油タンクなどでスロッシング生じ原因となる。周期が2〜5秒のものをやや長周期地震動数百秒以上のものを超長周期地震動という。→短周期地震動スロッシング長周期地震動階級


長周期地震動

長周期地震動

 地震の影響についての一般的な理解は「震源から遠ければ遠いほど、伝わるエネルギー小さくなり、被害軽微で済む」ということでしょう。ところが震源から数百キロメートル離れたところで高層ビル石油タンク大きな被害を受けることが最近わかってきました。それを引き起こすのが「長周期地震動」です。
 通常の震動とは異なり数十秒という長い周期揺れることからそう呼ばれます地震初期微動P波primary)に続いて揺れ大きな主要動S波secondary)が伝わりますが、長周期地震動はS波の後に伝わる、ゆったりとした揺れのことをいいます地表面沿って揺れが伝わるため「表面波」とも呼ばれます
 2003年発生した北海道十勝沖地震では、震源から約200キロメートル離れた大型石油タンク内の油が長周期地震動に共振して大きく揺れ、浮屋根破損させました。この現象スロッシング液面揺動)といいます。浮屋根最大メートル上昇したことが分かってます。石油タンク設備ぶつかった衝撃火花がおこり、火災発生しました2004年新潟県中越地震では、震源から約200キロメートル離れた東京都超高層ビルエレベーター6基が損傷受けてます。
 建物大きくなればなるほど、建物固有の揺れ周期長くなります。これに長周期地震動が加わると、長い周期揺れ重なり合い共振という現象起こりやすくなります高層ビル石油タンクが長周期地震動の影響を受けやすいのは、そうした理由によります
 2008年7月岩手県沿岸北部震源とする最大震度6強の地震起こりました震度の割に建物への被害軽微済んだのは震源100キロメートル超と深かったため、揺れ含まれる長周期地震動の成分少なかったことも理由一つといわれます。なぜ、震源が深いと長周期地震動の成分少なくなるかは科学的に究明されていません。
 この長周期地震動に対し産業界精力的に対策進めてます。2007年以降三菱電機日立製作所鹿島建設などが長周期地震対応したエレベーター地震管制運転システム」を相次いで発売しました大成建設既存超高層ビル向けの「長周期長時間地震動対策構法」を開発このほど都内超高層ビルから受注年内着工予定です。文部科学省2007年度からカ年研究プロジェクト首都直下地震防災・減災プロジェクト」をスタートこの中で「長周期地震動による被害軽減対策研究開発」に取り組んでいますが、同研究開発には大林組鹿島建設清水建設大成建設竹中工務店協力してます。
 防災対策の面から忘れてならないのは、震度小さ地震だからといって油断しないことです。震度は長周期地震動の大きさ測る尺度として適当ではないからです。震度大きければ長周期地震動が大きくなるといえば必ずしもそうではありません。震度小さくても長周期地震動が大きくなる場合もあるため、注意が必要です。



(掲載日:2008/08/21)

長周期地震動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 08:54 UTC 版)

長周期地震動(ちょうしゅうきじしんどう、英語: long-period ground motion、LPGM)とは、地震で発生する約2 - 20秒の長い周期で揺れる地震動のことである。周期が長い、すなわち低周波領域で発生するため低周波地震動とも。地震計の発展とともにその存在と性質が研究されるようになり、特に高層建築物が増えた近年は、防災の観点からも対策が重要となっている。


註釈

  1. ^ スロッシングによる事故は後述のとおり過去の地震動でも発生しているが、確認されたのは近年になってからである。この事故では早くに事象が確認され衆目を集めた。
  2. ^ 絶対速度応答(Sva)は、地面に対する高層階の揺れの推計された速度(相対応答速度)と地震による地表面の揺れの速度(地動速度)の和として定義される。絶対速度応答スペクトルは、地表や低層建物の一階に設置した地震計の観測データから、南北、東西、上下の3つの方向についてそれぞれ減衰定数5%で周期1.6秒から周期7.8秒までの範囲で算出した絶対速度応答のスペクトル分布である。3つのうち観測された最大のものを基準に照らし階級として発表している。

出典

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  2. ^ 東京大学地震研、地球自由振動:脈打つ地球
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  13. ^ 新潟県中越沖地震 - 強震動と長周期地震動 - 東大地震研 強震動グループ Ver.2.2
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  17. ^ 気象庁、長周期地震動階級1以上を観測した地震
  18. ^ “熊本震度7:余震100回超 長周期地震動、初の階級4も”. 毎日新聞. (2016年4月15日). http://mainichi.jp/articles/20160415/k00/00e/040/169000c 2016年4月16日閲覧。 
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  20. ^ 長周期地震動に関する観測情報(試行)”. 2018年9月7日閲覧。
  21. ^ 長周期地震動に関する観測情報(試行)”. 2018年9月7日閲覧。
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長周期地震動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/09 06:44 UTC 版)

薩摩半島西方沖地震」の記事における「長周期地震動」の解説

鹿児島県薩摩長周期地震動階級2を観測し佐賀県南部熊本県球磨階級1を観測した

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長周期地震動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 10:53 UTC 版)

千葉県北西部地震 (2021年)」の記事における「長周期地震動」の解説

各地観測された長周期地震動は以下の通り長周期地震動階級都道府県地域階級2千葉県 北西部 東京都 23区 階級1茨城県 南部 群馬県 南部 埼玉県 北部南部 千葉県 北東部南部 神奈川県 東部

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長周期地震動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 16:06 UTC 版)

熊本地震 (2016年)」の記事における「長周期地震動」の解説

4月14日2126分の発震からの一連の地震では、階級1以上の長周期地震動を2018年8月までに計13公表している。特に、最初の発震(4月14日2126分、M6.5)では階級3、その40分後の地震4月14日22時7分、M5.8)では階級2を記録、さらに翌15日深夜地震4月15日0時3分、M6.4)と、翌16日深夜最大規模となった地震4月16日1時25分、M7.3)では気象庁2013年3月に「長周期地震動に関する観測情報」の公開開始以来初めてとなる階級4を共に記録している。 4月16日0125分の地震(M=7.3)での長周期地震動階級階級地方地域階級4 九州 熊本県阿蘇熊本 階級3 九州 福岡県筑後大分県中部西部 階級2 関東 千葉県北西部 近畿 大阪府南部 中国・四国 鳥取県西部徳島県北部高知県東部西部山口県東部 九州 佐賀県南部長崎県北部島原半島熊本県球磨天草芦北大分県北部・南部宮崎県北部平野部北部山沿い南部平野部南部山沿い鹿児島県薩摩 階級1 関東 茨城県南部群馬県南部埼玉県北部南部千葉県北東部南部東京都23区神奈川県東部 中部 新潟県下越富山県東部西部石川県加賀福井県嶺北嶺南長野県中部・南部静岡県西部愛知県西部三重県北部中部 近畿 滋賀県南部京都府北部大阪府北部兵庫県北部・南東部・南西部淡路島和歌山県北部・南部 中国・四国 鳥取県東部中部島根県東部西部岡山県北部・南部広島県北部・南東部・南西部徳島県南部香川県西部愛媛県東予・中予・南予高知県中部山口県北部西部中部 九州 福岡県福岡北九州・筑豊佐賀県北部長崎県南西部壱岐鹿児島県大隅 出典: ただし気象庁事後的なデータ分析によって、2013年2月以前においても、2004年新潟県中越地震2011年東北地方太平洋沖地震東日本大震災)でも階級4当の長周期地震動が発生していたことが判明している。

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長周期地震動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 00:59 UTC 版)

小笠原諸島西方沖地震 (2015年)」の記事における「長周期地震動」の解説

この地震で長周期地震動を観測した階級地域階級2 埼玉県北部 千葉県北西部 東京都23区 八丈島 小笠原 神奈川県東部 長野県中部 階級1 宮城県北部 秋田県内陸南部 山形県庄内 山形県村山 福島県中通り 茨城県南部 栃木県南部 群馬県北部 群馬県南部 埼玉県南部 埼玉県秩父 千葉県北東部 千葉県南部 東京都多摩東部 神津島 新島 神奈川県西部 新潟県中越 新潟県下越 福井県嶺北 山梨県東部富士五湖 長野県北部 静岡県伊豆 静岡県東部 大阪北部 大阪府南部 佐賀県南部

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長周期地震動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 15:10 UTC 版)

福島県沖地震 (2022年)」の記事における「長周期地震動」の解説

宮城県北部では、長周期地震動階級4観測した長周期地震動階級都道府県地域階級4宮城県 北部 階級3宮城県 南部中部 山形県 村山 福島県 中通り浜通り会津 階級2青森県 津軽北部 岩手県 沿岸北部内陸北部内陸南部 秋田県 沿岸南部内陸南部 山形県 庄内最上置賜 茨城県 北部南部 栃木県 南部 千葉県 北東部北西部 東京都 23区 新潟県 中越下越 山梨県 東部富士五湖 長野県 中部 静岡県 東部 階級1北海道 石地方南部渡島地方東部後志地方東部空知地方中部胆振地方中東部、十勝地方中部根室地方中部 青森県 津軽南部三八上北下北 岩手県 沿岸南部 秋田県 沿岸北部 栃木県 北部 群馬県 北部南部 埼玉県 北部南部秩父 千葉県 南部 東京都 多摩東部 神奈川県 東部西部 新潟県 上越 長野県 北部南部 静岡県 中部西部 愛知県 西部

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長周期地震動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 02:20 UTC 版)

島根県西部地震」の記事における「長周期地震動」の解説

この地震島根県では長周期地震動階級2を、鳥取県では階級1を記録している。

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