特攻と通常攻撃との有効率の比較とは? わかりやすく解説

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特攻と通常攻撃との有効率の比較

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:16 UTC 版)

特別攻撃隊」の記事における「特攻と通常攻撃との有効率の比較」の解説

特攻の有効率は、特攻に一番近い攻撃法とされた急降下爆撃日本軍主張していた命中率比較して著しく低く特攻戦術としての有効性低かったとする意見もある。ただし下表のとおり、日本軍主張していた急降下爆撃命中率は、攻撃受けたアメリカ軍イギリス軍被害報告に基づく実際命中率とはかけ離れている過大なものであった太平洋戦争初期の主要海戦における急降下爆撃命中率 艦爆出撃日本軍主張命中日本軍主張命中率実際被弾実際命中率セイロン沖海戦で2隻の重巡洋艦対す攻撃 53468819発 35.8% 珊瑚海海戦で2隻の空母対す攻撃 331853%から64% 3発 9% ミッドウェー海戦ヨークタウン対す攻撃 18機 6発 33.3% 3発 16.6% 日本軍主張命中率過大ではあったが、それでも太平洋戦争序盤多大な成果上げていたことにかわりはなく、アメリカ軍も「彼ら(日本軍)の開戦初期成功は、非常によく訓練され組織され装備され航空部隊連合軍の不意をついて獲得したものであった」と評価していた。しかし、ミッドウェー敗戦からソロモン諸島などでの航空消耗戦弱体化していく日本軍航空戦力を「日本軍航空戦力ソロモン諸島ビスマルク諸島ニューギニア消耗されると、それらに匹敵する後継部隊手に入れることができなくなり日本空軍力崩壊しはじめ、ついに自殺攻撃唯一の効果的な戦法となった。」と評価していた。 日本軍航空戦力弱体化に対してアメリカ軍側の防空システム1943年までの日本軍との諸海戦戦訓により各段に進歩しており、特に1943年以降大量に就役したエセックス級航空母艦艦隊配備進歩加速させた。エセックス級空母各艦は航空母艦群の旗艦となり、搭載され対空捜索SKレーダー、対水上捜索航空機誘導SGレーダー航空管制用の測高用SMレーダー予備対空捜索SC-2レーダー射撃用のレーダーとしてMk.37 砲射撃指揮装置一体化した距離測定用Mk.12レーダーと、高度測角用Mk.22レーダー活用した戦闘指揮所 (CIC) が、迎撃戦闘機誘導新兵器VT信管駆使した対空射撃など、対空戦闘総合的に統制しマリアナ沖海戦では一方的に日本軍通常攻撃機を撃墜し、殆どの日本軍通常攻撃機がアメリカ軍艦隊到達することができず、命中弾は戦艦サウスダコタへの1発のみと、のちに「マリアナの七面鳥撃ち(The Marianas Turkey Shoot)」と揶揄されたぐらいに、対空システム完成の域に達していた。 日本軍特攻を主要戦術として採用した背景アメリカ軍は、マリアナ沖海戦以降航空作戦苦境で「大本営に、陸海空軍正規航空軍としては敗北したことが明白になったとき絶望的戦術として使用した」「自殺攻撃開始され理由は、冷静で合理的な軍事的決定であった。」と分析していた。 こうして、敵機部隊有効な攻撃を行うには必殺体当たり攻撃しか道は残されていない判断した日本軍特攻に舵をきっていくことになるが、特攻開始によりアメリカ軍艦隊損害激増していった。アメリカ軍大戦末期となるフィリピン戦から沖縄戦までの、アメリカ艦艇対空装備射程内に入った日本軍航空機による特攻攻撃通常攻撃の有効率比較をしている。 1944年10月 - 1945年4月沖縄戦初期アメリカ艦艇対空装備射程内に入った特攻機通常攻撃機の有効攻撃数U.S.NAVY Anti-Suicide Action Summary Table I) フィリピン戦1944年10月 - 45年1月硫黄島戦・沖縄戦初期1945年2月 - 4月1945年4月までの合計対空装備射程内に入った日本軍合計 1,616機 1,320機 2,936その内特攻機 376408784その内通常攻撃機 1,240912機 2,152特攻機命中 120機(命中率31.9%) 96機(命中率23.5%) 216機(命中率27.6%) 通常攻撃命中 41機(命中率3.3%) 17機(命中率1.9%) 58機(命中率2.7%) 攻撃機数は特攻が約1⁄3の機数であるが、攻撃命中数は約4倍であり、命中率10であったフィリピン戦において同じ命中弾(12機)を与えるために必要な総攻撃機数と損失数の比較Suicide Vs Conventional Attacks TABLE I・II爆撃機雷撃機特攻機日本軍総数 30060迎撃機撃墜 180機(60%) 36機(60%) 艦船攻撃した日本軍12024対空砲撃墜 40機(33.3%) 12機(50%命中もしくは有効至近12機(命中率10%12機(命中率50%結果 220損失 12命中 60損失 12命中 1944年10月 - 1945年6月沖縄戦末期特攻機通常攻撃機の有効性比較U.S.NAVY Anti-Suicide Action Summary Table VI特攻機通常攻撃命中までの平均攻撃回数 3.637命中率 27% 2.7% 命中までの平均損失機数 3.6機 6.1機 以上、統計取った時期によって多少数字違いはあるが、通常攻撃対し特攻の方が、命中弾を与えるのに必要な攻撃機数は1⁄5、命中までに要する攻撃回数1⁄10実際に攻撃できた場合命中率5倍 - 10倍、命中与えるまでの損失機数は約1⁄3 - 1⁄2と、攻撃の有効性圧倒的に上回っていた。 アメリカ軍も、マリアナ沖海戦当時日本軍航空通常攻撃に対して特攻命中率は7倍から10倍以上であると分析しており、非常に深刻な脅威になると懸念していた。特攻通常攻撃より有効であった理由として、アメリカ軍特攻を「自爆攻撃特攻)は、アメリカ軍艦隊直面したもっとも困難な対空問題指摘した上で下記のように分析していた。 従来対空戦術は特攻機に対して効力がない。 特攻機撃墜されるか、操縦不能に陥るほどの損傷受けない限りは、目標確実に攻撃する目標となった艦船回避行動有無関わらず損傷受けていない特攻機はどんな大きさ艦船にでも100%命中できるチャンスがある。 また、他の資料では下記のようにも分析している。 特攻機片道攻撃帰還考慮しないため、攻撃距離が長い突っ込む直前まで操縦できるため、命中率が高い。 特攻機パイロット精神的にタフである。 特攻機爆弾積んでいなくてもその搭載燃料強力な焼夷弾になる。 米国戦略爆撃調査団作成公式報告書UNITED STATES STRATEGIC BOMBING SURVEY SUMMARY REPORT (Pacific War) 』では「日本軍パイロットがまだ持っていた唯一の長所は、彼等パイロット確実な死を喜んでおこなう決意であったこのような状況下で、かれらはカミカゼ戦術開発させた。 飛行機艦船まで真っ直ぐ飛ばすことができるパイロットは、敵戦闘機対空砲火のあるスクリーン通過したならば、目標当る為のわずかな技能があるだけでよかった。もし十分な数の日本軍機が同時に攻撃したなら、突入を完全に阻止することは不可であっただろう。 」と述べられている。従来対空戦術では護衛機対空砲火によって牽制すれば相手爆撃諦めさせることもできたが、生存意図しない特攻機は敵が見えたならば必ず攻撃するため、牽制効果がなかった。通常の航空爆撃異なり対空攻撃によって特攻機乗員負傷した死亡したり翼が破損するなどしても、いったん命中コース入ってしまったならば、その攻撃止めることはできなかった。特攻機命中するまで操舵続けるため、投下する爆弾魚雷避けることを前提とした艦船回避行動はほとんど意味がなかった。 特攻の有効率の高さを、対零式艦上戦闘機空戦戦術サッチウィーブ」の考案者でもあった、第38任務部隊航空参謀ジョン・サッチ少佐は「我々が誘導ミサイル手にする以前誘導ミサイルであった」「人間の脳と目と手で誘導され誘導ミサイルよりさらに優れていた」「時代の先を行く兵器であった」と分析していた。1999年作成アメリカ空軍報告書PRECISION WEAPONS, POWER PROJECTION, AND THE REVOLUTION IN MILITARY AFFAIRS』において、特攻機現在の対艦ミサイル匹敵する誘導兵器と見なされて当時連合軍艦船最悪脅威であった指摘されている。そして特攻機比較少数ありながら連合軍の作戦重大な変更強いて実際戦力以上に戦況影響与え潜在能力有していたとも評価している。 台湾沖で、神風特攻新高隊の零戦2機の特攻攻撃を受け大破炎上144戦死203負傷甚大な損害被り、自らも重傷負った空母タイコンデロガのディクシー・キーファー艦長は、療養中にアマリロ・デイリー・ニュースの取材に対して日本カミカゼは、通常の急降下爆撃水平爆撃より4 - 5倍高い確率命中している。」と答えている。また、通常攻撃機からの爆撃回避するように操舵するのは難しくないが、舵を取りながら接近してくる特攻機から回避するように操舵するのは不可能である。」とも述べている。 またイギリス著名な戦史軍事評論家のバリー・ピッドは「日本軍特攻攻撃がいかに効果的であったと言えば沖縄戦1900機の特攻機攻撃で実に14.7%が有効だった判定されているのである。これはあらゆる戦闘比較して驚くべき効率であると言えよう・・・米軍海軍士官なかには神風特攻連合軍侵攻阻止成功するかもしれないと、まじめに考えはじめるものもいのである」との評価をしている。

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