『シズレクのサガ』
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ヴェルンドはまた、ニーベルンゲン伝説やディートリヒ伝説などを統合した散文作品『シズレクのサガ』にも登場する。彼が登場する部分は『ヴェレントの話』(Velents þáttr smiðs)と呼ばれている。 ヴェレント(ヴェルンド)は、ヴィルキヌス王(Vilkinus)と人魚の間に生まれた巨人、ヴァジ(Vaði)の息子であった。ヴァジはヴェレントが9歳になると、フンランド(Hunaland)の鍛冶師ミーメ(Mímir)の下へ修行に出すが、兄弟子シグルズに暴力を振るわれていると聞き、彼が12歳の時に一度連れ戻した。次に小人たちの下へ修行に出すが、ヴァジがヴェレントを引き取りに来る途中で事故死したことを聞き、ヴェレントは小人たちを殺し、鍛冶道具や宝物と一緒に船に乗り漂流する。 ヴェレントはユトランド王ニズング(ニーズズ)に保護される。宮廷の鍛冶師アミリアス(Amilias)と腕比べの賭けを行い、これに勝利する。またその中で、鍛冶道具を盗んだ王の家来に生き写しの像を造り、道具を取り戻すことに成功する。 あるときヴェレントの手柄を横取りしようとした王のお気に入りの家来を殺してしまい、王に追放される。復讐のため変装し宮廷に戻るが発覚し、脚の腱を切られ鍛冶小屋に軟禁される。ヴェレントは小屋を訪れた王の次男と三男を殺害し、その死体を用いて作った宝物を王に贈った。また腕輪の修理を頼みに来た王女バドヒルド(ベズヴィルド)と同衾し、子を孕ませる。 ヴェレントは弟のエギル(Egil)を宮廷に呼ぶ。エギルは弓の名手であり、王はエギルの息子の頭に林檎を乗せ、それを弓で射させる。エギルはこれに成功するが、もし私が失敗していたらその場で王とその家来たちを射殺すつもりだった、と告白する。 ヴェレントは翼を作り上げ、塔から脱出しようとする。王はエギルにヴェレントを射させるが、手筈どおり矢はヴェレントが脇に下げていた血の入った袋に当たり、逃亡に成功した。 その後ニズング王は早くして亡くなり、彼の息子オトヴィン(Otvin)が後を継いだ。ヴェレントは彼と和解し、ユトランドに戻ってバドヒルドと結婚し、のちに妻子と共に故郷のシェラン島へと戻っていった。 また、このときヴェレントとバドヒルドの間に生まれた子が、のちにディートリヒの部下となるヴィズガである。ヴィズガは鍛冶師になることを拒み、旅に出ることを決意する。ヴェレントは息子のために防具一式を鍛え、馬スケミング(Skemming)と剣ミームング(Mimung)を与えて送り出した。
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