労働
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/04 15:33 UTC 版)
概要
人間と自然との関係にかかわるある種の過程[3]、人間が自身の行為によって、自然との関係を統制し、価値ある対象を形成する過程を「労働」と呼ぶ[3]。
人間は古今東西、太古から現代にいたるまで、どの地域でも、何らかの生産活動により生きてきた[4]。そうした生産活動を「労働」と解釈するようになったのは、近代以降である[4]。
生産活動は、いつの時代でも、何らかの表象体系(意味づけの体系)と関わりがある[4]。人間が行っている現実の生産行為とそれを包括する表象とはバラバラではなく、一体として存在する[4]。言い換えると、何らかの生産活動があれば、それを解釈し表現する言葉が伴うことになり、こうした言葉には特定の歴史や世界像(世界観)が織り込まれていると考えられている[4]。“労働について語る”ということは、言葉で織り成された労働表象を語ることでもある。人間が自然との間に、生産活動を通しつつ関係を持つということは、こうした表象に端的に現れているような、ある時代特有の世界解釈を身をもって生きることでもある[4]。(→#歴史)
労働する能力を持つ者を労働力(Labor Force)とよぶ。労働力において最大の割合を占めるのは賃労働をなす雇用者であり、EU諸国では75%以上が雇用者となっている[5][6]。
資本主義社会では、労働は倫理的性格の活動ではなく、労働者の生存を維持するために止むを得ず行われる苦痛に満ちたもの、と考えられるようになった[7]。マルクス主義においては「資本主義社会では、生産手段を持たない多くの人々(=労働者階級)は自らの労働力を商品として売らざるを得ず、生産過程に投入されて剰余価値を生み出すため生産手段の所有者(=資本家階級)に搾取されることになる」と説明されるようになった[3]。(→#歴史)
現在、国際労働機関では、望ましい労働の形としてディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を目標に挙げている。
- ^ 広辞苑 第五版 p.2845
- ^ 大辞泉
- ^ a b c ブリタニカ百科事典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 『哲学思想事典』岩波書店、1998年、1736-1737頁。
- ^ OECD (2019), Self-employment rate (indicator). doi: 10.1787/fb58715e-en (Accessed on 08 September 2019)
- ^ 宇城輝人「働くことと雇われることのあいだ : 賃労働の過去と現在」『フォーラム現代社会学』第11巻、2012年、81-89頁、doi:10.20791/ksr.11.0_81。
- ^ 基本的人権3 東京大学社会科学研究所 東京大学出版会 1968年 p201-202
- ^ 知識ゼロからの聖書 大島力 幻冬舎 2011年 ISBN 9784344902244 p28-29
- ^ a b 水墨創世記 司修・画、月本昭男・訳 岩波書店 2011年 ISBN 9784000237260 p26
- ^ 宗教と資本主義の興隆、上巻―歴史的研究― リチャード・ヘンリー・トーニー著 出口勇蔵・越智武臣訳 岩波書店 1956年 ISBN 9784003421116 p183
- ^ 精神障害のある人の人権 関東弁護士会連合会 明石書店 2002年 ISBN 9784750316215 p39-40
- ^ 読売新聞2020年12月20日付朝刊言論面
- ^ 「多様な正社員」について 厚生労働省
- ^ 国際労働基準(基準設定と監視機構) 国際労働機関
- ^ 筒井淳也、前田泰樹 『社会学入門:社会とのかかわり方』 有斐閣 <有斐閣ストゥディア> 2017年、ISBN 9784641150461 pp.84-87.
- ^ “無償労働”.知恵蔵.コトバンク. 2018年9月18日閲覧。
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品詞の分類
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