差動装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/05 07:04 UTC 版)
ネジによる差動装置
差動装置には、ネジを使用したものもある。二つのわずかにピッチの異なるネジを同時に回転させることにより、その差だけ動かすことができる。これの利用例がマイクロメータの非常に小さな動きから寸法の高精度な測定である。図の場合Aが0.8 mm、Bが1 mmのピッチとすると一回転でその差の0.2 mmの動きをする。
歴史
差動歯車の発明については諸説があるが、古代から現代に至る知られている例をいくつか挙げておく。
- BC2634年 中国大陸の伝説の黄帝により指南車が用いられていた。
- BC1世紀ごろ ギリシャのアンティキティラ島の沖の海底で発見されたアンティキティラ島の機械は、平面的な差動機構を含んでいた。
- 1810年 ドイツのルドルフ・アッカーマンにより馬車用の4輪操舵システムが発明されたが、これが後の作家により差動装置と誤って伝えられた。
- 1827年 フランスの機械技術者で時計職人だったオネシフォール・ペックールが蒸気自動車を製作しこのとき差動歯車を開発しこれで特許を取得した。現代の自動車で使用されている技術である。
- 1832年 イギリスのリチャード・ロバーツにより蒸気機関車用の負荷補償用歯車として特許登録される。
- 1876年 イギリスのジェームズ・スターレーは、自転車(3、4輪)用のチェーン駆動の差動装置を発明。後に、カール・ベンツによる自動車に用いられる。なお、スターレーは英国ローバー自動車につながる人物である。
- 1897年 デービッド・シーラーによりオーストリアの最初の蒸気自動車で差動装置が使用された。
差動装置のない四輪車
電気自動車などで見られる車輪単位で動力が伝えられるような形式(インホイールモーターなど)の場合、差動歯車は必要ない。
ゴーカートなどの簡易な自動車でも省略され動力が直接左右の車輪に伝えられる。そういった車が、まっすぐ走る場合は特に問題はないが、ドライバーの技量によっては曲がろうとするとどちらかの車輪がスリップし、制御が難しくタイヤや路面を傷めることもある。ゴーカートやレーシングカートの場合は車体フレーム剛性を調整し、コーナリング時に駆動輪の片方が地面から浮き上がる様に走行するテクニックを用いるため、差動装置は必要ない。手押し車など簡易的な車体では差動装置が省略されるが、人が押す力が大きいため強引であるが問題なく旋回できる。
差動装置が省略される理由は、重量のある差動装置を省いた軽い車体を作るため、構造を単純化する、故障率を下げる、費用を抑えるなどがある。
鉄道車両では円錐状の車輪で左右の回転差を吸収するとともに、自ら転向する力を得ている[10]。しかしながら2軸車・ボギー車ともに車軸の中心軸は線路の曲線中心軸とは構造上一致しないため、各種の操舵台車が考案されている[10]。
注釈
出典
- ^ a b c MFi 2008, p. 52.
- ^ a b MFi 2008, pp. 53–54.
- ^ MFi 2008, p. 53.
- ^ MFi 2008, p. 50.
- ^ a b MFi 2008, p. 54.
- ^ 稲垣秋介 2005, p. 111.
- ^ a b MFi 2008, p. 57.
- ^ 稲垣秋介 2005, p. 114.
- ^ “雪道の運転 快適なスノードライブの為に”. 2016年10月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月2日閲覧。
- ^ a b 下川嘉之「曲線を円滑に通過するための操舵技術」『計測と制御』第56巻第2号、2017年2月10日、87-92頁、doi:10.11499/sicejl.56.87、2023年12月2日閲覧。
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