私鉄の列車選別装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/20 06:07 UTC 版)
会社により名称及び列車種別設定方法が異なる。また一部の鉄道事業者では地上側の表示は行われない。なお鍵括弧内はその事業者における列車選別装置の正式な名称である。 近畿日本鉄道・阪急電鉄「アイデントラ」 名古屋鉄道「急緩行選別装置」 京成電鉄「緩急行選別装置」副本線や折り返し設備があって列車の順序が入れ替わる可能性がある駅で、出発信号機の操作時に設定される。出発信号機の下に表示器があり、「急」などの漢字ではなく種別ごとに決められた1 - 8の数字で表示されるのが特徴。 1 : 普通、4 : 快速、5 : 通勤特急、6 : 特急(アクセス特急含む)、7 : 快速特急、8 : ライナー・回送・試運転・臨時。(3 : 急行=2010年7月17日のダイヤ改正で廃止)(2は欠番。) 全ての表示器に種別と数字の対応表が掲示されている。掲示されている種別は基本的にはその線区に設定されている種別のみだが、例外的に千葉線に設置されているもののみ設定のない特急も掲示されている。また各駅では区間最高速度を示した標識も設置されており、各駅間では発車時までに表示器によって表示された数字(種別)の最高速度を出すことが出来る。 緩急行選別装置の機構上、最大8種類の種別までしか対応していない。また、場合によっては一旦8を表示してから本来の種別の数字を表示することもある。 京浜急行電鉄「急緩行選別装置」出発信号機の近くにある「列車種別表示灯」と、駅手前にある「列車選別確認灯」からなる。 「列車種別表示灯」では各列車の種別一文字を表示する。 京急は種別に応じ、W : イブニング・ウィング号およびモーニング・ウィング号、エ : エアポート快特、快 : 快特、特 : 特急、急 : エアポート急行、普 : 普通、回 : 回送列車、の一文字が表示される。なお通過駅においては、種別に関わらず通が表示される。またかつて運行されていた通勤快特の場合は勤を表示していた。 種別の表示は出発信号機の現示とは連動しないが、表示されない状態では駅を通過できない。また全ての列車種別選別は主要駅信号扱い所での扱いとなる。これは京急ではCTC導入率が低いためである。駅出発時は列車種別の現示と同時に出発反応標識(レピーター)が点灯し、発車ベルが鳴動する。 「列車選別確認灯」は一部駅の手前に設置され、点滅時は停車する必要があり、点灯時は通過可能を意味する。 相模鉄道列車からの列車種別情報を地上側で受け、種別に応じて踏切や駅の自動放送を制御する。付随する装置として、出発信号機付近に設置されるLED式の「種別表示器」、駅手前に設置され停車すべき場合に2灯が交互点滅する「停止指示表示灯」がある。またATSと連携し「誤通過防止装置」としての機能も備える。 種別表示器は京急と同型の物を使用し、表示内容は、特 : 特急、1 : 通勤特急、急 : 急行、2 : 通勤急行、快 : 快速、普 : 各駅停車、回 : 回送、となる。通過駅においては通過する種別が表示される。 東急電鉄「急緩行選別装置(B・G各停型選別機)」2009年7月11日、大井町線二子玉川 - 溝の口間延伸開業に伴い設定した急緩行選別装置。大井町線は一部の列車が田園都市線の線路を走行し二子新地、高津両駅に停車する列車を設定したが、この列車では種別幕上は青(ブルー)各停とした。そして両駅に停車しない列車を緑(グリーン)各停とした。そのため青各停は「B」、緑各停は「G」、急行は「急」と現示し、種別を選別する。なお、二子玉川 - 溝の口間は高架であり、踏切は存在しない。この選別機は走行する線路上のポイントの切り替えのためのものである。 京王電鉄列車番号により、営業列車は、L:京王ライナー 京王線新宿 - 府中(相模原線直通列車は京王多摩センター)、特 : 特急 京王線新宿 - 府中間(相模原線直通列車は調布)、準 : 準特急 京王線新宿 - 調布間(ただし調布 - 府中間は特)、急 : 急行/準特急 調布 - 橋本間・府中 - 京王八王子間/特急 調布 - 橋本間・府中 - 京王八王子間・北野 - 高尾山口間/京王ライナー 京王多摩センター - 橋本間・府中 - 京王八王子間、区 : 区間急行 京王線新宿・新線新宿 - 調布間(ただし調布 - 府中間は急)、快 : 快速 京王線新宿・新線新宿 - 調布間、普 : 各駅停車および快速/区間急行/準特急の途中駅間で各駅に停車する場合に現示する。非営業列車は走行する区間に応じて、「区」を除いた「L、特、準、急、快、普」を現示するが、この場合は営業列車と同様に駅に停車する。例えば、「準特急 高尾山口行」の場合は京王線新宿 - 調布間「準」、調布 - 府中間「特」、府中 - 北野間「急」、北野 - 高尾山口間「普」扱いとなる。そしてどの列車においても次停車駅が隣り合う駅または隣り合う終着駅の場合、また踏切の設置されていない一部区間は選別は行っていない。その例として笹塚→京王線新宿間、東府中→府中間、北野→京王八王子間、高尾 - 高尾山口間、新線新宿 - 笹塚間等がある。なお車両の運転台には仕業表上の種別、行先等の扱いを表示できるようになっているが、前述の列車種別選別装置とは連動はしていない。 なお、ATC導入後は列車選別装置はATCの機能の一部となっている。 小田急電鉄一部の駅出発時・進入時に主信号機の下ある「急緩行選別表示器」で種別を表示する。二つとも点灯している状態を「急行」とし駅を通過することができ、片方が点灯している状態を「緩行」とし駅に停車しなければならない。また、表示器の下に駅区間が掲示されている場合、その間の駅すべてにおいて現示している選別が有効になる。駅区間が表示されていない場合は、次駅のみに対しての選別となる。 停車列車については出発信号機を停止現示とさせ誤通過を防止させる。通過列車の場合、ホームで停車することがないよう出発信号機が停止現示以外になるまで場内信号機は停止現示となり、ホームに進入することができない。 西武鉄道「急緩行列車選別装置」列車選別装置踏切警報時間の均一化と中間駅における列車誤通過防止を目的に導入し、1967年6月1日より使用開始した。日本信号製。 列車種別番号(1 - 15)を車上子からの電波によって地上へ伝送する方式で、これに合わせて踏切の警報制御、誤通過防止制御を行うものである。通信の電波には2種類を組み合わせて使用することで信頼性を向上させている。運転士が仕業表を確認し、乗務員室内の「列車選別装置送信器」のダイヤルにて番号を設定すると、台車に設置された車上子から電波が発信され、これにより地上子と通信する。 誤通過防止機能は駅の出発信号機を制御するもので、停止現示を基本に、通過する場合のみ進行現示となる。なお1988年には誤通過防止装置が導入され、それ以降は同装置への情報提供のみを行う。 無信号の場合には安全側、つまり最速列車として制御するシステムとしている。 出庫駅、折返し駅などには「駅チェック装置」を設けて車上設定を確認することで、誤設定等の対策をとっている。具体的には、駅線路上のループコイルと車上子の間で通信を行うもので、運転士だけでなく信号係にも種別設定を行わせ、双方の種別設定が一致するかを確認、また後尾車の車上子が無発信であるかを確認する。条件を満たした場合のみ「番号表示器」に番号が表示され、列車の出発が許容される。再確認してもなお種別設定が不一致の場合は装置の故障とみなし、種別番号0(無信号)に再設定の上で走行する。 1977年からはマイクロコンピュータを使用する「自動駅チェック装置」を導入した。列車情報をあらかじめ記憶させることで、車上設定の確認を自動化したほか、駅の案内表示器などの制御も行う。 主な設備(設置位置/備考)車上設備(全て両先頭車に設置):列車選別装置送信器(乗務員室内上部)・車上子(台車) 地上設備:地上子(線路上)・受信器・駅チェック装置(一部駅)駅チェック装置:番号表示器(出発信号機直下)・ループコイル(駅線路上/前後2つ)・受信架・制御盤 自動駅チェック装置:番号表示器(出発信号機直下)・ループコイル(駅線路上/前後2つ)・自動チェック部 1997年頃に列車番号設定器が設置されたが、これは列車無線により通信するもので、本装置とは関係がない。 列車情報装置従来装置の老朽化のほか、列車本数の増加やVVVF車によるノイズの増加などに対応するため、従来の装置に代わり導入した。池袋線系統では2003年6月2日、新宿線系統では2004年6月10日より使用開始した。山口線と多摩湖線では使用されていない。こちらも日本信号製だが、テレメータは明星電気が協力。「列情」と略される。 トランスポンダとテレメータを使用し、高度な通信が行われる。列車番号・列車種別番号(数字2桁)・始発、行先駅番号(数字3桁)・車両数・車両番号・ドア数・ATCの有無などの情報を地上へ伝送し、踏切の警報時間均一化や中間駅の誤通過防止のほか、行先・車種による進路チェックなど様々な用途に使用されている。駅の案内表示器や西武線アプリにもこの情報が使用されるが、車両の表示器などの設定は別で行われる。基本的にはトランスポンダを使用し、車両床下に設置される車上子と、各駅の出発信号機内方に設置される地上子との間で通信を行う。 テレメータは駅チェック機能に使用され、一部駅の出発信号機付近に設置される。運行管理システム(SEMTRAC)と連携し、システム内のデータを基に車上設定の照合や書き込みを行う。 当時主流であった電磁誘導式トランスポンダではなくマイクロ波トランスポンダを使用していること、またテレメータは気象観測等で使用される無線方式を応用したことが特筆される。 車上設定について列車番号・種別・行先については運転台の「列車情報設定器」のボタンにて乗務員が設定する。2005年頃の運行管理システム更新後は、これと連携するこで書き込みが概ね自動化された。運転士が仕業表と照らし合わせ、確認ボタンを押下することで設定となる。 始発駅は自動で設定される。 車両番号やドア数、ATCなどの車両情報はほぼ固定となるため、床下の「列車情報送受信器」にて設定を行う。 主な設備(設置位置/備考)車上設備(全て両先頭車に設置):列車情報送受信器(床下)・列車情報車上子(床下先頭台車後部)・列車情報設定器(運転台)・列車情報分配器(乗務員室内上部/車上テレメータ内蔵) 駅設備:列車情報装置・連動インターフェース・列車情報モニタ・中継器(地上子とテレメータの付近)・地上子(出発信号機内方の軌間内)・地上テレメータ(一部駅出発信号機付近) 中央設備(中央指令に設置):列車情報中央装置(池袋線系統・新宿線系統各一台)・無停電電源装置 2018年から行われている列車無線の更新に合わせて列車情報設定器が交換され、タッチパネル式の液晶画面を装備する「列車無線表示器」(NEC製)となっている。現在は列車情報設定器として使用されているが、将来的にデジタル無線の運用にも使用されるものとみられる。 阪神電気鉄道「列車種類選別装置」 列車の始発駅で車両側から設定を行う。ボタンで設定する方式で、運転台にA/N/E/K/S/L/回(他に予備が1つある)のボタンがある。A(ABCのA)は特急/直通特急/区間特急、N(Nishi-OsakaおよびNambaのN)は快速急行(1987年以降。1974年までは西大阪特急が使用)、E(ExpressのE)は急行、K(Kukan-KyukoのK)は区間急行、S(Semi-ExpおよびSub.Semi-ExpのS)は準急/区間準急(現在はともに阪神なんば線のみ)、L(LocalのL)は普通、回(回送の頭文字)は回送が使用する。これによって駅での列車接近放送や踏切遮断時間の制御を行っている。 後述する山陽電気鉄道や前述している相鉄などとは異なり、信号機直下での表示は行われていないが、ATSとこの列車種類選別装置の両方に関連している装置として、場内信号機のない駅の手前には誤通過防止を目的とした「駅通過防止装置」(停車列車のみに対して「S」が点滅する表示装置。阪神部内では「列選S標」と称す)が設置されており、その制御にも使用されている。 阪神仕様の列車種類選別装置のメーカーは東芝であり、先頭車両の先端部の床下の左側面にある傘マーク(東京芝浦電気時代のロゴタイプ)の機器で判別できる。阪神全編成のほか、乗り入れる山陽電気鉄道の5000系電車の6両編成全編成と直通特急の予備兼用編成である一部の4両編成、5030系電車、3両編成の6000系電車の全編成および近鉄の9820系電車、5800系電車、5820系電車、9020系電車の奈良線所属編成の全編成、1026系電車の6両固定編成全編成、1252系電車の相互直通対応編成と、特急用の22600系電車の一部の編成にも搭載されている。なお、山陽電気鉄道からは3000系列の3・4両編成の車両も阪神電鉄線に乗り入れてくるが、これらの車両は大石駅以西での運用であり、直通特急には充当されないので、列車種類選別装置は搭載されていない。 全線での使用開始は1971年である。当初は箱に収められたチャンネル式で、ダイヤルを各記号のいずれかに合わせて設定する方式であった。8000系電車からはボタン式を採用し、以後既存車両もボタン式に更新された。阪神電鉄線乗り入れに対応した山陽車と近鉄車も全形式がボタン式となっている(但し山陽電気鉄道6000系電車は運転台にあるモニタ表示装置に表示させタッチパネルで操作)。 山陽電気鉄道山陽電気鉄道では出発信号機や場内信号機の直下に種別が特急車(直通特急・山陽特急)は「ト」、S特急は「エ」、普通車は「フ」と表示される。阪神特急や黄色直特の各駅停車区間内は普通車と同じく「フ」と表示されている。 この他、京阪電気鉄道などでも列車選別装置を設けている。ただし京阪では信号機直下の表示は行われていない。また京阪では京阪本線、鴨東線、中之島線のみ列車選別装置を設けている。
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