国勢調査 調査内容

国勢調査

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 05:21 UTC 版)

調査内容

調査項目

国勢調査の調査項目に関しては、国際連合の「人口及び住宅センサスに関する原則と勧告(第2版)」に国際的な専門家の検討を踏まえて世界各国が調査することが望ましい項目とその背景の考え方などが定められており、世界の国々はおおむねこれ沿って調査項目を定めている[3]

調査項目の選定に当たっては、主として

  • 国における優先順位
  • 国際比較性
  • 設問の適切性
  • 所要の財源確保

の観点を考慮すべきであるとされている。そして、具体的な調査項目の候補として、特に重要とされる「コア」の項目が20余り、ほかに可能であれば調査することが望ましい附帯あるいは補助の項目が20余り挙げられている。

調査項目数は国によって差異があり、日本の2010年国勢調査では20項目、アメリカ合衆国の2010年国勢調査では10項目(2000年は約50項目)、イギリスの2001年の国勢調査では約40項目などとなっている。日本の国勢調査の調査項目数は、世界的に見ると少ない部類に属する。

イギリスでは宗教の記入欄もあり、オーストラリアニュージーランドなどイギリスの法律に影響を受けたイギリス連邦諸国でも調査が行われている。2001年には国勢調査で宗教を「ジェダイ」と回答する動きにより、これらの国の宗教調査が影響を受けた。

オーストラリアでは出身国、結婚の有無や収入、持ち家比率、自宅の広さやローン支払いの有無、宗教、使用言語なども調査を行っている[8]

なお、このような国際連合による国際基準が取りまとめられる以前の国勢調査について歴史的に見ると、調査項目は、その当時の国家が必要であったものが調査されていた。性別や職業、結婚や嫡子・被嫡子、軍人か非軍人か、言語、精神障害、人種、民族宗教など、様々な項目がある。

調査期間

初期の国際的な指針としては、国際統計学会(1853年設立)が「10年以内」と定めている[4]。初期の頃は「5年周期」や「3年周期」など、各国がまちまちな状態にあった[4]

今日、国際連合の「人口及び住宅センサスに関する原則と勧告(第2版)」では、国勢調査は「少なくとも10年に1回」の割合で実施することを勧告しており、国の人口事情等によってはより頻繁に実施することが望ましいとしている。また、実施時期としては、国際比較性を向上させるため、西暦の末尾が「0」の年、あるいはその近辺で実施することが望ましいとしているが、各国の事情を優先することを容認している。国際連合統計委員会では、2005年から2014年の10年間を「2010年世界人口センサス計画」(The 2010 World Programme on Population and Housing Censuses)の期間としている[3]

日本の国勢調査は、1920年に第1回が実施されて以来、終戦の年の1945年を除いて[注釈 1]西暦の末尾が「0」又は「5」の年の10月1日現在で実施されている。「0」の年の調査は「大規模調査」と呼ばれ、「5」の年の調査は「簡易調査」と呼ばれている。「大規模調査」と「簡易調査」の違いは基本的には調査事項数であり、後者は前者の調査事項の一部を省略して実施されている。日本の2010年国勢調査は、国際連合の「2010年世界人口センサス計画」のちょうど中央の時期に実施されるものである。

調査項目の運用

国勢調査の調査項目は次のよう設定されている。

  • 世帯主との続き柄、配偶者の有無
  • 男女の別、出生の年月
  • 教育
  • 従業地又は通学地
  • 勤め先・業主などの名称及び事業の内容、本人の仕事の内容

2020年10月の日本国の国勢調査の調査票

  • 世帯について
    • 世帯員の数(総数 男 女)
    • 住居の種類(持ち家、都道府県・公社等の賃貸住宅、民営の賃貸住宅、給与住宅(社宅・公務員住宅など)、住宅に間借り、会社等の独身寮・寄宿舎、その他 のうち1つ)
  • 世帯員全員について
    • 氏名及び男女の別
    • 世帯主との続き柄(世帯主又は代表者、世帯主の配偶者、子、子の配偶者、世帯主の父母、世帯主の配偶者の父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、他の親族、住み込みの雇人、その他 のうち1つ)
    • 出生の年月
    • 配偶者の有無(未婚(幼児などを含む)、配偶者あり、死別、離別 のうち1つ)
    • 国籍(日本、外国(国名) のうち1つ)
    • 現在の場所に住んでいる期間(出生時から、出生時から以外(1年未満、1~5年未満、5~10年未満、10~20年未満、20年以上) のうち1つ)
    • 5年前(平成27年10月1日)にはどこに住んでいましたか(現在と同じ場所、同じ区・市町村内の他の場所、他の区・市町村、外国 のうち1つ)
    • 教育(在学中・卒業(小学、中学、高校・旧中、短大・高専、大学、大学院)、未就学(幼稚園、保育園・保育所、認定こども園、乳児・その他) のうち1つ
    • 9月24日から30日までの1週間に仕事をしましたか(主に仕事、家事などのほか仕事、通学のかたわら仕事、少しも仕事をしなかった人(仕事を休んでいた、仕事を探していた、家事、通学、その他(幼児や高齢など)) のうち1つ)
  • 就業者・通学者について(9月24日から30日までの1週間に仕事をしましたか で、主に仕事、家事などのほか仕事、通学のかたわら仕事、通学 のうち1つに記入したひと)
    • 従業地又は通学地(自宅(住み込みを含む)、同じ区・市町村、他の区・市町村 のうち1つ)
    • 従業地又は通学地までの利用交通手段(徒歩のみ、鉄道・電車、乗合バス、勤め先・学校のバス のうち該当するものすべて)
  • 就業者について
    • 勤めか自営かの別(雇われている人(正規の職員・従業員、労働者派遣事業所の派遣社員、パート・アルバイト・その他)、会社などの役員、自営業者(雇人あり、雇人なし)、家族従業員、家庭内の賃仕事(内職) のうち1つ)
    • 勤め先・業主などの名称及び事業の内容
    • 本人の仕事の内容

注釈

  1. ^ その代わり1947年臨時国勢調査が行われた。(出典:『むつ市史 年表』(むつ市・1988年12月20日発行)794頁「現代 昭和22年(1947)」より)

出典

  1. ^ 国勢調査」『デジタル大辞泉https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%9B%BD%E5%8B%A2%E8%AA%BF%E6%9F%BB/2020年9月23日閲覧 
  2. ^ センサスの語源”. 2021年11月20日閲覧。
  3. ^ a b c d 『Principles and Recommendations for Population and Housing Censuses, Revision 2』United Nations 2008年
  4. ^ a b c d e f g 『近代統計制度の国際比較』安本稔編集 2007年12月 日本経済評論社 ISBN 978-4-8188-1966-5
  5. ^ 統計局ホームページ/国勢調査のあゆみ”. www.stat.go.jp. 2024年1月30日閲覧。
  6. ^ 『United Nations Fundamental Principles of Official Statistics』United Nations 1994年
  7. ^ Barshad, Amos (2019年10月17日). “In Lebanon, a Census Is Too Dangerous to Implement” (英語). ISSN 0027-8378. https://www.thenation.com/article/archive/lebanon-census/ 2021年4月10日閲覧。 
  8. ^ 2007年6月29日付配信 NNAニュース





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