部屋
★1a.四季の部屋。
『浦島太郎』(御伽草子) 浦島太郎は、放生した亀の化身である女に連れられて、龍宮城を訪れる。女は浦島と夫婦になり、四方に四季の草木を表す御殿を見せる。東の戸を開ければ春、南面には夏、西には秋、北には冬の景色があった。浦島は3年間、龍宮城で暮らした。
『源氏物語』「少女」 光源氏が35歳の8月に完成させた六条院は、四区画からなっていた。東南は春の町で光源氏と紫の上が住み、東北は夏の町で花散里、西南は秋の町で秋好中宮、西北は冬の町で明石の君が、それぞれ住んだ。
『神道集』巻4-17「信濃国鎮守諏訪大明神の秋山祭の事」 奥州の悪事の高丸の城郭内には四季の姿が現されており、浄土のごとくであった。
『神道集』巻10-50「諏訪縁起の事」 地底の維縵国には四季の門があり、東の門を開くと春の景色、南の門を開くと夏の景色、西の門を開くと秋の景色、北の門を開くと冬の景色が、それぞれ美しく見えるのだった。
『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)「季節カンヅメ」 ドラえもんとのび太が、季節カンヅメの詰め合わせをあけ、面白がって春のカンと秋のカンを隣家の庭に投げこむ。パパは夏が好き、ママは冬が好きなので、それぞれカンをあけ、互いに相手のあけたカンを隣家の庭に捨てる。おかげで隣家の庭では一時に桜が咲き蝉が鳴き、柿がなって木枯らしが吹く。
『風流志道軒伝』(平賀源内)巻之2 浅之進(後の志道軒)は若い頃、風来仙人から、仙術の奥義をこめた羽扇をもらった。彼は神田駿河台に仮住まいし、江戸の1年12ヵ月の風俗を、鏡のごとく羽扇に映し出して見た。見終わって羽扇を投げると、先ほど炊きかけた飯が、まだ熟する前だった。
『鶯の浄土(鶯の里)』(昔話) 若者が、山中の立派な屋敷に宿を請う。屋敷の娘が、「12ある座敷のうち11までは自由に見てよいが、12番目の座敷だけは見るな」と禁ずる。若者は順々に座敷の戸を開けて、1月から11月までの景色を見る。12月の部屋も見たくなって戸を開けると、梅の木に止まっていた鶯が飛び立ち、たちまち屋敷は消えて、若者は谷底に1人残される(新潟県長岡市成願寺町)。
『今昔物語集』巻19-33 僧が、神の化身の男に案内されて、神木の上の宮殿に行く。男はのぞき見を禁ずるが、僧がひそかに見ると、東南西に春夏秋の景色があった〔*ここまでで物語は中断している〕。
『聴耳草紙』(佐々木喜善)36番「油採り」 なまけ者が或る島へ渡り、鉄門・鉄塀の館に滞在して御馳走でもてなされる。ある夜、なまけ者が隣室を覗くと、炭火の燃える上に男が逆さ吊りにされ、目・鼻・口から垂れる油を採られている。油取りの男が「隣の奴もよく油が乗ったから明晩はあいつの番にしよう」とつぶやくのを聞いて、なまけ者はあわてて逃げ出す。
『今昔物語集』巻11-11 唐土へ渡った慈覚大師が迷いこんだ屋敷は、纐纈城といい、訪れた人を肥らせて高所に吊るし、身体の所々を切って血を出し、それでしぼり染めを作るのだった〔*『宇治拾遺物語』巻13-10に類話〕。
『本朝二十不孝』(井原西鶴)巻2-3「人はしれぬ国の土仏」 船乗り藤介が漂流して異国の島に取り残される。唐人たちが来て藤介を鉄門で固めた家へ連れて行き、逆さ吊りにして人油を絞り取る。ある時通りかかった日本僧に、藤介は「ここは纐纈城という恐ろしい国ゆえ、命を取られ給うな」と教える。
『今昔物語集』巻5-1 僧伽羅と5百人の商人たちが上陸した島は、美女ばかりが住んでいた。しかし美女の正体は羅刹鬼で、訪れた男たちを夫として愛するが、新たな商人船がやって来ると、それまでの夫たちの脚の筋を断ち切って建物に閉じ込め、毎日の食用にした。建物の中には、まだ生きている者、すでに死体となった者など、多くの男たちがころがっていた。
『青ひげ』(ペロー) 青いひげの男が、新たにめとった若い妻に多くの鍵を渡し、「屋敷内のどこへ行ってもよいが、階下の奥の小部屋だけは開けるな」と禁じて、旅に出る。妻は好奇心を抑えることができず、小部屋を開ける。床は血の海で、壁際に女の死体が数体くくりつけられていた→〔妻殺し〕2a。
*『青ひげ』(ペロー)の変型→〔扉〕5aの『青ひげ公の城』(バラージュ)・『扉の影の秘密』(ラング)。
『黒塚』(能) 安達が原で、賤の女の庵に宿を借りた東光坊祐慶らは、「見るなかれ」と禁じられたにもかかわらず、女の閨をのぞき見る。中は膿血と腐臭に満ち、死骸が数知らず積み重なっていた。祐慶らは肝をつぶして逃げ出し、女(実は黒塚に棲む鬼女)は怒って追って来る。祐慶らは、不動明王など五大尊明王に祈り、鬼女を調伏する。
『まっしろ白鳥』(グリム)KHM46 魔法使いの男が、美しい娘を森の中の家へさらい、欲しい物を何でも与える。2~3日してから魔法使いは娘に留守番を命じ、鍵と卵を渡して、1つの部屋だけは見るなと禁ずる。娘が部屋を開けるとバラバラ死体がいくつもあり、娘は驚いて卵を落とし、卵に血がつく。
*見ることを禁じられた部屋に、美女の像がある→〔像〕1dの『忠臣ヨハネス』(グリム)KHM6。
*見ることを禁じられた部屋で蛇女房が出産する→〔蛇女房〕1の『田村の草子』(御伽草子)・『蛇の玉』(昔話)。
★2d.開(あ)かずの間(ま)。
『奇談異聞辞典』(柴田宵曲)「竹林院不明の間」 比叡山延暦寺の竹林院の内に、「開かずの間」がある。宝暦7年(1757)、法華会の行事の折、権右中弁敬明が竹林院に宿泊し、家人(けにん)に命じて「開かずの間」を開けさせた。中は暗くて、何もなかった。家人は冷気に襲われる心地がして、帰宅後すぐに死んだ。権右中弁も病気になり、翌年3月に死んだ(『閑窓自語』)。
『大鏡』「昔物語」 朱雀院は、延長元年(923)の誕生以来3年間、御殿の格子も上げず夜も昼も火をともして、御帳台の中で養育された。延喜3年(903)に大宰府で憤死した菅原道真の霊のたたりを、恐れてのことであった〔*朱雀院の生母・穏子は、時平(*→〔雷〕1)の妹である〕。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第4章 アクリシオスは、子供の身を守るのではなく、自分の身を守るために、娘ダナエを青銅の部屋の中に閉じこめ、誰も近づけないようにする。アクリシオスは「娘の産んだ子に殺されるだろう」との神託を得ていたからである→〔予言〕1a。
『千一夜物語』「『ほくろ』の物語」マルドリュス版第250~253夜 結婚後40年たってはじめて授かった子「ほくろ」を邪視から守るため、両親は、この子が14歳になるまで地下室で育てる。
*→〔運命〕1aの『イソップ寓話集』(岩波文庫版)363「子供と絵のライオン」・〔予言〕1aの『イソップ寓話集』(岩波文庫版)162「子供と烏」。
『鳥』(大江健三郎) 「ぼくは多くの鳥たちに囲まれている。鳥たちのほかはみんな他人だ」、と「かれ」は考える。20歳の誕生日に「かれ」は大学をやめ、鳥たちと暮らすために自室に閉じこもって、1年以上がたった。母親が「かれ」を精神病院へ送り、手荒な治療によって、「かれ」の幻想は消える。しかし「かれ」が家へ帰ると、今度は母親の方が、鳥たちの幻想にとりつかれていた。
*毒虫となって自室に閉じこもる→〔変身〕3aの『変身』(カフカ)。
★4.蛇の室。
『ヴォルスンガ・サガ』39 グンナル王が、両手を縛られて蛇牢に入れられる。彼は足指を使って竪琴を巧みに弾じ、沢山の蛇どもは奏楽を聞いて皆眠りこむ。しかし1匹の大蝮だけが彼の所に這い寄って、肉を食い破り心臓を噛む。グンナルは死ぬ。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第9章 アドメトスはアポロンの助けを得て、アルケスティスを花嫁とした。しかし婚礼に際して神々に犠牲を捧げる時に、アルテミスへの捧げ物を忘れてしまった。そのため新婚夫婦の寝室が、とぐろを巻いた蛇でいっぱいになった。アポロンはアドメトスに、アルテミスをなだめるよう、教えた。
『古事談』巻6-11 楽人助元が罪を得て、蛇の集まる左近府の下倉に入れられる。夜半に大蛇が襲いかかろうとするので、助元は笛で「還城楽」を吹く。大蛇は帰り去る。
『レイダース 失われた聖櫃(アーク)』(スピルバーグ) アメリカ人考古学者インディ・ジョーンズと恋人マリオンは、ナチス・ドイツの一派に捕らわれ、数千匹の毒蛇が群がる石室へ閉じ込められる。2人は松明(たいまつ)の炎を毒蛇に突きつけ、毒蛇の攻撃から身を守る。やがて松明の炎が消えようとする時、インディ・ジョーンズは壁を壊して、マリオンとともに蛇の室から脱出することができた。
*→〔難題〕2aの『古事記』上巻・〔難題〕2bの『天稚彦草子』(御伽草子)。
『今昔物語集』巻3-1 天竺の浄名(維摩)居士は、1丈四方の部屋に住んでいた。そこへ十方から3万2千の仏たちが無数の菩薩・聖衆とともにやって来て法を説いたが、部屋の中にはまだ余裕があった。これは、浄名居士の不思議な神通力によるものだった。
『遠野物語』(柳田国男)14 遠野の各集落には必ず1戸の旧家があって、オクナイサマという神を祀っている。その家には畳1帖の小部屋があり、この部屋で夜寝る者は、いつも不思議な目に遭う。枕を返されるなどは、常のことである。誰かに抱き起こされたり、部屋から突き出されることもある。静かに眠ることを許さぬ部屋である。
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