大正デモクラシーと変態性欲の通俗化とは? わかりやすく解説

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大正デモクラシーと変態性欲の通俗化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 15:37 UTC 版)

鬼畜系」の記事における「大正デモクラシーと変態性欲の通俗化」の解説

大正時代に入ると、明治維新による国内産業近代化恩恵もあり、中産階級層が厚くなり消費文化形成するようになった江戸時代大衆文化江戸大坂などの大都市庶民中心であった)。特権階級欧米か学んで社会制度制定した明治時代からさらに発展し民衆政治参加によって社会制度制定するための大正デモクラシーという運動盛んになり、1925年にはアジアで初の男子普通選挙法定されたことで、戦後民主主義の礎を築いた。この時代は、軍国主義台頭した昭和初期とは対照的に官憲大衆は性にもおおらかだった時代であったとされる遡ること明治時代には、James Ashtonによる『The Book of Nature』(1865年) の翻訳本造化機論』が1875年刊行され近代言葉論理で性を解き明かした記念碑的な書物となった当時一般人にはなじみのなかった精子卵子のことなども解説されていた。「造化機」とは、当時の用語で「生殖器性器」のことを指した。この書物皮切りに、「造化機」について論じた書物明治期には大量に刊行され類本異本二番煎じ含めれば、優に100種類上の造化機論」が存在していた。しかし、明治期道徳的に保守的で、科学書であったため発刊許されたが、男女性器の図解等もあり、現在のエロ本のような関心見られ側面もあった。明治末から大正になると、その種の本も次第娯楽的な彩りを持つようになったドイツ精神医学者クラフト=エビングが性的倒錯について書いた性的精神病理』(1886年)は、日本における変態性欲ブーム火付け役ともされている。この書物は、1894年に『色情狂編』として和訳されたが明治政府発禁とされた後、大正時代1913年解禁され大日本文明教会から『変態性欲心理』と題して刊行された。この書籍中では「ひとりエッチ(クリオナ)」「性欲減退」「ホモセクシュアル」といった、現在では普遍的な性のトピック紹介されているが、それだけでなく「折檻プレイ」「露出狂プレイ」「放置プレイ」「イメージプレイ」「コスプレ」などアブノーマル性癖取り上げられていた。本書嚆矢として科学分野では「性科学」と呼ばれる学問分野確立することになり、日本においても学術的そして通俗的な変態考察がすぐに盛んになった。「変態」という語は、1909年刊行され小説ヰタ・セクスアリス』で有名になったとされる中村古峡によって創刊され研究雑誌変態心理』(1917 - 1926年)では、変態性欲論が議論され男性同性愛者読者たちによってゲイ解放区構想議論された。また田中香涯(田中祐吉、医学博士)によって刊行された『変態性欲』(1922年)では、それまで狭義心理学用語として使用されてきた変態通俗化が行われ、羽太鋭治澤田順次郎といったセクソロジストたちによる性科学通俗化起こった変態という言葉自体広く社会浸透した流行語となり、宮武外骨は『変態知識』(1924年)を、梅原北明は『変態十二史』『変態資料』(1926 - 1928年)を刊行する至った。特に梅原北明企画した叢書変態十二史』(文藝資料研究会)は合計15巻12巻付録3巻)という破格シリーズとなった。このシリーズは「性」に限定されてきた「変態」の範囲をさらに拡張し全巻タイトルに「変態」を冠するという徹底ぶりと滑稽味が大いに受け、500限定会員誌にもかかわらず申し込み40006000部を突破したあらゆる事象に「変態」を当てはめようとするスタイル時に牽強付会ですらあり、第8巻変態仇討史』を著した梅原北明同書序文で「普通の仇討から特に変態云う奴を選ぶことに務めただけですから、多少こぢつけたものあります。/尤も、こぢつければ仇討云う存在確かに変態です」と言い訳している。この時点で「変態」という用語は実態失い普通ではないものに対す曖昧な印象包括するイメージとして流用されることになる。 こうした戦前変態言説多くは、北明一味の「趣味的研究」を除けば生半可な知識振り回される人々啓蒙するという至って真面目な学問であった。あくまで変態は「客体的な研究対象」であり、そこにはLGBTQ代表される性のアイデンティティなど存在せず変態性欲者や性的逸脱者は「矯正されるべき存在」として扱われた。これは1868年明治維新後、西側の性規範輸入される過程で「性の近代化」が進み、性に対す保守化・均質化標準化規格化、すなわち「正常志向」が強調された為である。そこから逸脱する存在は、しばしば蔑み対象となった。これに関して変態十二史』の編集発行人である上森子ですら「我々まで変態だと思われたら困る」と発言しているほどである。変態性欲者が当事者として主体となった変態による変態のためのマニア雑誌」が登場するのは、戦後の『奇譚クラブ』(1947-1975年)を待つことになる。 こうして変態文化広がり見せたものの、それを理論的に支え学問領域未成熟なままであった人間根源である性的欲望自然科学の分野明確に確立するのは、クラフト=エビングの『変態性欲心理』から1世紀近く経った1979年自然人類学者のドナルド・サイモンズ(英語版)が発表した『The Evolution of Human Sexuality英語版)』(性的欲望進化)からである。本書人間の性行動形成過程、たとえばオーガズム同性愛性的乱交レイプなどを進化論的枠組み史上初め体系化したもので、あらゆる学問進化生物学人類学生理学心理学文献学)を統合して分析した点でも画期的だった本書後続の研究にも大きな影響与えており、たとえばレイプまつわる性的衝動進化生物学分析しフェミニストとの間で大論争にもなった問題作『人はなぜレイプするのか―進化生物学解き明かす英語版)』(2000年も本書の絶大な影響下にある。もっとも、自然科学観点から性的逸脱研究本格化始めたのは、つい最近のことであり、依然として追加調査待たれるその間日本発の変態文化は「おたく」の出現にともない二次元コンテンツ比重を置くことになる。またインターネット急速に発達した1990年代には、米裁判所オンライン上のわいせつ表現ゆるやかに解釈するようになり、日本アダルトアニメ世界開放された。2000年代には、日本アダルトアニメキワモノAVアダルトゲームジャンルロリ異種姦ぶっかけごっくんなど)を表す言葉として「Hentai」というキーワードが世界中広まっている。

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