イズンとは? わかりやすく解説

イズン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/08 06:09 UTC 版)

ニルス・ブロメールによって描かれた、リンゴを持つイズンと夫ブラギ(1846年)
ローランス・フレーリクによって描かれた、『オージンのワタリガラスの呪文歌』の一場面。イズンとロキ、ヘイムダル、ブラギ(1906年)

イズン[1]古ノルド語: Iðunn)は、北欧神話に登場する女神の一柱。イドゥン[2]イズーナ[3]とも呼ばれる。『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』第26章によれば、アース神族に永遠の若さを約束する黄金の林檎の管理人で、の神ブラギの妻でもある[4]

概要

性格

無邪気でお人好しな性格だったとされている[5][注釈 1]。後述の神話では、お人好しな性格が災いしてロキに騙され巨人に攫われてしまい、彼女と共にリンゴが失われたことでアースガルズの神々が年老いる事体が発生した[6]。『ロキの口論』では、ロキに罵倒されるブラギを庇い、イズン自身が罵倒の対象にされると上手く反論してロキを諌めるという、賢く強かな一面も見せている。

容姿

青空の様に真っ青な瞳と、晴れやかで優しげな美しい容姿を持っており[7]フレイヤとならび、アースガルズで最も美しい女神であるとされる[8]。『ロキの口論』でロキがイズンを罵倒するときも、皮肉交じりではあるがイズンがきれいなことは肯定している[注釈 2]。一方、巨人に攫われた際にはアースガルズへ連れ戻しに来たロキによって変身の呪文をかけられ、その姿を木の実[注釈 3]に変えられてしまったこともある。

神話

『スノッリのエッダ』第二部『詩語法』は次の物語を伝えている。ある日、イズンはロキに騙されて、巨人スィアチスカジの父)にリンゴともどもアースガルズの外、巨人たちの国ヨトゥンヘイムへと攫われてしまう。常若のリンゴを失ったアース神族の神々は老い始めるのだった[11]

神々の怒りに触れ、イズンを巨人から取り戻すよう課せられたロキは、フレイヤから借りたの羽衣で鷹に変身し、スィアチの宮殿スリュムヘイムへ向かった。ちょうどスィアチは外出しており、宮殿にいたのはイズン一人だけだった。ロキはイズンに対して素早く変身の呪文を唱え、イズンを一個の木の実に変えて摘みあげると、そのまま爪に挟んで運び去った。スィアチはに姿を変えて追いかけたが、あと少しのところでアース神たちの用意した屑の火に翼を焼かれて墜落し、神々に倒された[11]。ロキの呪文で木の実にされていたイズンは本来の姿に戻してもらい、年老いた神々にリンゴを配った。神々は再び若さを取り戻して喜び、イズンは自分がもう木の実ではないことが嬉しかったという[12]

古エッダ』の『ロキの口論』第17が伝えるところでは、イズンは自分の兄を殺した男を抱いたとされる[13]。なお、イズンの兄についてはこのエピソードで存在が仄めかされるのみで、神話には直接登場せず名前も明らかでない。また、「兄を殺した男」とは誰のことを指すのかも不明である。

別の伝承

イズンがある日ユグドラシルの高い枝から転落してニヴルヘイムへ落下したという。この時のことが『オージンのワタリガラスの呪文歌』にも唄われた。ブラギをはじめ神々が彼女を捜し、ニヴルヘイムで横たわっているのを見つけた。神々は、冷え切った彼女の体を、オージンから預かった白い熊の毛皮で包んだ。イズンは寒さに震えながらもアースガルズへ戻ることを拒んだため、やむなくブラギだけが彼女の傍らに残ったという。この物語について、一部の学者は、イズンの転落は秋の落葉を、白い毛皮は雪を、沈黙し音楽も奏でなくなったブラギは鳥の歌声が聞こえない様子を象徴すると考える。しかし松村武雄はこれを行き過ぎた推察だとしている[14]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

カール・ラーションが描いた、娘ブリータ扮するイズン。
  1. ^ アイルランドの詩人パードリック・コラム英語版による再話。この再話では、イズーナと表記される。
  2. ^ 「兄を殺した男を、きれいに磨いたその腕で抱いた」という内容。
  3. ^ 『「詩語法」訳注』では「木の実」に、『エッダ 古代北欧歌謡集』では「胡桃」に、『北欧とゲルマンの神話事典』では「ハシバミ[9]に、『北欧神話』(コラム)では「スズメ[10]に変えられている。

出典

  1. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』などで確認した表記。
  2. ^ 山室静『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』(筑摩書房〈世界の神話 8〉、1982年ISBN 978-4-480-32908-0)で確認した表記。
  3. ^ 『北欧神話』(コラム)で確認した表記。
  4. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』246頁。
  5. ^ 『北欧神話』(コラム)(第一部第3章「イズーナとリンゴ。ローキが神々をあぶないめにあわせた話」)34-35頁。
  6. ^ 菅原、272-273頁。
  7. ^ 『北欧神話』(コラム)33-34頁。
  8. ^ 『世界の名作図書館』第1巻、「北欧神話・民話」
  9. ^ 『北欧とゲルマンの神話事典』159頁
  10. ^ 『北欧神話』(コラム)42頁
  11. ^ a b 『「詩語法」訳注』1-3頁、『エッダ 古代北欧歌謡集』67頁(「スキールニルの旅」訳注9)・74頁(「ヒュミルの歌」訳注8)。
  12. ^ 『図説 北欧神話大全』158頁。
  13. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』82頁。
  14. ^ 『北欧の神話伝説』222-226頁。

参考文献


イズン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 09:29 UTC 版)

真・女神転生V」の記事における「イズン」の解説

北欧神話登場する女神。詩の神ブラギの妻であり、黄金の林檎管理人でもある。

※この「イズン」の解説は、「真・女神転生V」の解説の一部です。
「イズン」を含む「真・女神転生V」の記事については、「真・女神転生V」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「イズン」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「イズン」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「イズン」の関連用語

イズンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



イズンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのイズン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの真・女神転生V (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2026 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2026 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2026 GRAS Group, Inc.RSS