定義・概説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 21:33 UTC 版)
「左翼・右翼」も参照 西田毅は、対立概念の左翼と同様、右翼という用語は元来、相対的な意味しかもたないゆえに、厳密な定義を行うことは困難であり、また活動内容や機能の実態はさまざまに異なるが、現在(1994年執筆時点)では一般に反共産主義・反社会主義・保守的反動的国家主義・超国家主義の精神やイデオロギーを持つ、ファッショ(ファシズム)的集団や人物を意味すると解説している。 マイペディア(平凡社)では「一般にはドイツのナチス、イタリアのファシズム、日本の超国家主義者などがその代表」と言う。 日本の右翼思想は戦時中の軍部の考えを若干踏襲している部分があり、その思想を極端に持った右翼団体は愛国論を唱えている。そして、主にレーニンやスターリン、毛沢東などを賞賛する公安監視対象の左翼団体や極左暴力集団に対抗している。[独自研究?] T.A.Smith, R.Tatalovichによれば、社会学の説明としては、左翼が大きな平等や政治参加を求める社会運動であるのに対して、右翼は「秩序(体制)・身分・名誉・伝統的な社会格差や価値観の構造を維持することを目指す社会運動」を指すとされ、保守、愛国心、国粋主義的な思想を含むとされる。類義語には「保守」や「守旧」など、対義語には「左翼」や「革新」などがある。 右翼と左翼の語源はフランス革命に由来する。フランス革命期の(憲法制定)国民議会において、旧秩序の維持を支持する勢力(王党派、貴族派、国教派など)が議長席から見て右側の席を占め、左側に旧勢力の排除を主張する共和派・急進派が陣取ったことが語源となった。続く立法議会においても、右側に立憲君主派であるフイヤン派が陣取り、左側に共和派や世俗主義などの急進派(ジャコバン派)が陣取った。「右翼」という語は、超王党派による1815年のフランス王政復活の後、よく使われるようになった。 「右翼」は社会主義と対立する保守主義・反動主義を日本では指した。また、「左翼」が共産主義や社会主義をめざす勢力を指すのに対して、右翼は、左翼勢力に反対して自由市場の資本主義を擁護するリバタリアニズムや[要出典]新自由主義といった勢力や、国家主義・民族主義・国粋主義を支持する勢力を指す。 右翼とは、一般に、自国や自民族が持っている元来の文化、伝統、風習、思想等を重視した政治思想をよぶため、国や時代や立場によっても右翼と左翼の位置付けは異なり、一概に「右翼」と言っても多種多様な主義主張がある。例えば共和主義や自由主義は、フランス革命後の議会では王党派との対比で「左翼」と呼ばれたが、19世紀後半からは社会主義との対比で「右翼」と呼ばれる事が多い[要出典]。 評論家の浅羽通明は、政治学者山口二郎の研究を援用して、以下のように整理する。左翼は、人間は本来自由、平等で、人権という理性、知性で考えついた理念をまだ知らない人にも広め(啓蒙)実現しようと志す。これらの理念は「国際的」「普遍的」であって、その実現が人類の進歩であると考えられる。現実に支配や抑圧、上下の身分、差別といった、自由と平等に反する制度があれば、それを批判し、別の形で実施する。対するに右翼は、伝統や「人間の感情、情緒」を重視し、理性が生み出した自由・平等•人権では人は割り切れないと考える。そのため、反啓蒙主義の立場をとる。「長い間定着してきた世の中の仕組みである以上は、多少の弊害があっても簡単に変えられないし、変えるべきでもない」と考える。こうした伝統的な世の中の仕組みには、近代以前に起源を有する王制、天皇制、身分制なども含む。右翼は、自国の歴史を重んじる歴史主義、ロマン主義の立場をとり、制度改革を目指す左翼から伝統や歴史を保守しようと志す。このことから右翼は「国粋主義」「民族主義」となり、「国際主義」「普遍主義」と拮抗するようになる。また、浅羽は竹中平蔵や小泉純一郎政権の構造改革などの市場原理主義は自由を徹底させ、既得権否定などは平等実現にも思えるため左翼のようである。また、国民の人権や自由を抑圧した旧ソ連など社会主義国の場合や、他民族に支配されている少数民族が自由や他民族との平等を求めたベトナム解放戦争やクルド人、チェチェン人の闘争の場合は右翼なのか左翼なのかと問い、「右翼─左翼」の位置づけは難しいと指摘している。 政治学者丸山眞男は世界の「右翼」にほぼ共通するイデオロギーや精神的傾向を以下の10項目にわたって挙げている。 (1)他のあらゆる忠誠に対する国家的忠誠の優先 (2)平等と国際的連帯を強調する思想や宗教への憎悪 (3)反戦平和運動に対する反感情、「武徳」の賛美 (4)国家的「使命」の謳歌 (5)国民的伝統・文化を外部からの邪悪な影響から守れというアピール (6)一般に権利よりも義務、自由よりも秩序の強調 (7)社会的結合の基本的紐帯(ちゅうたい)としての家族と郷土の重視 (8)あらゆる人間関係を権威主義的に編成しようという傾向 (9)「正統的」な国民宗教または道徳の確立 (10)知識人あるいは自由職業人に対して、彼らが破壊的な思想傾向の普及者になりやすいという理由から、警戒と猜疑の念をいだく傾向。 政治学者ノルベルト・ボッビオによれば、 右翼にも左翼にも穏健派と過激派が存在 する。右翼および左翼の過激派は、民主主義を軽蔑し、妥協、慎重さ、忍耐、調停などを嫌悪し、勇敢さ、大胆 さなどの戦闘的武人的美徳を好み、暴力を正当化する傾向がある。他方、ボッビオによれば、右翼・左翼を分けるものは、平等についての考え方である。左翼は、平等主義的で、人間に共通するものを尊重するのに対して、右翼は、人間のあいだの相違を尊重する。ボッビオは、マルコ・ レヴェッリの研究を援用して、左翼・右翼という言葉は固定された内容を指すのでなく、時代や状況によってさまざまな 内容を指し、「右と左が対立関係をあらわすということは、右と左に同時に所属し得ないということを意味するだけ」で、時代が異なれば、右翼に属することと左翼に属することが内容的に同じであることがありうると解説している。 イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの欧米資本主義諸国では、二大政党制の下、それぞれの党が保守派と革新派とで明確に分かれており、これらは右翼・左翼と区別して認識されている。ただし、アメリカはマッカーシズムや赤狩りといった反共主義の政策により左翼と見られることを忌避する傾向が強い[要出典]ため(非常に小さい勢力ながら「アメリカ共産党」が存在する)、革新派はリベラルと名乗る場合が多い。
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