ショッピングセンター ショッピングセンターの概要

ショッピングセンター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 09:01 UTC 版)

トロント・イートン・センター

特に大規模なものはショッピングモール: shopping mall)とも呼ばれる[注釈 1]

単独出店と比べ、顧客吸引力が強くでき、駐車場や荷捌き施設などが共用できる。また、開発業者が建物を所有する形態であると小売業者の初期投資が軽減できる。

定義

日本ショッピングセンター協会は、ショッピングセンターを下記の通り定義している[2]

ショッピングセンターとは、一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体 で、駐車場を備えるものをいう。その立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便性、快適性、娯楽性等を提供するなど、生活者ニーズに応えるコミュニティ施設として都市機能の一翼を担うものである。

SC取扱い基準

SCは、ディベロッパーにより計画、開発されるものであり、次の条件を備えることを必要とする。

  • 小売業の店舗面積は、1,500m2以上であること。
  • キーテナントを除くテナントが10店舗以上含まれていること。
  • キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500m2以上である場合には、この限りではない。
  • テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。

2016年末現在で、日本では3211箇所、店舗面積は5172万4612m2、テナント数は15万9066店に及ぶ[3]

上記の定義にあてはめると、帝国ホテルアーケード成田国際空港などもショッピングセンターのひとつとして数えられる[4]

なお、繊研新聞社はショッピングセンターを「施設(ディベロッパー)が施設内に店を構える企業(テナント)から家賃を受け取って管理・運営する『不動産賃貸業』」と定義し、百貨店量販店などの(自らが販売を行う)小売業とは異なるとしている[5]

歴史

ウェスト・エドモントン・モール
世界最大規模のショッピングモール「ドバイ・モール

起源

2世紀ローマ建設された「トラヤヌスの市場」が人類史上初のショッピングセンターとされる[6]

原型

近代的なショッピングセンターとしては、1922年アメリカ合衆国カンザスシティで始まった、不動産業者・J.C.Nicolsによる「カントリー・クラブ・プラザ」が最初のものといわれている。その後の1950年前後からは車社会化郊外住宅の発展を背景として、1948年にはオハイオ州コロンバスの不動産業者・Doncasterが開いた「タウン・アンド・カントリー・ショッピング・センター」、ワシントン州シアトルでJ.B.Douglasが開いた「ノースゲート・ショッピング・センター」が今日のショッピングセンターの原型となった。

発展〜現在

その後、1956年にDayton Hudsonがアメリカのミネアポリス郊外に、最初の完全な共同店舗型のモール(下記参照)として「サウスデール・センター」を開いた。これは一個の街と呼べる巨大なもので、駐車場が広い上、ミネソタ州の厳しい冬でも快適に多数の店を回る買い物ができるため、ミネアポリス都市圏のみならず複数の州から買い物やイベントを楽しむ客が集まった。

1981年カナダアルバータ州エドモントンに開業した「ウェスト・エドモントン・モール」は、1998年に第4期工事が完成した段階で総床面積49万3000m2、店舗数800超でホテル、遊園地、水族館等を備え、年間2000万人の入場者を数える大規模なもので、世界最大のショッピングセンターとして『ギネスブック』に記載された[7][8]2004年以降「金源時代ショッピングセンター」や「華南MALL」、「SMモール・オブ・アジア」など、中国東南アジア各地に更に大規模なショッピングモールが建設されている[9]

2008年10月31日ドバイに世界最大規模のショッピングモール「ドバイ・モール」が正式開業。総面積約111万5000m2、屋内フロア約55万m2、小売店舗数約1200、屋内水族館やスケートリンク、映画館等を備える[10]

日本での歴史

プラザハウスショッピングセンター
フィンランドヘルシンキイタケスクス英語版にあるショッピングセンター

1954年昭和29年)にアメリカ合衆国統治下の沖縄において「プラザハウスショッピングセンター」がオープンしている。

1964年(昭和39年)にダイエーが、大型商業施設の実験的な意味で、大阪府豊中市にオープンした「ダイエー庄内店」(現・グルメシティ庄内店)が、実質的には日本初のショッピングセンターである。1968年(昭和43年)にはダイエー香里店2005年閉店)がオープン。日本初の本格的な郊外型ショッピングセンターが誕生した。これ以降、車社会化に対応したショッピングセンターが増加していった。

1980年代以降、日本においても車社会化がさらに進行。郊外や農村部の幹線道路沿いでは、農地転用や産業構造の変化に伴い閉鎖された大規模工場跡地で、広大な敷地と駐車場を確保した大型ショッピングセンターの出店が盛んになった。特に日米構造協議規制緩和を経て、大規模小売店舗法(大店法)が廃止され、大規模小売店舗立地法(大店立地法)が制定された2000年平成12年)以降、数と規模は大きく増えた。

中でもモール型ショッピングセンターは、1つの建物に数多くの専門店やアミューズメント店やシネマコンプレックスを揃えた大規模なもので、1日中滞在できる「時間消費型」の施設として、この時代の大型ショッピングセンターの代名詞ともなった。

しかしながら、大型商業施設が商店街や近隣自治体に悪影響を与えるとして、2006年(平成18年)にまちづくり3法が改正され、店舗面積1万平方メートルを超える郊外型施設について、建設の抑制がかけられた。

商店街から買い物客を吸引したショッピングセンターでも、施設間相互やインターネット通販との競合、老朽化や陳腐化などによって売上高の低迷する例は珍しくない。このため閉鎖されたり、運営企業や買収した他社による改装などを経て、再開されたりする例もある[11]

種類

店舗面積などの規模によって「リージョナル型ショッピングセンター」、「コミュニティ型ショッピングセンター」、「ネイバーフッド型ショッピングセンター」の3種類に分類される[12]

リージョナル型ショッピングセンター

略称は「RSC」。店舗面積4万m2以上、半径8 - 25km程度の広域を基本商圏とする大型ショッピングセンター(大型SC、ショッピングモール)。総合スーパー(GMS)や百貨店などを核店舗にした「1核1モール型」や、それらの核店舗に映画館家電量販店など、集客性の高い大型専門店を加えて副核店舗へ集約し、相互の中間にモールを設置する「2核1モール型」を形成している施設などがある。専門分野の有名専門店、飲食店、サービス店、アミューズメント店など多種にわたる店舗が並び、その施設だけで1日買い物を楽しむ事を目的とした時間消費型の施設である。

また、埼玉県越谷市イオンレイクタウンなど、リージョナル型よりさらに広範囲を商圏とする超大型SCの「スーパー・リージョナル型SC」は店舗面積10万m2以上で基本商圏も8kmから40km程度まで設定している[要出典]施設も存在する。

コミュニティ型ショッピングセンター

略称は「CSC」。店舗面積1万 - 3万5000m2程度、半径5 - 10km程度の地域を基本商圏とし、総合スーパー(GMS)やディスカウントストアなどに専門店が出店する中規模のショッピングセンター。日本では大店法廃止以前の総合スーパーといえばこの形態が多く、専門店は最寄品やサービス店などが中心である。近年ではこういった旧来型の店舗にモールの増築を行いリージョナル型に拡張された施設もある。

近年、アメリカでは郊外の富裕層が多い地域にリージョナル型SCから厳選した専門店を集めたコミュニティ型SCサイズの「ライフスタイルセンター」が新しいジャンルを形成しているが、日本では成功例が少なく一部の事業者によって行われているのみである。

日本においては、リージョナル型SCが飽和状態にあり、また2006年のまちづくり三法改正によって建設が難しくなったこともあり、商圏が狭くても高密度の人口が確保出来る都市圏においてリージョナル型SCのようなモール型を採用する新しいタイプのコミュニティ型SCが増加している。

ネイバーフッド型ショッピングセンター

略称は「NSC」。店舗面積3000 - 1万5000m2程度、半径5km程度の近隣地域を基本商圏とした小商圏型のショッピングセンターとしては比較的小規模な施設。食品スーパーホームセンターなどを核店舗に比較的実用的な商品を扱う専門店で構成され身近な買い回りを得意としている。日々の買い物に使われるため、商圏人口は少ないが来店頻度は高いのが特徴である。


注釈

  1. ^ なお、商店街の道路で自動車の通行を排除して歩行者専用道路としたアーケードもショッピングモールと呼ぶことがある。モールは、ロンドンのバッキンガム宮殿の正門前にある王室の公式行事用道路であるザ・モール: The Mall)に由来する[1]
  2. ^ 一例として、伊勢丹松戸店(千葉県松戸市)閉店が2017年に取りざたされた際、地元商店は閉店反対や建物の有効活用を求める声が多かった。伊勢丹松戸支援問題「閉店反対」存続求める声/撤退想定、後利用の要望も『千葉日報』2017年9月9日

出典

  1. ^ 窪田陽一『道路が一番わかる』(初版)技術評論社〈しくみ図解〉、2009年11月25日、22頁。ISBN 978-4-7741-4005-6 
  2. ^ SCの定義”. 一般財団法人日本ショッピングセンター協会. 2018年2月2日閲覧。
  3. ^ 全国のSC数・概況”. 一般社団法人日本ショッピングセンター協会. 2018年2月20日閲覧。
  4. ^ 3.都道府県別・政令指定都市別・市町村別SC一覧(2016年12月末時点)”. 一般社団法人日本ショッピングセンター協会. 2018年2月21日閲覧。
  5. ^ 株式会社繊研新聞社. “【アパレル業界研究】SC(ショッピングセンター)の動向や現状、最近の注目施設は?”. センケンJOB. 2021年4月12日閲覧。
  6. ^ クレイグ・グレンディ『ギネス世界記録2014』角川マガジンズ、2013年、146頁。ISBN 978-4047318847
  7. ^ Edmonton Economic Development Corporation
  8. ^ Guinness World Records
  9. ^ American Studies at Eastern Connecticut State University - Shopping Mall Studies
  10. ^ 「ドバイ・モール」、10月31日に正式オープンへ-UAE、WEB-TAB、2008年8月4日更新。
  11. ^ 「商業施設買って再生 ヒューリックや大和ハウス、改修で店誘致」『日本経済新聞』朝刊2018年8月26日(2018年9月11日閲覧)。
  12. ^ 「ショッピングセンター用語辞典(新版)」学文社発行
  13. ^ 「廃虚モール」米で急増 ネット勢に敗れ4分の1消滅へ - 日本経済新聞
  14. ^ 【リレーおぴにおん】クルマの世紀(7)地方疲弊の原因 制御が必要/京都大学教授・藤井聡『朝日新聞』朝刊2018年2月7日
  15. ^ “南ア:安全とされるショッピングモールで強盗殺人が多発”. 毎日新聞. (2009年8月27日). http://mainichi.jp/select/today/news/20090827k0000e030014000c.html 


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