説得 説得の神経生物学的考え

説得

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/18 06:12 UTC 版)

説得の神経生物学的考え

態度と説得は社会行動英語版(social behavior)に関する中心的課題の一つである。従来からの関心を引くテーマの一つとして、態度が行動を予兆するのがいつなのか、という古典的な問題が挙げられる(そこでいう「行動」には社会学的なものも生物学的なものも含まれる)。神経生物学(Neurobiology)におけるこれまでの研究により、前頭前皮質の左部のみが選択的に活性化することが、態度がそれと連動する行動の前兆となっている、という見通しを強める可能性があるということが判明した。この説は脳側面部の注意深い処置lateral attentional manipulation)によって裏付けられている[6]

初期の論文では、前頭前野脳波の測定値に関する非対称性(偏り)EEG measures of anterior prefrontal asymmetry)が説得行動の前兆となり得ることが示された。まず、研究に関する実験を行ううえで、被験者に対して彼らが取る態度に合致する主張と対立する主張をそれぞれ提示した。すると、左前頭前野(left prefrontal areas)の脳活動が比較的活発な人間は(アルファ波成分が増加)、同意できる主張に最大限の注意を払うのに対し、一方、右前頭前野(right prefrontal area)の方がより活発な人間は意見が合わない主張に注意を払う、ということが分かった[7]。これは防衛的な抑止の一例、すなわち不快な情報の回避もしくは忘却である。防衛機制の特性が左前頭前野の相対的活性化に関連しているという研究が示された[8]。加えて、意見の同意と不同意という概念の恐らく共鏡である、心地よい言葉と不快な言葉を作業する人物に各々投げかけられていると思われる場合、心地よいフレーズに対しては同じく左前頭前野が率先して活性化されることがfMRIのスキャン結果から判明している[9]

従って、相手を説得する効果を上げる一つの方法は、右前頭前皮質の脳活動を選択的に活性化することであると考えられる。これは片耳へのモノラル刺激monaural stimulation to the contralateral ear)によって容易に達成され得る。この効果の成否は最早単なる刺激の原因というよりも寧ろ注意を選択的に引き付けること次第であるのは明らかである。この人身掌握術は期待される結果をもたらした。事実、左側からメッセージを吹き込むことで説得の効果が増した[10]

この他、脳活動の差異と、感情や認知行動との関係性を述べた研究並びに論文が存在する。詳しくは英語版記事"activation of prefrontal cortex"を参照。


  1. ^ Cialdini, Robert B. (2001). Influence: Science and Practice英語版(4th ed.). Boston, MA: Allyn & Bacon英語版. ISBN 978-0321011473 
  2. ^ G. Richard Shell, Mario Moussa (2007). The Art of Woo: Using Strategic Persuasion to Sell Your Ideas. NY, USA: Portfolio. ISBN 978-1-59184-176-0 
  3. ^ Matthew York (2011年10月). “Viewfinder: Persuasion”. www.videomaker.com. 2011年12月2日閲覧。
  4. ^ Cialdini, Robert B. (2007). Influence: The Psychology of Persuasion英語版(Revised edition). NY, USA: HarperCollins Publishers. ISBN 978-0061241895 
  5. ^ 深田博己、木村堅一、牧野幸志、樋口匡貴、原田耕太郎、山浦一保 (2000). “わが国における説得研究の展望(1)”. 広島大学教育学部紀要 (ir.lib.hiroshima-u.ac.jp): 145. http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/metadb/up/kiyo/AA11550246/BullFacEdu-HiroshimaUniv-Pt3_49_145.pdf. 
  6. ^ Drake, R. A., & Sobrero, A. P. (1987). “Lateral orientation effects upon trait behavior and attitude behavior consistency”. Journal of Social Psychology英語版 (6): 639-651. 
  7. ^ Cacioppo, John T.英語版, Petty, Richard E.英語版, & Quintanar, Leo R. (1982). “Individual differences in relative hemispheric alpha abundance and cognitive responses to persuasive communications”. Journal of Personality and Social Psychology英語版 (APA) (3): 623-636. doi:10.1037/0022-3514.43.3.623. http://psychology.uchicago.edu/people/faculty/cacioppo/jtcreprints/cpq82.pdf. 
  8. ^ Tomarken, Andrew J., & Davidson, Richard. J.英語版 (1994). “Frontal brain activity in repressors and nonrepressors”. Journal of Abnormal Psychology英語版 (APA) (2): 339-349. http://psyphz.psych.wisc.edu/web/pubs/1994/Frontal_brain_activation.pdf. 
  9. ^ Herrington, John D., Mohanty, Aprajita, Koven, Nancy S., Fisher, Joscelyn E., Stewart, Jennifer L., Banich, Marie T., et al (2005). “Emotion-modulated performance and activity in left dorsolateral prefrontal cortex”. Emotion英語版 (APA) (2): 200-207. doi:10.1037/1528-3542.5.2.200. http://psych.colorado.edu/~mbanich/p/EmotionModulated.pdf. 
  10. ^ Drake, R. A., & Bingham, B. R. (1985). “Induced lateral orientation and persuasibility”. Brain and Cognition英語版 (Waltham: Academic Press英語版): 156-164. 


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