三十六番所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 22:48 UTC 版)
文化文政期の江戸市中899か所に設けられた武家番所の一つ。江戸の三味線堀にあり、両隣は女郎屋、向かいは居酒屋、近所に矢場や岡場所と、真っ当な武士なら忌避するような、歓楽街のど真ん中の立地。本来ならば6人体制であるべきところを、第1シリーズ第1話では頭取の殺害後、小者を含めた4人体制で運営しており、番士の補充を上申しても半年も放置され、新頭取の赴任も10日ほど音沙汰がなかったため、周囲では取り潰しになると噂が立ち、番所の高張提灯を足蹴にされた。普段は人手不足ながら巷の喧嘩や揉め事の仲裁、失せ物探しなどといった仕事を請け負いつつ、町人には親切、怠け気味ののんびり番所だが、その裏では非道な悪を独自の権限で裁く「斬り捨て番所」としての側面を持つ。松平定信の失脚から隠居に伴い、第2シリーズでは番士たちは表向きは三十六番所の仕事を継続しつつ、白河楽翁の傘下の「鬼番所」として誅殺活動を継続し、さらに第3シリーズでは「影目付」となり翁の御前と戦う。第2シリーズ初期では毎回出陣の前に出雲が加害者の罪状や被害者の苦しみを述べ、暗闇の地下蔵でろうそくを斬る儀式(唯一の明かりを斬るため毎回真っ暗になる)を行っていたが、後に出陣準備の様子に変わった。また第2シリーズでは斬りこむ直前に「斬」の一字が入った白扇を敵に投げ込む。 花房出雲:中村吉右衛門 江戸は本所(墨田区:両国、錦糸町、向島周辺)出身、幼名はしん三郎(しんの漢字は不明)部屋住み時代は牛込若松町(新宿区)の近くに住んでいる。貧乏旗本の次男として生まれ、兄が亡くなったことで家督を継ぎ、奥右筆に選ばれる。僚友13人以上に転属中止の嘆願書を出され惜しまれながらも、幼馴染の朝倉丹波の懇願で、殺害された神崎清五郎(演:根上淳)の後任として初めは嫌々ながら三十六番所頭取に赴任する。番士たちからは「大将」と呼ばれる。豪放磊落だが正義感は熱い。いったん気持ちを決めると周囲に何を言われても聞かない頑固さも持つ。殺陣の最後は武士階級の黒幕へトドメをさす際に「御免!」のセリフを言う(第3シリーズでは誰が相手でも言っている)。腕も立つが、基本は博識の頭脳派。教養も高く、第1シリーズでは三味線、風景のスケッチ、能の舞、器用な工作など多彩な特技を見せ、どんぐりで作るやじろべえの工作であっても一度手を付けると真剣に熱中して取り組む癖がある。お人よしな所もあり子供好きで、気の毒な少年と遊んでやったり、不良少女や乞食の女などを更生させるために自腹を切って面倒をみたり、多少裏切られようと真剣に親身に対応する。趣味は釣りで、浮きを自作し、5両(20万~40万くらい)もする一貫斎製作の竿を愛用している。第1シリーズ最終回では1年間の特命派遣のため長崎へ旅立った。第1シリーズでは「三十六番所頭取、花房出雲」第2シリーズでは「鬼番所頭取、花房出雲」と名乗るが、第3シリーズでは肩書は一切名乗らず、また敵の罠に落ちていても問われれば偽名を使わず本名を名乗る。第2シリーズ最終回で部下2名、親しい密偵2名を失ったことで傷心を抱え楽翁に暇を乞い、休職を提案され独り旅に出るも、第3シリーズ第1話で旅先で命を狙われ記憶喪失となり、自分の名前を手がかりに全てを思い出した際に「二度と再びこんな仕事はすまい」と心に決めたが、自分を助けてくれた女が翁一味に殺されたことから、これまでのような武士の役目としてではなく、個人的な意思として楽翁の依頼で翁一味の討伐を請け負い、翁の御前を倒したい一念で強敵を相手に、やや投げやりに生き延びていく。1話~5話までは、江戸へ戻っても番所には顔を見せずに転がり込んだ芸者小蝶の家に入り浸り、「あんな番所、あっても無くても変わらねぇ」と小蝶に言い捨て、番士の2人とも会おうとせず、築地の隠居の指令は手紙で送っていた。5話で岡っ引きとして窮地に陥った勘兵衛と地獄島で再会し救って以降、6話からは番所に足を向け始め、表情も明るくなり、以前のように釣りをする姿や、番所で番士たちと茶や酒を飲み語らう場面も見られるようになる。11話からは他役所の奉行や目付と話し合いをするなど、三十六番所頭取としての役目も再開している。武士道精神や正義から気持ちが逸れてしまい、個人的な復讐がモチベーションになったためか以前ほどの無敵の強さはなく、たびたび窮地に陥り、捕まったり負傷する。第1、第2シリーズでは女性に対しては紳士的で、恋愛には慎重な描写であったが、第3シリーズでは少しやさぐれ気味に人格が変わって女性に対してかなり積極的になり、翁の刺客の女性や、女医者、味方の密偵、道で出会った女壺振り、公家の姫、乞食の女など、誘われればまず相手を拒まず、その都度異性関係に陥る。そのあまりの守備範囲の広さに大助には「ゲテモノ喰い」と評され呆れられた。 関 大助:長門勇(第1シリーズ第21話、第2シリーズ第12・14・17・19話を除く) 古株の番士で初めは「関さん」と呼ばれていたが、出雲がつけたあだ名は「とっつぁん」。女児ばかり5人の子持ちで呑兵衛だが武術と体術の達人であり、主な得物は短槍だが脇差しやトンファー、濡れ手拭いなどで敵方の武器を奪ったりその場にある様々な物を使用するなど変幻自在の戦い方をする。特技は絵(春画や漫画)を描くこと、怪しい薬の調合や蘭学を齧って化学の知識や、航空力学の知識までも披露し、最後には翁の御前との決戦を前に、秘密兵器までも作成。また、しばしば奇想天外な作戦を立案する。第3シリーズでは出雲の留守中から留守居役を良いことに番所を占拠し、自宅の洗濯物干し場や自分の寝ぐらにしている。勘兵衛の結婚式で「高砂」を謡うために謡曲を習いはじめ、その後もたまに披露する。第3シリーズ9話で6人目の子にして初の男児が誕生。 松波蔵人:伊吹剛(第1シリーズ第1~7・10~11・19・25話) 番士。愛称は「蔵(くら)、蔵さん」。大助や伝十郎と共に前任者の神崎清五郎が頭取の頃からいる。血気盛んで融通の利かない性格。 宇部伝十郎:川崎公明(第1シリーズ~第2シリーズ第1~7・9~20・22・24話) 若手番士。愛称は「伝さん、伝十」。しばしば空気が読めずそそっかしい。初めは失敗も多く、出雲から「ばかもん!」と怒鳴られるシーンもあったが、後輩の数馬の加入以降は頼もしく成長する。第2シリーズ最終回で祝言を挙げることになり浮かれていた矢先、出雲たちが大目付側室の護衛任務で番所を離れていた留守中に三十六番士の殲滅を企む敵の凶刃に倒れ命を落とす。 大沢数馬:市川百々丸(第2シリーズ第1~8・10~12・14~21・23~24話) 殉職した新任番士・新藤小弥太(演:京本政樹)の後任として三十六番所にやってきた若手番士。愛称は「数馬」。観に行った芝居のタイトル「心中天網島」を「こころなかてんあみしま」と読んで大助に馬鹿にされたり、白玉を白い碁石とすり替えられて食べかけるなど、よく大助にいじられている。第2シリーズ最終回では大助の飲酒が元で手負いとなり、大将と大助の足手まといになりたくないと、捕らわれの妙秀尼を助けるため、あえて敵の罠に突っ込んでいき命を落とした。演じた市川百々丸は、二代目市川新車を襲名後第3シリーズの最終回に影目付の役でゲスト出演している。 平野与四郎:伊庭剛(第3シリーズ) 対翁の御前の戦力として楽翁が三十六番所に送り込んだ若手番士。愛称は「与四郎」。大助とコンビを組むことが多い。二枚目で真面目、御庭番のような服装や戦法で戦い有能ではあるが、大助のペースに乗せられ洗濯やお茶くみなどの雑用にも振り回され、番所の留守番中にこっそりエロ草紙を読むなど、次第に三十六番所の雰囲気に染まっていく。後半では敵に捕まったり負傷することもしばしば。 番助:山本雅一(第1シリーズ第1話~第7話、第12話、第14話、第21話、第24話) 小者。
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