作品総論とは? わかりやすく解説

作品総論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/30 08:23 UTC 版)

平義久」の記事における「作品総論」の解説

平の作品一貫して色彩的で繊細な音響中に鋭い緊張感含んでいる。ソロ器楽曲から大規模なオーケストラ曲、あるいは打楽器などのような特殊な編成に至るまで緻密繊細な楽器法管弦楽法駆使し直接認識されない残響の中で緊張感制御する書法長けている静寂中に祈り見出すという自身言葉は、ドビュッシー代表されるフランス近代音楽色彩に関する鋭い感覚と、日本の伝統音楽の持つ音と音の隙間における見えない緊張感駆け引きいわゆる「間(ま)」と呼ばれる)を良く表している。 最初期には上述直接師匠に当たるメシアンデュティユージョリヴェなどの近現代フランス音楽のほか、一部平に関す文献見られるように、一世代上に当たる武満徹湯浅譲二作品(彼らの属したグループ実験工房」は詩人瀧口修造前述秋山邦晴はじめとするメンバーたちの交流によって、その同時代フランス文学芸術には驚くほど精通していた)また同世代日本の作曲家たち、特に八村義夫との相互影響(これは個人的親交といった視点超えて相互作品見られる様々な音響類似点挙げられるだろう。八村の曲では管弦楽曲錯乱論理」やチューブラーベル長い冒頭ソロを含む室内楽曲星辰譜」などを参照のこと)、そして何といって日本には早くから多く情報伝えられていたダルムシュタット夏季現代音楽講習会におけるブーレーズはじめとする初期ダルムシュタット楽派動向無視することは出来なかった。しかしパリに来たことによって逆に平は日本文化再認識直面し以後独特の作風へと到達するそれまで意識して避けていたペンタトニックに基づくメロディライン積極的に用いようになったのは1970年代入ってからだが、これは平本人証言によると文楽パリ公演見たことがきっかけだという。具体的に1973年弦楽三重奏曲ディオプタズからこの兆候顕著に現れる確かに彼の曲の一部分、特に弦楽やピアノパートにおいてはメシアン思わせる房状和音一種独特のメロディライン形成して並んでいるが、これの各行良く見るとペンタトニック思わせる長二度短三度形成しているのが読み取れる。また5や7の数に基づくリズム書法多く見られるが、これも本人の言によると和歌など日本語韻律に基づくのだという。しかしこれはペンタトニック和歌韻律あからさまな引用ではなく、むしろ音響不合理リズム追求した上で到達点と見るべきであり、日本文化の影響という視点ではやはり前述通り残響含まれる緊張感という次元捉えるきだろう1980年代に入ると、大規模な作品影を潜め音響激し断絶よりは高度に調和取れた和声法管弦楽法に基づく連続的かつ流動的な書法変化していった。2000年NHK-FM海外現代音楽特集での猿谷紀郎解説では、丁度その時放送された平の中規模室内アンサンブル曲「デルタ」が1980年代以降彼の音楽プロトタイプに当たると述べていたが、まさにその頃からの書法変化は「ポリエードル」などの管弦楽曲良く現れている。室内楽曲でも、編成として好んで用いたフルートピアノなどの楽器法のこれらの年代における変化容易に読み取れるだろう。晩年の「彩雲」や「レトゥール」ではさらにこの流動的な書法顕著になっているが、しかし決し安易な過去音楽への回帰例え明らかな調性感や単純な反復によるリズム感など)には手を染めなかったことは、彼の作曲対す厳格な態度一貫させたと言えるだろう。

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作品総論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 03:40 UTC 版)

オウィディウス」の記事における「作品総論」の解説

オウィディウス旧来の捉え方は、恋愛エレギーア詩という文学ジャンル掉尾を飾る詩人であって恋愛エレギーア詩の決まりごと自家薬籠中のものとして多彩な詩を詠んだ詩人というものである確かにオウィディウス作品では栄誉名声といった叙事性よりも、個人的感情といった叙情性主題性に重き置かれるが、これはアウグスティヌス帝による帝国全土平定によりもたらされ相対的な安定時代反映したエレギーア詩の様式美であるというのが定説である。 この点で、オウィディウス作品通して示される詩人ペルソナは、カトゥッルス、ティブッルス、プロペルティウスら、他の標準的なエレギーア詩人同じようなものである。ところが、 詩人熱を上げる貴婦人コリンナ作品の内容との関連は薄い。また、テクスト込め感情真に迫ったものとするために、オウィディウスが独自の工夫行った痕跡は、他のエレギーア詩人よりも弱い。また、コリンナ実在人物とすれば誰に当たるのかという問題は、手がかり何もない。以上のようなことから、コリンナ実在人物ではなく詩人と彼女の関係は作品創造するための文学的虚構であると考えられている。コリンナはエレギーア詩というジャンルそれ自体アレゴリー擬人化)であるという解釈なされている。 なお、カトゥッルス、ティブッルス、プロペルティウスらの恋愛詩は個人的体験に基づくものであるとされているが、彼らの作品を「自伝として」読むことの是非には、学術的な論争絶えないポイントである。彼らの詩が自伝的ないし客観的事実との関係を少ししか持たないという考えは、エレギーアを研究する現代古典学者のほとんどが認めるようになっているオウィディウス伝統的なエレギーア詩の形式巧みに用いて創意あふれた恋愛詩を詠い、恋愛という主題入念に掘り下げた詩人であると考えられてきた。例えば、クインティリアヌスオウィディウスを「ふざけて陽気な哀歌詩人」と読んだオウィディウス作品には、古い形式新しい方法用いた作例いくつかある。例え『愛の歌』1.6 では「パラクラウシテュロン(英語版)」という古めかしいモチーフ用いた他方で、オウィディウス以前同様の作例がまったく見つからないエレギーア詩もあり、例えば、コリンナ髪染め失敗してしまったときの歌(Am. 1.14)がこれに相当する。これらはオウィディウス独自の文学的革新考えられている。 また、オウィディウスは他のエレギーア詩人たちより性的主題を詩の中で赤裸々表出し詩人であるとも考えられてきた。取り上げられ性的主題論点多種多様である。『愛の歌』ではオウィディウス自身コリンナ恋愛焦点当てられ神話伝説上の人物の恋愛『名婦の書簡』主題であった『恋の技法』その他の教訓詩形式の詩では「科学的見地から異性と関係を持ち誘惑する方法の手引きを提供したオウィディウスのエレギーア詩の中には数え上げ効果的な驚き挿入一時的な比喩多用といった表現技法見られ、これらはオウィディウス受けた修辞学教育影響があるとする研究もある。 『祭暦』のような恋愛エレギーア詩でない作品においても、オウィディウス恋愛エレギーア詩好み影響顕著であると、よく注釈される。オウィディウスのエレギーア様式は、叙事詩様式明確に区別されるドイツ古典文献学者リヒャルト・ハインツェ(英語版)(1867 - 1929)は著書 Ovids elegische Erzählung (1919) の中で、ケレースプロセルピナ神話のように『祭暦』『変身物語』両方で同じ神話扱われている場合両者比べてどのような様式違いがあるか、明らかにした。ハインツェによると「エレギーア詩においては感傷的柔和な雰囲気横溢しており、六歩格語り口特徴付けるものは厳粛さ畏怖の念である」という。アメリカ古典学者ブルックス・オウティス(英語版)(1901 - 1977)はハインツェの議論おおむね受け継いで以下のように述べている。 神々叙事詩においては「まじめ」でありエレギーア詩においてはそうでない。エレギーア詩の短く区切った饒舌語り口比較すると、叙事詩台詞回し長く頻度少ない。オウィディウスは、エレギーア詩を詠うときは地の文から読者登場人物への親しみ感情があふれ出てくるような詩を詠むのに、叙事詩のときは素の自分を隠す。とまれ、叙事的語り延々と続き均整取れた語りであるかもしれない対してエレギーア詩の語りには均整欠いた文体見られる。 オウティスはまた、オウィディウス恋愛詩において詩人は「新しテーマ開拓するよりむしろ古いテーマ戯画化している」ことを指摘している。オウティスによると『名婦の書簡』はもっとまじめであり、そのうちいくつかのエピソードは「オウィディスの他の作品大きく異なり中略)非常に慎重な歩み重ねている」。それは男に捨てられた女という主題が、ヘレニズム詩や新ヘレニズム詩(英語版)において積み重ねられてきた主題であったという事実に関係している、という。 オウティスによると、『名婦の書簡』パイドラー、メーデーア、ディードーヘルミオネーエピソードは、エウリーピデース作品ウェルギリウス作品の「巧み修正版である」という。くだんのウェルギリウス作品『名婦の書簡』とを比較研究した研究者によると、ウェルギリウス作品曖昧矛盾しているのに対しオウィディウス作品明確さに富むという。また、ウェルギリウス作品が詩を詠むこと自体目的になっているのに対しオウィディウス作品において詩人最小限言葉表現をしているという。

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