ヴォルスンガ・サガ
ヴォルスンガ・サガ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/21 16:53 UTC 版)
「ジークフリート」の記事における「ヴォルスンガ・サガ」の解説
『ヴォルスンガ・サガ』は、『詩のエッダ』と並んで、北欧・大陸の双方においてシグルズの物語が最も詳細に記載された文献である。『詩のエッダ』のプロットに非常に近い筋をたどるが、著者が『詩のエッダ』を知っていたと示すものはない。著者はノルウェーで働いていて『シズレクのサガ』を知っていたと考えられており、したがって『ヴォルスンガ・サガ』は13世紀後半に作られたとされる。このサガでは、シグルズの物語の舞台をドイツでなくスカンディナヴィアとしている。このサガには続編『ラグナル・ロズブロークのサガ』があり、ラグナル・ロズブロークがシグルズとブリュンヒルドの娘アスラウグと結婚するというエピソードが加えられている。 『ヴォルスンガ・サガ』によれば、シグルズはシグムンド王とヒョルディース妃の間に生まれたとされる。王は恋敵であったリュングヴィと戦って死んだ。シグムンドの斃れた戦場に一人残されたヒョルディースは、そこでアールヴ王に見初められ結婚することになるが、彼はシグムンドの遺品である毀れた剣を回収する。幾ばくもせずヒョルディースはシグルズを生むが、シグルズはヒャルプレク王の宮廷に仕える鍛冶師レギンのもとで育てられた。ある日、レギンはシグルズに、ファーヴニル竜の守る財宝の話を聞かせる。それはドヴェルグのオトの死への賠償としてオーディンとロキとヘーニルから支払われたものであるという。シグルズはレギンに、竜を屠るための剣を作るよう頼むが、作られた剣をシグルズが鉄床に打ちつけるとどれも折れてしまった。最後にシグムンドの毀れた剣を打ち直してもらい、シグルズがその剣で試し切りをしてみると、鉄床は真っ二つになった。レギンは財宝の分け前を要求するが、シグルズはまず父の仇を取ることに決める。シグルズはオーディンの助けを得て、兵を引き連れてリュングヴィを攻め、殺す。 その後、シグルズは竜を殺すべく竜の住まうグニタヘイズに向かい、ファーヴニルの通り道に掘った穴に身を隠した。ファーヴニルが上を通ったとき、シグルズは下からその心臓を一突きにして殺した。レギンが現れ、竜の血を飲み、竜の心臓を料理するようシグルズに言う。シグルズは焼け具合を確かめるために指で心臓を触り、やけどしてしまう。指を口に入れたシグルズは、鳥の声が分かるようになる。鳥たちは、レギンがシグルズを殺そうとしていて、レギンを殺せばシグルズが財宝を独り占めしてブリュンヒルドのところに行けるのに、などと話している。シグルズはこの言葉のとおりにレギンを殺し、財宝を得て、ブリュンヒルドの眠る地に向かう。彼女は楯に囲まれ、肌から直接生えているかのような鎧を着て眠っていた。シグルズは鎧を切り裂いて脱がし、ブリュンヒルドを目覚めさせる。ブリュンヒルドとシグルズは結婚の約束をし、ブリュンヒルドの義理の兄であるへイミル王の宮廷でも改めて結婚を誓う。 その後、シグルズはギューキ王の宮廷を訪れる。妃グリームヒルドに忘れ薬を飲まされたシグルズは、ブリュンヒルドとの婚約をすっかり忘れてしまい、ギューキ王の娘グズルーンと結婚することに同意してしまう。シグルズは、ギューキ王の息子グンナルとホグニと忠義の誓いを結び、義兄弟となる。その間に、グリームヒルドはグンナルを説得してブリュンヒルドと結婚させようとし、ブリュンヒルドの一族もそれに同意する。しかし、ブリュンヒルドは、城を廻る炎の壁を越えられないのならばグンナルと結婚しないという。グンナルはこれをなすことができず、グリームヒルドから教わった呪文で互いの姿を交換する。グンナルの代わりにシグルズが炎の壁を越えると、それができるのはシグルズだけのはず、とブリュンヒルドは驚く。シグルズは三晩ブリュンヒルドと寝床を共にするが、二人の間に剣を置いて過ごす。ブリュンヒルドとグンナル、グズルーンとシグルズは、同じ日に結婚する。 ある日、川で水浴びをしているグズルーンとブリュンヒルドが、お互いの夫のどちらが高貴かでもめる。グズルーンはブリュンヒルドに、グンナルとシグルズによるぺてんを暴露し、その証拠としてシグルズがブリュンヒルドとの初夜にくすねた指輪を見せる。激高したブリュンヒルドは復讐を求める。ブリュンヒルドに話をしに行ったシグルズは、お互いに愛を告白し、グズルーンと離婚してブリュンヒルドと結婚すると提案する。ブリュンヒルドはそれを拒否し、グンナルにシグルズを殺すよう求める。グンナルは、シグルズと義兄弟になっていない弟グットルムにシグルズを殺すように言う。グットルムは狼の肉を食べ、シグルズの寝室に押し入り、剣で背中を突き刺す。シグルズは反撃してグットルムを殺し、グンナルを裏切ってなどいないことをグズルーンに伝え、息絶えた。ブリュンヒルドは直後に自殺し、二人は同じ炎で荼毘に付された。
※この「ヴォルスンガ・サガ」の解説は、「ジークフリート」の解説の一部です。
「ヴォルスンガ・サガ」を含む「ジークフリート」の記事については、「ジークフリート」の概要を参照ください。
ヴォルスンガ・サガ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 22:49 UTC 版)
『ヴォルスンガ・サガ』では、グンナルの生涯と事績が散文でより長く語られている。著者が他のテクストを知っていたことを示すものはないが、『詩のエッダ』のものに極めて近いプロットを辿る。著者はノルウェーで活動していたことがあると考えられ、ゲルマン伝承の古ノルド語翻訳である『シズレクのサガ』(1250年頃)を知っていたようである。したがって、『ヴォルスンガ・サガ』は13世紀後半に編纂されたものとされる。 グンナルは、ギューキ王とグリームヒルド妃の息子で、ホグニ、グズルーン、グットルムの兄弟として描かれる。シグルズがブルグント宮廷に着いた後、グンナルは母グリームヒルトからブリュンヒルドとの結婚を勧められる。しかし、ブリュンヒルドは、炎の壁を越えた勇者でなければ結婚しないという。グンナルはこれを成し遂げることができなかったが、シグルズがグンナルに変装して壁を越えてみせる。しかしてブリュンヒルドはグンナルと結婚させられる。しばらくして、グズルーンとブリュンヒルドは、シグルズとグンナルのどちらが地位が高いかで口論になる。グズルーンが結婚の際の偽計を暴露したため、ブリュンヒルドはグンナルに復讐を求める。グンナルはブリュンヒルドの決意を変えることはできず、シグルズを殺すことを決める。グンナルとホグニは、シグルズと何の誓約も結んでいなかった弟グットルムに殺させることにする。凶暴にさせるためにグットルムに狼の肉を食べさせて、眠るシグルズの部屋に差し向ける。果たして暗殺が成功すると、ブリュンヒルドは自害し、グンナルの運命を予言する。 アトリに対してブリュンヒルドの死を償うために、グンナルはシグルズの妻にして自身の妹であるグズルーンをアトリに嫁がせる。グンナルはアトリのもうひとりの妹オッドルーンと結婚しようとしてアトリに拒絶されるが、オッドルーンと関係を持つ。グンナルは代わりにグラウムヴォルという女性と結婚する。しばらくして、妹の復讐と財宝の強奪を目論んだアトリは、グンナルとホグニを宮廷に招待して殺そうとする。グンナルは訝しみ、グズルーンもまた行かないよう警告するが、グンナルとホグニが酔っ払っているときに、アトリの使者に言いくるめられて招待を受けてしまう。妻からの諌めもあったが、二人はアトリの宮廷へと出立する。到着した際、これは罠であると明かした使者を、二人は殺す。アトリは、グンナルがシグルズから奪った財宝を要求し、これをグンナルが断ったため、戦闘が始まる。結局グンナルとホグニは捕虜となる。グンナルは、ホグニの心臓を見るまでは財宝の在り処を明かさないと言う。ホグニの心臓を突きつけられると、グンナルは笑い、いまや財宝の在り処を知るのは自分だけであると述べ、決して吐こうとはしなかった。アトリは命じてグンナルを蛇の穴に投げ込ませる。グンナルは、手を縛られていたためつま先でハープを弾く。果たして彼は噛まれ、死ぬ。
※この「ヴォルスンガ・サガ」の解説は、「グンテル」の解説の一部です。
「ヴォルスンガ・サガ」を含む「グンテル」の記事については、「グンテル」の概要を参照ください。
ヴォルスンガ・サガ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/01 05:50 UTC 版)
「ブリュンヒルド」の記事における「ヴォルスンガ・サガ」の解説
北欧の伝承におけるブリュンヒルドの生涯に関して、『古エッダ』では曖昧に触れられるに過ぎなかった部分まで含んでいる最も充実した版が『ヴォルスンガ・サガ』のものである。著者が『古エッダ』以外のテクストを知っていたということが特に示されるわけではないが、『古エッダ』において語られるものと極めて近いプロットをたどっている。著者はノルウェーで活動していたことがあると考えられ、ゲルマン伝承の古ノルド語翻訳である『シズレクのサガ(Thidrekssaga)』(1250年頃)を知っていたようである(後述の『シズレクのサガ』も参照)。したがって、『ヴォルスンガ・サガ』は13世紀後半あたりのものとされている。『ヴォルスンガ・サガ』の写本には続編『ラグナル・ロズブロークのサガ』が含まれているが、その中にシグルズとブリュンヒルドの娘であるアスラウグがラグナル・ロズブロークと結婚するくだりがある。 『ヴォルスンガ・サガ』によれば、ブリュンヒルドはブズリの娘でアトリの妹である。フリュムダリルと呼ばれる場所で、彼女の姉ベックヒルドを妻とするヘイミル王によって養われた。フリュムダリルでは「兜のヒルド」と呼ばれており、盾乙女ないしヴァルキュリャとなるべく育てられた。12歳のとき、アグナル王がブリュンヒルドの魔法の羽衣を奪い、彼女は忠誠の誓いを強いられた。これが原因で、アグナルと兜のグンナルが戦ったとき、オージンは兜のグンナルを勝たせるように望んだにもかかわらず、アグナル側につくことを余儀なくされた。オージンは罰として、ブリュンヒルドを眠りの茨に閉じ込め、結婚しなければならないと宣言した。ブリュンヒルドは、恐れなき者でなければ自分を目覚めさせることかなわず、結婚することもないと宣誓した。オージンは眠るブリュンヒルドをヒンダルフィヤル山に移し、無数の盾を立てて彼女を囲った。 果たしてシグルズは来たりて、ブリュンヒルドを目覚めさせる。彼女は未来の予言をし、シグルズに知恵を授ける。2人は結婚の約束をする。この後、彼女はヘイミルのもとに戻る。ある日、シグルズが狩りをしていると、彼の鷹が飛び上がってブリュンヒルドの住む塔の窓に止まった。シグルズは恋に落ち、戦士として戦いたいだけなのだと主張する彼女を説得して、改めて結婚を誓わせる。その頃、予知夢を見たグズルーンは、解釈をしてもらおうとブリュンヒルドを尋ねる。ブリュンヒルドは、あらゆる不運がグズルーンを見舞うであろうと告げる。 幾許もせず、グズルーンの兄グンナルは、ブリュンヒルドに求婚することを決意する。シグルズは、薬を飲まされブリュンヒルドとの誓いを忘れてグズルーンと結婚しており、グンナルの手助けをする。ブリュンヒルドは塔を覆う炎を越えられるものでなければ結婚できないと告げるが、グンナルにはできなかった。そこでシグルズがグンナルに変装し、この難事を切り抜ける。グンナルとの結婚を渋るブリュンヒルドに、変装したシグルズは、炎を越えたものと結婚するという誓いを彼女に思い出させる。2人は結婚し、互いに指輪を贈り合う。シグルズはブリュンヒルドとの間に剣を置いて、3夜同じ寝所で過ごした。その後シグルズとグンナルは変装を解き、ブリュンヒルドをグンナルの館へと連れて行った。 ある日、ブリュンヒルドとグズルーンは川で水浴びをしていた。ブリュンヒルドは、互いの夫の偉大さを比べた上で、グズルーンと同じ水を使いたくないと言い出した。グズルーンは、炎を越えたのはシグルズであってグンナルではないと暴露し、シグルズがブリュンヒルドから受け取った指輪を見せる。次の日、二人の妃はグンナルの館でも口論を続ける。ブリュンヒルドはひどく傷つき、床に伏せる。グンナルのなだめにもかかわらず、彼女はシグルズへの復讐を求める。シグルズはブリュンヒルドに愛を伝え、グズルーンとの離婚を提示するものの、ブリュンヒルドは拒絶する。その後、ブリュンヒルドはグンナルにシグルズを殺すよう求める。果たしてシグルズは死に、嘆き悲しむグズルーンの声を聞きながら、ブリュンヒルドは高笑いする。ブリュンヒルドは、シグルズがかつて自分と共寝したことについて、シグルズを中傷したことを明かす。それから彼女は自分を剣で刺し、死にゆく中グンナルと長い会話をして、未来を予言する。彼女の願いどおり、ブリュンヒルドはシグルズと同じ炎で火葬された。
※この「ヴォルスンガ・サガ」の解説は、「ブリュンヒルド」の解説の一部です。
「ヴォルスンガ・サガ」を含む「ブリュンヒルド」の記事については、「ブリュンヒルド」の概要を参照ください。
固有名詞の分類
- ヴォルスンガ・サガのページへのリンク