リサイクル 取引

リサイクル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 03:58 UTC 版)

取引

回収業者に回収された、資源ごみは分別(不純物を取り除いたり、材質などで分別する)または洗浄されることによって再資源化業者に売却される。これによって回収業者の運営費用・雇用の賃金が賄われているという実態がある。資源ごみは人件費の安い途上国からは一定の買い取り需要があり、主に先進国の回収業者から途上国の再資源化業者へ資源ごみが「輸出」され、輸入された国の再資源化業者が代価を支払うといった貿易関係が存在する。これが後述のリサイクルの課題にも繋がっている。

リサイクル用の資源は、各国の国内で需要と供給が一致しないために貿易が行われる。需給不一致の原因は、 (1) ある製品のリサイクルは同じ製品に使われない場合がある、 (2) 再生資源が発生するタイミングと再生資源を利用したいタイミングが合わない、 (3) 製品が作られた地域と廃棄された地域が異なる、などがある。再生資源の貿易は、資源の有効利用として環境面からも便益があるされる[19]

国連の貿易統計によれば、2015年の再生資源の輸出入を重量順でみると、上位は鉄スクラップ(8900万トン)、古紙(5800万トン)、粒状スラグ(2400万トン)、廃プラスチック(1500万トン)。金額の上位は鉄スクラップ(280億ドル)、銅スクラップ(210億ドル)、貴金属スクラップ(170億ドル)などである[20]

リサイクルの課題

再生品の品質

回収品に不純物が混入すると再生品の品質が落ちる。例えば古紙にラミネートなどが混入していてそれの再生工場での除去がうまくゆかないと再生品の品質が落ちる。そのため、再生業者の不純物の除去の技術の向上や、資源ごみを出す者が分別をしっかり行うことが望まれており、資源の回収を行う自治体や回収業者などによって「分別の徹底のお願い」などの広報がなされることもある。再生品は再生を繰り返すうちに品質が次第に低下する傾向があるので、新しい材料への再生材の混合率を一定程度に抑えるなどの工夫がされる場合もある。[注 1]

リサイクルのエネルギー

一般に、鉱物資源や植物資源から(ゼロから)作るよりはリサイクルに必要なエネルギーは少ないので、リサイクルのほうが経済的であり、またエネルギー効率から見ても有利なことは多い。例えば優秀な例を挙げると、ボーキサイトからアルミの地金を製造するのと比べて、アルミ缶からアルミ地金を作る場合わずか3%のエネルギーで済む(つまり97%の電力を節約できる)。一般に、鉱物資源や植物資源などから製品を製造するのにも大きなエネルギーが必要であるが、リサイクルもエネルギーが無(ゼロ)で済むというわけではなくそれなりに必要となる。リサイクルをエントロピーという観点から分析し課題意識を持つ人もいる。

リサイクルと資源ごみの国際的移動

2010年代中華人民共和国資源ごみの最大輸入国であり、2016年の廃プラスチックの輸入量は730万トンに及んでいた。しかしながら資源ごみに含まれる汚染物質が、リサイクルの過程で国内環境に与える影響は座視できないレベルとなったため、2017年7月18日、中国当局はWTOに対して2018年より廃プラスチックや未分別の古紙などの一部廃棄物の輸入を停止することを通告。2018年1月より実行された[21]。一方、中国の輸入停止を受けて、資源ごみの輸出国であった大韓民国では行き場を失った廃プラスチックなどがだぶつき、既存のリサイクルシステムが打撃を受ける状況も見られた[22]。イギリスでも、リサイクル向けに回収されたプラスチックのほぼ全量を中国に送っていたこともあり、中国の引き受け停止を受けて従来からのリサイクルシステムが崩壊。廃プラスチックの焼却処理を余儀なくされている[23]。日本はこれまで、廃プラスチックの大半を中国に輸出していたが、中国の引き受け停止を受けて、2018年以降、輸出量が減少している。2019年の日本の廃プラスチックの輸出量は前年比10.9%減の89万8000トンだった。廃プラスチックの輸出量は2014年以降減少を続けていたが、100万トンを切るのは2004年(84万9,000トン)以来[24]

新品との価格競争

リサイクル製品は、再利用や再生に要するコストが上乗せされるため、新品との価格競争において不利になることがある。2020年前半、2019新型コロナウイルスの感染拡大などが要因となり原油価格が下落、プラスチック製品の原料が安価になったため、リサイクル製品が新品よりも割高になる現象が見られ、プラスチックのリサイクル自体が滞るようになった[25]

再生過程の汚染

ガーナでの金属スクラップからのの回収

ゴミなどの廃棄物から有価物を取り出す過程で、不適切な処理により有害物質が環境に放出される危険性がある。 発展途上国においてはそういったことは考慮されておらず、環境や労働者が有害物質に暴露し病気や早死ににつながっている。 一例としては、ガーナにおけるケーブルなどの金属スクラップからの銅の回収がある。適正な処理施設を持たないため野焼きによって行われ、大量の汚染物質が放出されている。

リサイクルシンボル

ユニバーサルリサイクルシンボル

国際的に1970年代から、ユニバーサルリサイクルシンボルが用いられている。1988年から「樹脂識別コード」という数字を加えたものも用いられるようになり、プラスチック製品の回収の際の分別の助けとともなっている。


注釈

  1. ^ また、新しく製品を製造する場合でもその原材料に有害物質が混入すると世にそれを拡散させてしまうことがあるが、リサイクルでも回収した資材に有害物質が混入した場合も、やはり薄く広く拡散させてしまうことがある。例えば「コバルト60」の事例がある。

出典

  1. ^ リサイクルという言葉の誕生と変遷、その意義と課題”. 環境省. 2020年6月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 用語の定義”. 経済産業省. 2020年6月5日閲覧。
  3. ^ The action or process of converting waste into reusable material.
  4. ^ a b c d e f Encyclopedia Britanica 。PC用の完全版。
  5. ^ a b c d スーパーニッポニカ「リサイクル」田中勝 執筆。
  6. ^ a b c リサイクルとごみのこと”. 国立環境研究所. 2020年6月5日閲覧。
  7. ^ 田崎智宏、河井紘輔、寺園淳、稲葉陸太 (2021年3月23日). “国立環境研究所循環センター・ポリシーブリーフ3「リサイクル指標」”. 2021年6月13日閲覧。
  8. ^ a b リサイクル率”. アルミ缶リサイクル協会 (2022年6月17日). 2022年9月25日閲覧。
  9. ^ Bahadir, Ali Mufit; Duca, Gheorghe (2009-08-03). The Role of Ecological Chemistry in Pollution Research and Sustainable Development. Springer. ISBN 9789048129034.
  10. ^ Green, Dan (2016-09-06). The Periodic Table in Minutes. Quercus. ISBN 9781681443294.
  11. ^ 一般社団法人日本鉄源協会 (2019年). “日本の鉄鋼蓄積量 Accumulated quantity estimation of Japan”. 2021年12月13日閲覧。
  12. ^ 総務省 (2021年11月). “統計局>統計データ>日本統計年鑑>本書の内容>第七十一回日本統計年鑑 令和4年>第2章 人口・世帯>2-1 人口の推移 B表(Excel)”. 2021年12月13日閲覧。
  13. ^ スチール缶リサイクル協会 (2020年). “リサイクル率”. 2021年11月29日閲覧。
  14. ^ 日本ガラスびん協会. “データ集”. 2022年9月25日閲覧。
  15. ^ Bottle Deposits Responsible for High PET Recycling Rate in Germany
  16. ^ リサイクル率の算出
  17. ^ 日米欧のリサイクル状況比較
  18. ^ Observations of Solid Waste Landfills in Developing Countries:Africa, Asia, and Latin America
  19. ^ 小島 2018, pp. 85–87.
  20. ^ 小島 2018, pp. 48–49.
  21. ^ 中国、年内に「ゴミ」輸入停止へ WTOに通告”. ロイター (2017年7月19日). 2018年4月20日閲覧。
  22. ^ ごみ回収拒否の「大乱」で日本式に納得”. 産経新聞社 (2018年4月12日). 2018年4月20日閲覧。
  23. ^ 中国の「ごみ輸入禁止」、リサイクル業界に変革促すか”. CNN (2018年4月23日). 2018年5月5日閲覧。
  24. ^ 2019年の日本の廃プラ輸出量は90万トン、100万トン割れは2004年以来(世界) | ビジネス短信 - ジェトロ”. www.jetro.go.jp. 2020年2月17日閲覧。
  25. ^ 特別リポート:コロナ禍で「プラ危機」、廃棄増がリサイクル圧迫”. ロイター (2020年10月7日). 2020年10月24日閲覧。






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