庄内川

日本の川

庄内川

都市の安全とうるおいを守る川づくり

庄内川は、岐阜県恵那郡山岡町にある夕立山にその源を発し、岐阜県東濃地方の盆地を流貫し、山間部（玉野渓谷）を急流となって流下します。以後、愛知県春日井市附近より濃尾平野に出て支川を合わせて名古屋市北部で新川を分派し、その下流で矢田川と合流し、名古屋市の北西部を迂回しながら伊勢湾に注いでいる流域面積1,010km2、幹川流路延長96kmの都市河川です。

大都市名古屋を流れる庄内川

河川概要

水系名 庄内川水系 河川名 庄内川 幹川流路延長 96km 流域面積 1,010km2 流域内人口 250万人 流域関係都県 愛知県、岐阜県

○拡大図

1．庄内川の歴史

"庄内川は江戸時代に入り、尾張徳川家の築城を期に新川開削、洗堰築造等の治水事業が行われました。流域は庄内用水、木津用水の開削や干拓による新田開発により急速に発展しました。中部圏の母都市である名古屋市をはじめ、産業経済集積の集中した都市域を流れる典型的な都市河川となっています。"

特有の歴史、先人の知恵の活用

庄内川は、その源を岐阜県恵那郡の夕立山（標高727m）に発し、岐阜県東濃地方の盆地を貫流し、渓谷を抜けて愛知県に入り、濃尾平野を流下して伊勢湾に注ぐ中部地方の代表的な都市河川で、岐阜県内では土岐川と呼ばれています。 流域には二子山古墳群等の遺跡が分布し、条里制の名残りを地名にとどめており、平安中期には書聖小野道風を輩出しています。同じ頃、虎渓山永保寺や医王山薬師寺密蔵院が開山しています。戦国大名が群雄割拠した時代には歴史の中心地でもありました。尾張藩が徳川御三家の一つになると、西への要として木曽川や庄内川左岸堤が築かれ、藩内の開発が積極的に進められるようになりました。庄内用水の開削が進められ、入鹿池が造られました。また木津用水の開削により、木曽川から導水されるようになりました。より農地を広げるために河口部の干拓が進められ、河口部の開発は川の海への排け口を先に延ばすこととなり、洪水の疎通能力を減らし河床に土砂を堆積させ水害が頻発するようになりました。このため、庄内川下流右岸地域の洪水と悪水排除と名古屋城下を守るために、「天明の治水」（1784）として普請奉行の水野千之右衛門の指揮の下、新川の開削や洗堰の築造が行われました。 明治以降になると、名古屋を中心に自動車など機械、輸送機器製造業をはじめとする産業が発達しました。第二次大戦後埋め立てにより出現した臨海工業地帯は、我が国の有数の工業拠点となり、流域の開発と都市化が進展しました。 上流部は、風光明媚な玉野渓谷や天ヶ峡があり、応夢山定光寺、虎渓山永保寺などがいまも地域の歴史を偲ばせています。また瀬戸物や美濃焼に代表される陶磁器産地として発展し、現在も陶芸作家が織部、黄瀬戸などの古陶を、磁器やタイルも地場産業として栄えています。 釉薬生産や陶磁器産業からの排水により、庄内川は白く濁った川になっていましたが、事業所の排水施設改善や下水道の整備により水質は向上しており、かつての清流や自然を取り戻そうとする動きも活発になってきています。 【虎渓山永保寺（多治見市）】 【庄内用水黒川樋門（名古屋市）】

2．地域の中の庄内川

"庄内川は都市河川である一方、上流には渓谷部もあり、都市近郊の行楽地として親しまれています。高水敷は、都市の防災空間、散策・スポーツの場、耕作地など多様な形で利用されており、生活と密着した川となっています。"

地域社会とのつながり 庄内川水系は岐阜県、愛知県にまたがり、流域には中部圏の母都市である名古屋市をはじめ、春日井市、多治見市などのベッドタウンを擁する典型的な都市域を流れる河川を軸とした水系です。 庄内川は、最高標高TP約800m幹線流路延長96kmという比較的短く、低い山地を持つ河川で、源流部まで人為的な利用がなされているのが特徴です。 庄内川の上流域は、農林業、陶磁器産業や製造業、寒冷な気候を活かした寒天製造などの産業が営まれており、頂上付近までゴルフ場や牧場などが開発されています。 また、江戸期より伝わる美濃地歌舞伎が守られており、中山道で栄えた往時が偲ばれます。市街地では陶磁器にちなむ陶祖祭などが行われ、織部祭りの野焼き窯や花火大会のイベント会場として、土岐川は地域の人々に親しまれています。 渓谷部は、豊かな自然が四季折々の変化をみせ、渓谷美に歴史的風情を漂わせる玉野渓谷、古虎渓は都市近郊の行楽地としても親しまれています。 中流域は、礫の河原、水辺草地、河畔林があり、瀬や淵などの河川本来の雰囲気も残されており、大都市近郊にあって虫とりや水遊び、ガサガサなど自然観察の場として、子供たちや自然愛好家が庄内川に親しみ、自然への理解を深めることができるエリアです。 下流域は、都市の貴重なオープンスペースで、高水敷は草地を中心とした環境で、都市計画緑地、グランド、耕作地のほか、ゴルフ場、自動車学校などに利用が行われており、水面はレガッタなど漕艇練習に利用されています。 また、尾張三大奇祭の一つとされる「きねこさ祭り」も行われています。 名古屋市域の高水敷の大部分は都市計画緑地として整備が進んでおり、震災対策などの広域避難場所に指定されており、都市災害における防災空間としても重要な役割を担っています。 【庄内緑地公園<小田井遊水池>(名古屋市)】 【きねこさ祭<七所社>(名古屋市)】 <img src="https://weblio.hs.llnwd.net/e7/img/dict/nhnkw/river/jiten/nihon_kawa/85053/img/85053-1_p2_01.gif" WIDTH="300" ALT="【庄内緑地公園<小田井遊水池>(名古屋市)】"> <img src="https://weblio.hs.llnwd.net/e7/img/dict/nhnkw/river/jiten/nihon_kawa/85053/img/85053-1_p2_02.gif" WIDTH="160" ALT="【きねこさ祭<七所社>(名古屋市)】">

3．庄内川の自然環境

"庄内川は、四季折々の渓谷美を望むことができるなど豊かな自然を有しており、都市域に隣接した貴重な自然空間となっています。なお、河口部は干潟、ヨシ原が形成され、渡り鳥の渡来地としてラムサール条約規定湿地に指定されています。"

庄内川水系は、山間地の盆地・渓谷を流下する上流域、段丘部を流下する中流域、平野部を流下する下流域、さらに、干拓地を流下する河口域からなっています。 上流域の盆地部は、市街が川岸に連担しており、川幅も狭いことから掘込河道の様相を呈しており、人為的な影響が大きく、水辺にはツルヨシ群落、オギ群落が形成されており、ツバメ、スズメ等の市街地性、田園性の鳥類が多くみられます。渓谷部は、カワラハンノキ群落などの渓畔林や、斜面のコナラ群落、アカメガシワ－ヌルデ群落などが岩盤の露出と相まって優れた渓谷美を呈しています。また、渓谷の清流に棲むアカザ、ドンコなどの魚類や渓流性、樹林性の多様な生物が生息しています。 中流域は平野を流れ、河川敷が発達していることから、オギ群落、コナラ群落などの草地や樹林地が広がり、河道内には瀬と淵、礫州が分布する多様な環境が形成されています。ノスリ、チョウゲンボウなどの猛禽が多く飛来し、草地にはツバメ、ホオジロ、砂礫地ではイカルチドリ、水域にはカワウ、カルガモなどが多くみられます。 下流域は過密化した都市域に隣接した貴重な自然空間となっており、都会のオアシスと言った風情があります。高水敷には耕作地、公園、グランドなど人工的環境が広くみられ、植生はオオブタクサ群落などの二次草地が多く、水際にはヤナギ林やヨシ群落などの冠水草地が分布し、水域では天然アユの遡上がみられます。 河口域は、潮汐の影響を受け干潮時には干潟が出現する湿地環境を形成しています。植生はヨシが広大な塩性湿地を形成し、シバナ、シオクグ、イセウキヤガラなどの貴重性の高い植物もみられます。これらの干潟、湿地は水鳥をはじめ多様な生物の採餌場、休息場、繁殖場として機能しています。 特に庄内川河口周辺は、国内最大級のシギ・チドリ類渡来地で、渡り中継地として国際的にも重要な湿地として、貴重な環境を保全するため国設鳥獣保護区となり、平成14年11月ラムサール条約の登録湿地に指定されました。 【古虎渓<天ヶ峡>（多治見市）】 【庄内川河口・藤前干潟(名古屋市)】 <img src="https://weblio.hs.llnwd.net/e7/img/dict/nhnkw/river/jiten/nihon_kawa/85053/img/85053-1_p3_01.gif" WIDTH="167" ALT="【古虎渓<天ヶ峡>（多治見市）】">

4．庄内川の主な災害

発生年 発生原因 被災市町村 被害状況 S34,9,26 伊勢湾台風 名古屋市中川区 名古屋市港区 死者・行方不明者　399名 負傷者　15,297名 被災家屋　約41,000棟 S46,9,26 台風29号 名古屋市 被災家屋　約7,400棟 H1,9,17～22 豪雨 台風22号 土岐市 大治町 被災家屋　約210棟 H3,9,11～28 台風17～19号 名古屋市 大治町 新川町 被災家屋　約140棟 H6,9,11～22 台風21、24号 名古屋市 大治町 被災家屋　約650棟 H12,9,11～12 東海豪雨 愛知県 岐阜県 被災家屋　約34,000棟

（注：この情報は2008年2月現在のものです）