ネーション・オブ・イスラムとは? わかりやすく解説

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ネーション・オブ・イスラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/10 20:43 UTC 版)

ネーション・オブ・イスラム英語: Nation of Islam, NOI)は、アメリカ合衆国におけるアフリカ系アメリカ人イスラーム運動。イスラーム系教団。後述するように伝統的なイスラームの教義を大きく否定しているため、イスラーム団体というよりも、イスラームから派生した新興宗教と見なされている。

概要

ネーション・オブ・イスラムのメンバー。彼らは集会時に黒いスーツや軍装風の服を着用することで知られる。

本組織はブラック・ムスリム・ムーヴメント (Black Muslim Movement) とも呼ばれ、世界恐慌中の1930年デトロイトマフディー救世主)を名乗ったウォーレス・ファラド・ムハンマド英語版アフガニスタン出身とされている)によって創始された。黒人の経済的自立を目指す社会運動であり、白人社会への同化を拒否し、黒人の民族的優越を説く宗教運動でもある。

ファラドは聖書を否定し、アフリカ系アメリカ人の神はただアッラーフのみであり、奴隷化される以前の宗教キリスト教ではなくイスラーム教であったのだと説き、白人に対する民族 (ネーション) としての黒人のアイデンティティを主張した。彼は1934年に謎の失踪を遂げるが、その創立したテンプル・オブ・イスラームと呼ばれる教団はイライジャ・ムハンマド英語版が後継し、発展していった。

イライジャは、マーティン・ルーサー・キング牧師率いる公民権運動が目指す白人と黒人の融和ではなく、住み分けによる分離主義を説き、アメリカ合衆国内に黒人国家樹立を求めて、そのための土地の割譲を要求した。また、黒人を白人より優れた人種だとする「黒人至上主義」(黒人ナショナリズム)を唱えた。これらの目的を達成するためには、同じく白人社会からの黒人排除や白人国家建設を求めるKKKアメリカ・ナチ党といった白人至上主義団体との協力も辞さなかった。

イライジャ・ムハンマドの布教によって特にアメリカ北部の黒人の間に広がった NOI は、第二次世界大戦後に入信したマルコム・Xの活躍で大発展を遂げる。イライジャの思想の宣伝活動者となったマルコムは、黒人の貧困救済を唱えて北部の都市部で苦しむ黒人たちの間に勢力を広げる一方、白人を悪魔と呼んで激しく批判した。このため、NOI は Black Muslims と呼ばれ、公民権運動によって権利向上を目指していた黒人を含め、アメリカ社会全体から過激派や分離主義者と見られることが多かった。そこには白人優勢のメディアが大きな影響を与えていたと考えられる。

1960年代に入るとマルコム・Xとイライジャ・ムハンマドの関係が悪化し、マルコムは教団を追放されて伝統的イスラーム(スンナ派)に回帰(当のマルコム・Xは1965年当教団の暗殺指令を受けた信者により銃殺英語版されている)。また、教団よりクラレンス13X英語版の名を与えられていたクラレンス・エドワード・スミスもマルコム・Xとイライジャ・ムハンマドの関係悪化に嫌気を指して仲間を率いて離脱し、世界を10%のエリートが85%を支配して無知な状態に置いていると説き、自らをその85%を啓蒙する知識を持った残りの5%であるとして5パーセントネーション英語版を1963年に結成した。アメリカのヒップホップ・ミュージシャンには信仰している者が多く歌詞に登場することがある。

イライジャも1975年に死去し、後を継いだ息子のワリス・ディーン・ムハンマド英語版は、父の残した教義から伝統的なスンナ派イスラムの教義と齟齬のある部分を排除し、黒人分離主義的な運動をやめて合衆国への忠誠を説き始め、教団名も "American Muslim Mission" (アメリカ・ムスリム伝道団)、後に"American Society of Muslims"(アメリカ・ムスリム協会英語版)に改めたが、彼が引退した2003年に組織は解散している。

一方で、組織の急激な穏健化に不満を抱いたルイス・ファラカン英語版を中心とする人々は分派を結成。ファラカンはイライジャの思想を継承し、黒人の社会運動と社会に対する過激な発言や行動を続けている。現在、NOI と呼ばれている組織はファラカン派が発展したもので、1995年にはワシントンD.C.で大デモ活動「百万人大行進」 (Million Man March) を行って健在を示した。ファラカンは2012年現在も組織を率いている。信徒数は公表されていないが、ニューヨーク・タイムズの推計では2007年時点で2万から5万人の間であろうとしている[1]黒人至上主義反ユダヤ主義な主張も目立ち、極右団体として警戒されることもある。ファラカンは、2019年、その過激な主張から、Facebookのアカウントを停止させられた[2]

教義

伝世界の多くのムスリムは、独特の教義を持つ NOI の信者をムスリムであると認めないことが多い。

以下の点では、NOI は伝統的イスラームと一致する。

しかし、以下のような大きな相違点がある。

  • 黒人至上主義(黒人ナショナリズム)
    • 伝統的イスラームは、全ての人間は神によって創造されたアダムイヴの子孫であり、人種は平等であると説く。
    • NOI は、アダムとイヴが創造される前にアッラーフによって先に黒人が創造されたと説く。
  • 預言者・使徒
    • イスラームは、ムハンマドが最後にして最大の預言者かつ使徒であるとし、以降の世界に預言者はもちろん使徒も現れないと説く。
    • しかしNOI は、ムハンマドが最後の預言者であるが、イライジャ・ムハンマドは使徒であると説く。
  • マフディー
    • シーア派の多くは、千年近くガイバ(お隠れ)であり、最後の審判の際にイーサーと前後して再臨する最終代のイマームこそがマフディーであると説く。
    • NOIは、1930年代に現れたウォーレス・ファラドこそがマフディーであると説く。

脚注

  1. ^ MacFarquhar, Neil (2007年2月26日). “Nation of Islam at a Crossroad as Leader Exits”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2007/02/26/us/26farrakhan.html?pagewanted=all 
  2. ^ “フェイスブックが極右活動家らに利用停止措置 憎悪対策の一環”. AFPBB News. (2019年5月3日). https://www.afpbb.com/articles/-/3223462 2019年5月3日閲覧。 {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)

参考文献

関連項目

外部リンク


ネーション・オブ・イスラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/28 07:19 UTC 版)

サンフランシスコにおける人民寺院」の記事における「ネーション・オブ・イスラム」の解説

ジョーンズは、ネーション・オブ・イスラム(英語: Nation of Islam (NOI))を人種差別主義、かつ性差別主義であると見做しており、サンフランシスコのウエスタン・アディション(英語版)で近接している位置所在していることもあって、ネーション・オブ・イスラムと人民寺院の間で暴力を伴う抗争発生することを危惧していた。彼は、教団サンフランシスコ本部での火災について、ネーション・オブ・イスラムが原因であると主張し緊張煽った人民寺院信者のアル・ミルズが、ネーション・オブ・イスラムの構成員写真撮影したことで口論となった後、ジョーンズ警告発するために、屈強なアフリカ系アメリカ人人民寺院警備員をネーション・オブ・イスラムのモスク送り込んだしかしながら、ネーション・オブ・イスラムとの関係は後に改善された。亀裂修復するために、2つ組織1976年ロサンゼルス・コンベンション・センター歴史的な「スピリチュアル・ジュビリー」(英語: Spiritual Jubilee)を開催した。何千人もの人々市民センター埋め尽くし人民寺院信者赤と黒の服、ネーション・オブ・イスラムの信者は白の服を着ていた。人民寺院支援者のグッドレット、フレイタス、アンジェラ・デイヴィスが、カリフォルニア州副知事のマーヴィン・ダイマリー(英語版)、ロサンゼルス市長のトム・ブラッドリー(英語版と共にこのイベント参加したジョーンズ演壇上がると、堂々とした人民寺院の「赤旅団」(英語: Red Brigade)の警備員が、演壇前に半月の形に整列し、ネーション・オブ・イスラムの警備員肩を並べて立っていた。歓声上げ聴衆落ち着かせた後、ジョーンズ次の様に述べている。「私たちは、この2つ象徴的な融和感謝しています...人民寺院とネーション・オブ・イスラムが一つに集まることが出来れば誰もが集まることが出来るのです...数年前であれば私たち緊張為に通りを歩くことさえ出来なかったのです」

※この「ネーション・オブ・イスラム」の解説は、「サンフランシスコにおける人民寺院」の解説の一部です。
「ネーション・オブ・イスラム」を含む「サンフランシスコにおける人民寺院」の記事については、「サンフランシスコにおける人民寺院」の概要を参照ください。

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