『恋の技法』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 08:06 UTC 版)
Si quis in hoc artem populo non novit amandi, hoc legat et lecto carmine doctus amet.Book 1 Verse 1, 2: 「愛の手管を知らぬなら、わたしの本を読みたまえ、いずれは愛の博士とならん」 『恋の技法』(Ars Amatoria、アルス・アマトリア、恋の手管)全3巻はエレギーア韻律の教訓詩の様式を換骨奪胎し、異性を誘惑し愛する手管をレクチャーする内容となっている。第1巻は男性に向けて女性を誘惑するハウツーを教える。第2巻も男性向けに、愛人を自分に惹き付けておく方法について教える。第3巻は女性に向けて男性を誘惑する手管を教える。第1巻はウェヌスへの祈願文で幕を開ける。そのなかでオウィディウスは自らのことを 「恋愛教師」(praeceptor amoris)と位置づける (1.17)。そのオウィディウスによると、恋愛の相手を見つけられる場所は劇場や闘技場、気になる娘をものにする方法としては宴会の席でこっそり誘惑するなどの方法がある、という。また、適切な時間を選ぶことは重要である、早すぎても遅すぎてもいけない。目当ての娘の友だちの信頼を得ることも同様に重要である、という。 詩人は愛する人のために身体の手入れを怠るなと強調する。第一巻ではその他、サビニの女たちの略奪、パーシパエー、アリアドネーといった神話伝説に話が及ぶ。第二巻は冒頭でアポローに祈りが捧げられ、イーカロスの伝説を物語ることで幕を開ける。過剰な贈り物は禁物、外見を美しく保つこと、醜聞は隠すこと、意中の相手にお世辞を言うこと、彼女の奴隷たちに好感を持たれるように振る舞い、ご主人の機嫌を取ってもらうこと。以上のようなアドバイスが男性に向けて詩人からなされる。また、生殖を司るウェヌスを粗略に扱わぬこと、恋人を惹き付けておくためのアポローの助けといったことにも話が及び、ウェヌスとマールスを捕まえたウゥルカーヌスの罠の話に脱線する。第二巻は詩人が「生徒たち」に(ぜひとも意中の女性をものにして)師の名声を広めてくれることを望むと言って終わる。 第三巻の冒頭で詩人は女性の能力を擁護する。そして、前二巻で詩人が世の男性に教えたことに対して、女性にも理論武装してもらうことで解決にしたいと述べる。詩人は、身を飾る品が多くなりすぎない方がいいとか、恋愛エレギーア詩を読むといいとか、卓上遊戯の遊び方を習うといいとか、事細かにアドバイスする。さらにはいろんな年代の男と寝ること、浮気すること、そして、しらばっくれることをやってみなさいと言う。第三巻を通して詩人は、それまでに男性に向けて教訓詩風に詠んだ恋愛指南を取り消すような自己批判をそこかしこに挿入する。また、プロクリスとケパロスの神話に言及する脱線を行う。最後に詩人は女性たちに向けて、我が助言通りに事を進め、"Naso magister erat,"(ナーソーさんが私の先生よ)と言って、我が名声を広めてくれることを望むと述べて締め括る。
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